蛍の季節に、キミはまた会いに来る


「俺の見た目がこんなだからって、真面目に授業受けてないとか思ってる? だとしたら残念〜。俺、ちゃんと教科書持ってますから!」

……なんなの、この人。
私が一言も発していないのに、一人で勝手に話を進めないでほしい。
この人、私と会話する気なんてはなからないんだ。

お願いだから、放っておいて。
こんな地味で無愛想なやつのことなんて、無視してくれて構わないから。

むしろ、心からそうしてほしい。

瀬戸キラの無邪気でズカズカと踏み込んでくるしつこさに耐えかねていた、そのとき……。
ガラガラッ!と、教室のドアが大きな音を立てて開いた。

「お〜! 達也! どうした、今日はやけに早いじゃん」

一瞬で、隣の男子の意識がそっちへ移った。

……よかった。
助かった。

私は小さく息を吐き出して、カチコチにこわばっていた肩の力をそっと抜く。

けれど……直後。

背後から、がたた、とかすかな物音が聞こえた。
その瞬間、せっかく緩んだはずの体が、再びピンと引きつるように強張る。

……すごく、嫌な予感がした。

後ろの席は、つい数秒前まで誰もいない空席だったはずだ。

あそこは……。
あの廊下にいた“彼”の席だ。
わざわざ振り向いて確認なんてしなくても、肌でわかってしまう。