「窮屈なときほど空を見上げるとさ、不思議と落ち着くんだぞ。知らなかっただろ?」
夜風に溶け込む彼の静かな声に、不覚にも目頭が熱くなり、涙が溢れそうになった。
いけない……。
私は、こんな温かさで泣いていいような人間じゃないのに。
誰かと関わったり、感情を揺らされたりするから、人は私から離れていくんだ。
優しさに触れて期待してしまうから、裏切られたときの傷が深く、鋭くなる。
だから最初から、誰も受け入れてはいけない。
「お前が何にそんな突っかかってんのかは知らねぇけどさ。……楽しく生きたもん勝ちじゃん。俺は、そう思うけどな」
「…………」
「な? 空、悪くないだろ?」
不愛想に見えた彼の唇が、ほんの少しだけ柔らかく弧を描く。
その見た目とは裏腹な優しい微笑みを目にした瞬間、私の奥底で拒絶反応が生まれた。
……無視しなくちゃ。
彼が私を無視してくれないのなら、私の方から彼を透明人間にしてしまえばいい。
そうだ。
そうしよう。
私と彼のために、それが一番正しい選択なんだから。
静まり返った夜道、頭上に広がる無限の星屑だけが、冷たく、けれど優しく私たちを照らしていた。



