ある日の放課後、学生寮に帰っている途中での出来事だった。私は図書館の近くを通りすぎようとして、ガラス張りの図書館の1階に昴を見つけた。
(そういえば、昴は文芸部だって前に言っていたわね)
文芸部の活動がない日でも、図書館に下校時刻ギリギリまで籠っていると、以前昴が教えてくれた。
私がそう思っていると、1人の女子生徒が、本を持たない昴に話しかけたようだ。話しかけた女子生徒はどこか緊張した雰囲気を纏っていた。女子生徒と昴は、周囲を気にしながら図書館から出て行ったようだった。
どこに向かったか見当がついた。星蘭高校の図書館はロの字型の構造をしていて、図書館の1階からと2階、3階の螺旋階段からしか行けない箱庭のような中庭がある。恐らく2人はそこに行ったのだろう。
私は気がつくと図書館に向かっていた。
自分でも、どうして昴達を追おうとしているのか分からない。ただ事じゃないのは、雰囲気で判ってはいた。
図書館のカウンターで受付を済ませて2階の蔵書フロアへ向かった。2階から中庭に行ける螺旋階段へと向かうためだった。図書館の構造上、中庭に向かったであろう2人を追いかけたら見つかってしまうから。
2階の蔵書フロアから螺旋階段へ出れる扉を開け、螺旋階段の踊り場から中庭を見下ろした。そのとき、私は衝撃的瞬間を目撃してしまった。
(昴が、告白されている……)
そう、昴が告白されているところだった。私は思わず隠れてその様子をじっと見ていた。
昴は告白してきた女子生徒を秒殺で振っていた。私はその様子を見て、なぜかホッとした。2人が中庭からいなくなり、図書館から出て行ったことを確認すると図書館を出た。
次の日の朝。いつものように登校しようとして、下駄箱を開けた。なにか紙が入っている。
手紙のように見えた。裏返してみても差出人もなにもない。いつもなら開けたりしない。でも、この手紙からは悪意を感じ取れなかった。
周囲を見渡して誰もいないことを確認すると、手紙の封を開けた。そこには
「今日の放課後、図書館の中庭で待っています」
少し乱雑な字で、そう書かれていた。
誰もいないことを再度確認して、接触感応で手紙の記憶を読む。すると、脳内に手紙の記憶が流れ込んできた。
ーー差出人は隣のクラスの男子生徒。差出人の男子生徒を囲むように、2人の男子生徒がいる。2人の男子生徒は差出人の男子生徒に向かって
『罰ゲームなんだから早く書けよ~。あいつの下駄箱にいれるんだからさ』
そう言って、差出人の男子生徒に書かせた光景が手紙から流れ込んできた。差出人の男子生徒は半ば諦めのような感情でこの手紙を書いたようだった。
私の接触感応で判るのはここまでだ。この手紙の奥に悪意があるのかどうか、分からない。
「なにが目的なのかしら?」
誰も来ていない朝の昇降口で私は呟いた。
ハンドバッグに手紙を仕舞い、教室に向かった。
向かいながら、私は行かない方がいいような気がしていた。天野恵のときのようなことがあったら。もし、いじめの前触れなのだとしたら、対処する必要がある。だから私は呼び出しに応じることにした。
ー☆ー
次の日の放課後。俺はいつものように文芸部の部室で過ごしていた。
文芸部の活動日自体は毎週水曜日と金曜日とと決まっている。文芸部の活動がない日でも部室は使っていいということになっている。
3階の文芸部の部室を出て、2階へと降りる。外の空気が吸いたくなって、2階の螺旋階段へ向かった。螺旋階段の踊り場で背筋を伸ばしていると、近くでバタンと扉が閉まる音が聞こえた。ここで扉が閉まる音が聞こえるとしたら、中庭しかありえない。そう思って2階の螺旋階段から中庭を見下ろすと、3人の男子生徒が中庭に来たところだった。1人は中庭に残り、残りの2人は大きな植え込みの陰へと入っていった。俺は不思議に思う。
(なんで中庭に?)
ここの中庭は図書館からしか来れない。屋上の次点で誰も来ない場所でもあった。告白するのに最適な場所とも言える。昨日の俺が告白されたように。
少しして、再びバタンと扉が閉まる音が聞こえた。
(紗希さんが図書館になんで……?)
人が来ない放課後の図書館の中庭に、1組の男女。それがなにを意味するか。
よく見ると植え込みの陰へと入っていった2人がスマホを構えているのが解った。
(まさか……)
螺旋階段の踊り場で俺はどうやって止めようか考えていると、男子生徒は緊張した面持ちで紗希さんに告白しだした。
(紗希さんが、告白されている……)
衝撃的な瞬間を目撃してしまったと思った。
2階だからよほどがない限り気づかれない。そう思っていても、俺は思わず隠れてその様子を見ていた。
そこで俺は告白している男子生徒を見て違和感を感じた。
(誰かに無理やりやらされてるような……)
微かな好意と諦めを孕んだ表情。隠れた2人が構えているスマホ。告白シーンを撮っていると思って間違いないだろう。
そう思っていると、紗希さんは即答で断っているのが見えた。あまりの早さに男子生徒は呆然とし、紗希さんが中庭から去ったあとも立ったままでいた。
「なにしてんの」
俺は呆然と立ったままの男子生徒にそう声をかけた。
男子生徒はびくりと震え、俺のほうを見た。
「た、高野……。なんでここに」
俺はその問いを無視し、大きな植え込みの陰に隠れた2人を冷たい眼差しで見つめて言った。
「そこに隠れてる2人もだよ。ここにいる彼に無理やり紗希さんに告白させて、動画を回してたんだろう?動画を回してニヤついてるのはいいけど、君ら2人がやったことは立派な強要罪だ。動画をネットにでも上げたら名誉毀損と肖像権侵害で一発でアウトだ。そのところ解ってやってる?」
ガサガサと植え込みの陰から出てきたのは、いかにも主犯格ですという雰囲気の2人だった。2人はスマホを握りしめながらガタガタ震えていた。
正直、俺は紗希さんが無害だったらそれでいい。だけど、紗希さんはきっと傷ついてる。俺はそれが許せない。
紗希さんに告白していた男子生徒のほうを向き
「君も君だよ。こんな風に強要されて、こんな形で紗希さんに告白して。紗希さんの尊厳をなんだと思ってるんだよ。嫌だってちゃんといいなよ。紗希さんに微かに好意を持っていたなら、正々堂々告白しなよ。カッコ悪いし情けない」
俺の言葉に男子生徒はガックリと項垂れた。
「そこの2人は今撮ってる動画のデータ以外にも、彼を強要したSNSのやり取りも残ってるんだろう?俺の父さん弁護士だし、弁護士事務所通して学校に報告したっていいんだぜ?その覚悟はあるか?」
俺の言葉に
「ひっ……。ごめんなさい!」
そう言って俺の脇を通りすぎて言った。
俺はその様子を見ながら
(一応、父さんにも相談しておこう)
そう思って図書館の2階へと戻って行った。
ー☆ー
「あのさ」
その次の日の屋上で私達は同時に言った。
その後、少し沈黙が流れた。
先に口火をきったのは、珍しく私の方だった。
「一昨日、告白されていたわよね?」
昴は僅かに目を見開いた。
「なんでそれを知っているんだ?」
私の言葉に昴は驚きを隠せないでいた。
「たまたま目撃してしまって、隠れてその様子を見ていたの」
即答であの子を秒殺で振っていたじゃない。と私は続けた。
「あの子、俺のことを好きなんじゃないよ」
私の言葉に昴はそう言った。そして続ける。
「あの子は俺の本質を理解して好きになっているんじゃない。
誰とも群れないミステリアスで格好いいって、俺のことを知りもせずに勝手に美化してるんだ。俺の本質を知ったら思ってたのと違うっていうに決まってる」
そんな表層だけの人間関係に付き合うほど暇じゃないし。と昴はバッサリ斬って捨てた。
「それを言ったら、紗希さんだって昨日、告白されていたじゃないか」
私は僅かに目を見開く。
「……なんで知ってるの?」
私の言葉に
「昨日は部活の日で、図書館に居たんだ。外の空気が吸いたくなって、螺旋階段の踊り場に居たんだ。そしたらたまたま目撃してしたんだよ」
サキさんだって容赦なく断ってて、告白してきた男子フリーズしてたぞ。とス昴は言った。
「「心の声」を聞いてしまったから」
私はポツリと言った。
「どんな「心の声」を聞いたんだ?」
昴は私の瞳を覗き込むように見つめて聞いた。
「罰ゲームで告白してこいよって言われたんですって。
でも、1人で凛としているところが綺麗だなって思ってんですって。
私の本質を知って告白してきたんじゃないのよ、彼は」
私は誰も信じないって決めてるからって断ったわ。と昴と同じくバッサリ斬って捨てた。
「小説でもそうよね。男女が登場する小説だと、大体恋愛に発展しているように思う」
どこか呟くように、私は言った。
「そうだね」
昴はその言葉に同意する。
「男女の友情は成立するのかしらね」
私の呟きに、昴は
「時と場合によるんじゃないか?
恋愛関係にしろなんにしろ、相手を知らないとなにもできないと思う」
助けるにしても一緒にいるにしても。と昴は続ける。
「それに、友情があるから恋愛感情になったときに真っ当に成立するんじゃないの?って俺は思ってる」
「それが昴の恋愛観?」
私の問いに昴は頷いた。
「紗希さんはどう思うの?」
昴の問いに私は
「誰かを好きになる。その感情は今の私にはわからないわ。でも」
そこで一旦言葉をきる。少し間をおいて
「昴と同じく、友情があるから恋ができるんじゃないかとは、思うわ」
私もだいぶ変わったのね。そう昴に言って続ける。
「だから表面だけを見ないで、ちゃんと私を見てほしいとは思うわ」
表面だけを好きになってほしくない。
それには昴も頷いて同意を示した。。
「紗希さん」
昴は私のことを優しく読んだ。私は首を傾げた。
「今度、教室でも話しかけていい?」
それが何を意味するのか。
私は悩んだ。
(昴、だったら)
嫌じゃない。と私は思った。
私はコクンと頷いた。
「ありがとう」
それを見た昴は嬉しそうに笑って言った。
(そういえば、昴は文芸部だって前に言っていたわね)
文芸部の活動がない日でも、図書館に下校時刻ギリギリまで籠っていると、以前昴が教えてくれた。
私がそう思っていると、1人の女子生徒が、本を持たない昴に話しかけたようだ。話しかけた女子生徒はどこか緊張した雰囲気を纏っていた。女子生徒と昴は、周囲を気にしながら図書館から出て行ったようだった。
どこに向かったか見当がついた。星蘭高校の図書館はロの字型の構造をしていて、図書館の1階からと2階、3階の螺旋階段からしか行けない箱庭のような中庭がある。恐らく2人はそこに行ったのだろう。
私は気がつくと図書館に向かっていた。
自分でも、どうして昴達を追おうとしているのか分からない。ただ事じゃないのは、雰囲気で判ってはいた。
図書館のカウンターで受付を済ませて2階の蔵書フロアへ向かった。2階から中庭に行ける螺旋階段へと向かうためだった。図書館の構造上、中庭に向かったであろう2人を追いかけたら見つかってしまうから。
2階の蔵書フロアから螺旋階段へ出れる扉を開け、螺旋階段の踊り場から中庭を見下ろした。そのとき、私は衝撃的瞬間を目撃してしまった。
(昴が、告白されている……)
そう、昴が告白されているところだった。私は思わず隠れてその様子をじっと見ていた。
昴は告白してきた女子生徒を秒殺で振っていた。私はその様子を見て、なぜかホッとした。2人が中庭からいなくなり、図書館から出て行ったことを確認すると図書館を出た。
次の日の朝。いつものように登校しようとして、下駄箱を開けた。なにか紙が入っている。
手紙のように見えた。裏返してみても差出人もなにもない。いつもなら開けたりしない。でも、この手紙からは悪意を感じ取れなかった。
周囲を見渡して誰もいないことを確認すると、手紙の封を開けた。そこには
「今日の放課後、図書館の中庭で待っています」
少し乱雑な字で、そう書かれていた。
誰もいないことを再度確認して、接触感応で手紙の記憶を読む。すると、脳内に手紙の記憶が流れ込んできた。
ーー差出人は隣のクラスの男子生徒。差出人の男子生徒を囲むように、2人の男子生徒がいる。2人の男子生徒は差出人の男子生徒に向かって
『罰ゲームなんだから早く書けよ~。あいつの下駄箱にいれるんだからさ』
そう言って、差出人の男子生徒に書かせた光景が手紙から流れ込んできた。差出人の男子生徒は半ば諦めのような感情でこの手紙を書いたようだった。
私の接触感応で判るのはここまでだ。この手紙の奥に悪意があるのかどうか、分からない。
「なにが目的なのかしら?」
誰も来ていない朝の昇降口で私は呟いた。
ハンドバッグに手紙を仕舞い、教室に向かった。
向かいながら、私は行かない方がいいような気がしていた。天野恵のときのようなことがあったら。もし、いじめの前触れなのだとしたら、対処する必要がある。だから私は呼び出しに応じることにした。
ー☆ー
次の日の放課後。俺はいつものように文芸部の部室で過ごしていた。
文芸部の活動日自体は毎週水曜日と金曜日とと決まっている。文芸部の活動がない日でも部室は使っていいということになっている。
3階の文芸部の部室を出て、2階へと降りる。外の空気が吸いたくなって、2階の螺旋階段へ向かった。螺旋階段の踊り場で背筋を伸ばしていると、近くでバタンと扉が閉まる音が聞こえた。ここで扉が閉まる音が聞こえるとしたら、中庭しかありえない。そう思って2階の螺旋階段から中庭を見下ろすと、3人の男子生徒が中庭に来たところだった。1人は中庭に残り、残りの2人は大きな植え込みの陰へと入っていった。俺は不思議に思う。
(なんで中庭に?)
ここの中庭は図書館からしか来れない。屋上の次点で誰も来ない場所でもあった。告白するのに最適な場所とも言える。昨日の俺が告白されたように。
少しして、再びバタンと扉が閉まる音が聞こえた。
(紗希さんが図書館になんで……?)
人が来ない放課後の図書館の中庭に、1組の男女。それがなにを意味するか。
よく見ると植え込みの陰へと入っていった2人がスマホを構えているのが解った。
(まさか……)
螺旋階段の踊り場で俺はどうやって止めようか考えていると、男子生徒は緊張した面持ちで紗希さんに告白しだした。
(紗希さんが、告白されている……)
衝撃的な瞬間を目撃してしまったと思った。
2階だからよほどがない限り気づかれない。そう思っていても、俺は思わず隠れてその様子を見ていた。
そこで俺は告白している男子生徒を見て違和感を感じた。
(誰かに無理やりやらされてるような……)
微かな好意と諦めを孕んだ表情。隠れた2人が構えているスマホ。告白シーンを撮っていると思って間違いないだろう。
そう思っていると、紗希さんは即答で断っているのが見えた。あまりの早さに男子生徒は呆然とし、紗希さんが中庭から去ったあとも立ったままでいた。
「なにしてんの」
俺は呆然と立ったままの男子生徒にそう声をかけた。
男子生徒はびくりと震え、俺のほうを見た。
「た、高野……。なんでここに」
俺はその問いを無視し、大きな植え込みの陰に隠れた2人を冷たい眼差しで見つめて言った。
「そこに隠れてる2人もだよ。ここにいる彼に無理やり紗希さんに告白させて、動画を回してたんだろう?動画を回してニヤついてるのはいいけど、君ら2人がやったことは立派な強要罪だ。動画をネットにでも上げたら名誉毀損と肖像権侵害で一発でアウトだ。そのところ解ってやってる?」
ガサガサと植え込みの陰から出てきたのは、いかにも主犯格ですという雰囲気の2人だった。2人はスマホを握りしめながらガタガタ震えていた。
正直、俺は紗希さんが無害だったらそれでいい。だけど、紗希さんはきっと傷ついてる。俺はそれが許せない。
紗希さんに告白していた男子生徒のほうを向き
「君も君だよ。こんな風に強要されて、こんな形で紗希さんに告白して。紗希さんの尊厳をなんだと思ってるんだよ。嫌だってちゃんといいなよ。紗希さんに微かに好意を持っていたなら、正々堂々告白しなよ。カッコ悪いし情けない」
俺の言葉に男子生徒はガックリと項垂れた。
「そこの2人は今撮ってる動画のデータ以外にも、彼を強要したSNSのやり取りも残ってるんだろう?俺の父さん弁護士だし、弁護士事務所通して学校に報告したっていいんだぜ?その覚悟はあるか?」
俺の言葉に
「ひっ……。ごめんなさい!」
そう言って俺の脇を通りすぎて言った。
俺はその様子を見ながら
(一応、父さんにも相談しておこう)
そう思って図書館の2階へと戻って行った。
ー☆ー
「あのさ」
その次の日の屋上で私達は同時に言った。
その後、少し沈黙が流れた。
先に口火をきったのは、珍しく私の方だった。
「一昨日、告白されていたわよね?」
昴は僅かに目を見開いた。
「なんでそれを知っているんだ?」
私の言葉に昴は驚きを隠せないでいた。
「たまたま目撃してしまって、隠れてその様子を見ていたの」
即答であの子を秒殺で振っていたじゃない。と私は続けた。
「あの子、俺のことを好きなんじゃないよ」
私の言葉に昴はそう言った。そして続ける。
「あの子は俺の本質を理解して好きになっているんじゃない。
誰とも群れないミステリアスで格好いいって、俺のことを知りもせずに勝手に美化してるんだ。俺の本質を知ったら思ってたのと違うっていうに決まってる」
そんな表層だけの人間関係に付き合うほど暇じゃないし。と昴はバッサリ斬って捨てた。
「それを言ったら、紗希さんだって昨日、告白されていたじゃないか」
私は僅かに目を見開く。
「……なんで知ってるの?」
私の言葉に
「昨日は部活の日で、図書館に居たんだ。外の空気が吸いたくなって、螺旋階段の踊り場に居たんだ。そしたらたまたま目撃してしたんだよ」
サキさんだって容赦なく断ってて、告白してきた男子フリーズしてたぞ。とス昴は言った。
「「心の声」を聞いてしまったから」
私はポツリと言った。
「どんな「心の声」を聞いたんだ?」
昴は私の瞳を覗き込むように見つめて聞いた。
「罰ゲームで告白してこいよって言われたんですって。
でも、1人で凛としているところが綺麗だなって思ってんですって。
私の本質を知って告白してきたんじゃないのよ、彼は」
私は誰も信じないって決めてるからって断ったわ。と昴と同じくバッサリ斬って捨てた。
「小説でもそうよね。男女が登場する小説だと、大体恋愛に発展しているように思う」
どこか呟くように、私は言った。
「そうだね」
昴はその言葉に同意する。
「男女の友情は成立するのかしらね」
私の呟きに、昴は
「時と場合によるんじゃないか?
恋愛関係にしろなんにしろ、相手を知らないとなにもできないと思う」
助けるにしても一緒にいるにしても。と昴は続ける。
「それに、友情があるから恋愛感情になったときに真っ当に成立するんじゃないの?って俺は思ってる」
「それが昴の恋愛観?」
私の問いに昴は頷いた。
「紗希さんはどう思うの?」
昴の問いに私は
「誰かを好きになる。その感情は今の私にはわからないわ。でも」
そこで一旦言葉をきる。少し間をおいて
「昴と同じく、友情があるから恋ができるんじゃないかとは、思うわ」
私もだいぶ変わったのね。そう昴に言って続ける。
「だから表面だけを見ないで、ちゃんと私を見てほしいとは思うわ」
表面だけを好きになってほしくない。
それには昴も頷いて同意を示した。。
「紗希さん」
昴は私のことを優しく読んだ。私は首を傾げた。
「今度、教室でも話しかけていい?」
それが何を意味するのか。
私は悩んだ。
(昴、だったら)
嫌じゃない。と私は思った。
私はコクンと頷いた。
「ありがとう」
それを見た昴は嬉しそうに笑って言った。

