○緋埜の家・朝
緋埜の家の中。
広々とした、いかにも豪邸という風な内装が写される。
緋埜「さあ」
食卓に着く緋埜。
緋埜「遠慮なく食べるといい」
緋埜の向かいには、澄子が座っている。
2人の目の前には豪華な洋風の朝食。
澄子「……!」
目を輝かせつつも困惑して震える澄子。
澄子の服は小綺麗なものに替わっており、髪も梳かれて整っている。
澄子(ど、どうしてこんなことに……!)
ぐるぐると目を回す澄子。
○1話の直後・サーカスのテント内・明け方
女性団員①「ひ、日ノ出座……!?」
女性団員②「それに、瀧上って……!」
驚愕する女性団員①と②。
緋埜「神森座の『悪い噂』が耳に入ってな。真偽を確かめるために潜り込ませてもらった」
鋭い目つきで女性団員たちを見据える緋埜。
緋埜「果たして、噂は――本当だったようだな」
澄子を守るように、緩く抱きしめる緋埜。
緋埜「澄子はこの瀧上緋埜が保護する。異論は認めない」
力強い視線で女性団員たちを睨む緋埜。
澄子は彼の腕の中で、固唾を呑む。
女性団員①「っ……!」
歯ぎしりをする女性団員①。
緋埜「神森英造に伝えておけ。貴様らの腐った性根を、客は目聡く見抜くぞ……と」
踵を返し、澄子を連れてテントを出ていく緋埜。
○サーカスのテント付近
夜道を歩く澄子と緋埜。
しばらく無言。
澄子「あ、あの、私……これから……」
恐る恐る口を開く澄子。
緋埜「心配するな。先の言葉に偽りは無い」
優しく微笑む緋埜。
緋埜「心も体も疲れているだろう。まずは、俺の家で休むといい」
立ち止まる緋埜。
そこには自動車が停まっている。
※緋埜の所有する自動車。運転手付き。
○緋埜の家・朝(冒頭つづき)
澄子(寝床を用意してもらえるだけでも、有り難いのに)
恐縮のあまりうつむく澄子。
澄子(綺麗な服に、髪まで整えてもらって……)
回想:緋埜の家に着いた後、使用人に世話をしてもらう澄子。
澄子(しかも、こんなに豪華なご飯……生まれて初めて……!)
澄子の目に、キラキラと輝いて見える料理。
澄子「い、いただきます」
震える手を合わせる澄子。
緋埜「ああ」
にこりと笑う緋埜。
澄子は並べられたカトラリーに手を伸ばす。
が、いくつも種類があるそれらに、ぴたりと手が止まる。
澄子「あ……」
澄子(どうしよう……食器の使い方がわからない)
顔を曇らせる澄子。
澄子(今までずっと、手で食べてたから)
回想:神森座にて、浅い皿に少しだけ盛られた食事を、手で食べる澄子。
※澄子が受けていた酷い扱いを強調する描写。
澄子(やっぱり、卑しい私なんかが手を付けて良いものじゃ……)
手を引っ込める澄子。
緋埜「…………」
ハッと、澄子の様子に気付く緋埜。
緋埜「すまない、出す食器を間違えていたようだ」
おもむろに席を立つ緋埜。
そのまま緋埜は、自分と澄子のカトラリーを全て下げ、代わりに木製の使いやすい匙を置く。
緋埜「実を言うと俺の家では、朝食には匙だけを使うのが作法なんだ」
見え透いた嘘だが、澄子のためにあくまで堂々と言う緋埜。
澄子は呆気に取られた表情をする。
緋埜「久々の来客で緊張していたせいか、うっかりしていた。許してくれ」
席に座り直す緋埜。
匙を見つめ、手に取る澄子。
澄子「ありがとう、ございます」
泣きそうな顔で感謝する澄子。
緋埜は何でもないことのように、ただ柔らかく微笑む。
澄子「……っ」
匙を使い、料理を口に入れる澄子。
ひと口食べただけで、目を見開き、感激の表情。
緋埜「口に合うか?」
澄子「は、はい! とても……とても美味しいです」
震えた声で言う澄子。
緋埜は満足げに頷き、自分も料理を食べる。
緋埜「さて、澄子。食べながらで良い。聞いてくれ」
いったん手を止め、話し始める緋埜。
緋埜「少々繰り返しになるが、君のことは俺が保護する。清潔な服と、栄養のある食事と、安心して眠れる場所を用意しよう」
真摯な表情で言う緋埜。
澄子は思わず背筋を伸ばす。
緋埜「そして、君を我が日ノ出座に迎え入れる」
澄子「えっ……!?」
ガタッと椅子を揺らして驚く澄子。
緋埜「何をそんなに驚く。言っただろう、『明るい場所へ君を連れて行こう』と」
首を傾げる緋埜。
緋埜「君の踊りは、例えるならば原石だ。正しく磨けばこの上なく輝き、人々を魅了する」
澄子「でっ、でも、私なんか……!」
緋埜「そう自分を卑下するな。君には才がある。日ノ出座の座長が保証しよう」
真っ直ぐに澄子を見つめる緋埜。
澄子はうつむき、口を噤む。
緋埜「君は、舞台で踊りたくはないのか?」
澄子「そ、それは……」
逡巡する澄子。
回想:舞台で踊る団員たちを、澄子が憧れの目で見ている。
ぎゅっと手を握りしめ、顔を上げる澄子。
澄子「踊り、たいです。私も……あんなふうに輝いてみたい」
まだ自信なさげだが、それでも言い切る澄子。
※決意の場面。
緋埜「決まりだな」
頷く緋埜。
○町中・昼
穏やかな昼の町中。
1話の街よりも少し落ち着いた雰囲気で、人通りも少ない。
緋埜「知っての通り、日ノ出座は2年前に発足したばかりだ。本拠地をこの街に置いていて、今は丁度、巡業を終えて戻ってきている」
自動車の後部座席に座り、話す緋埜。
隣には澄子が座っている。
澄子「日ノ出座は緋埜さんが立ち上げたんですか?」
緋埜「ああ」
澄子(華族の方とはいえ、この若さで……。すごいなあ)
心から感心する澄子。
澄子「お父様やお母様も、鼻が高いでしょうね」
何の気なしに言う澄子。
すると、緋埜は顔を曇らせる。
緋埜「……そうだな」
複雑な表情で笑う緋埜。
※両親との間に確執があることを示唆。
澄子「?」
緋埜の表情の変化に、眉をひそめる澄子。
○日ノ出座の共同住居・昼
共同住居の敷地内に、自動車が停止する。
自動車から緋埜と、彼にエスコートされた澄子が下りる。
緋埜「ここが、団員たちの住まいだ」
目の前にある建物を示す緋埜。
建物は2階建てで、洋風の寄宿舎のような外観をしている。
澄子「大きい……!」
口を開けて驚く澄子。
緋埜「巡業の合間の休息所、と言っても良い。俺のように自宅を持つ者もいるが、便利だからと大半の団員がここで暮らしている」
歩き出す緋埜。
澄子もそれに続く。
緋埜「皆、気の良い者たちばかりだ。きっと君を歓迎する」
澄子「……はい」
頷きながらも、不安が顔に出ている澄子。
緋埜が玄関扉の前に立ち、呼び鈴を鳴らす。
あざみ「はーい」
扉が開き、あざみが現れる。
【あざみ:25歳。艶のある美女。ウェーブのかかったたおやかな黒髪。】
あざみ「あら、座長――」
パッと顔を明るくするが、澄子を見て表情が固まるあざみ。
あざみは勢いよく身を翻し、扉を閉めて、建物の中へと駆け足で戻っていく。
澄子(や……やっぱり、私なんか……)
震えながらうつむく澄子。
そんな澄子の肩を、緋埜は優しく叩く。
澄子が顔を上げると、緋埜は「大丈夫」と言わんばかりの表情で、扉の方を見るように無言で促す。
恐る恐る、再び扉を見る澄子。
次の瞬間、扉が勢いよく開く。
鈴代「えーっ! 新入り!?」
加代「新入りちゃんだ! かわいーっ!」
扉からワッと飛び出してくる日ノ出座の団員たち。
※緊張→緩和のシーン。
【鈴代:22歳。短髪の活発そうな女性。向かって右の横髪が巻いている。※加代の双子の姉。】
【加代:22歳。短髪の活発そうな女性。向かって左の横髪が巻いている。※鈴代の双子の妹。】
あざみ「ねっ!? ねっ!?」
興奮した様子で、「言ったでしょう!」とばかりに団員たちを見るあざみ。
六太「座長直々の紹介!? じゃあすっごい期待の新星じゃん!」
目を輝かせて言う六太。
【六太:16歳。やや小柄な少年。長めの髪を三つ編みにしている。】
辰峯「ほほう、これはまた」
興味深そうに笑みを浮かべ、顎をさする辰峯。
【辰峯:26歳。どこか胡散臭い雰囲気のある美男。】
緋埜「待て。まだ誰も新入りとは言っていないだろう」
わいわいと盛り上がる団員たちに、制止の言葉をかける緋埜。
あざみ「え、違うの?」
目を丸くするあざみ。
緋埜「新入りだ」
すまし顔で言う緋埜。
あざみ「やだもう、やっぱりそうじゃない!」
鈴代「やったあ!」
加代「歓迎会しましょ、歓迎会!」
再び盛り上がる団員たち。
澄子「…………」
団員たちの様子を、呆気に取られて見つめる澄子。
緋埜「こういう者たちだ。まあ、多少喧しいが……大目に見てやってくれ」
溜め息交じりに言う緋埜。
緋埜「どうだ。日ノ出座で、やっていけそうか」
にこ、と笑う緋埜。
澄子はぎゅっと胸の前で手を握りしめる。
澄子「……はいっ!」
少し明るい表情で、頷く澄子。
○神森座のテント内・昼
英造「どういうことだ!」
団員たちが集められたテントの中で、怒号が響く。
女性団員①「そ、その……先ほど申し上げた通りで……」
バツの悪そうな顔の女性団員①と②。
他の団員たちも、気まずそうな顔をしている。
英造「不破が日ノ出座の座長で! しかも瀧上家の嫡男で! あのノロマを連れて出ていったと!?」
女性団員②「は、はい……」
英造「なぜ誰も奴の正体に気付かなんだ!」
女性団員①「日ノ出座を見に行ったことがありませんし……それに、広告でも」
日ノ出座のビラを差し出して見せる女性団員①。
そこには団員たちの姿が描かれているが、座長=緋埜は仮面をしており人相がよくわからない。
英造「ぐうう……こけにしおって……!」
顔を真っ赤にして怒りに震える英造。
英造「華族のぼんくら息子と、役立たずのみなしご風情が……! ただで済むと思うな……!」
日ノ出座のビラをぐしゃりと握り潰す英造。
緋埜の家の中。
広々とした、いかにも豪邸という風な内装が写される。
緋埜「さあ」
食卓に着く緋埜。
緋埜「遠慮なく食べるといい」
緋埜の向かいには、澄子が座っている。
2人の目の前には豪華な洋風の朝食。
澄子「……!」
目を輝かせつつも困惑して震える澄子。
澄子の服は小綺麗なものに替わっており、髪も梳かれて整っている。
澄子(ど、どうしてこんなことに……!)
ぐるぐると目を回す澄子。
○1話の直後・サーカスのテント内・明け方
女性団員①「ひ、日ノ出座……!?」
女性団員②「それに、瀧上って……!」
驚愕する女性団員①と②。
緋埜「神森座の『悪い噂』が耳に入ってな。真偽を確かめるために潜り込ませてもらった」
鋭い目つきで女性団員たちを見据える緋埜。
緋埜「果たして、噂は――本当だったようだな」
澄子を守るように、緩く抱きしめる緋埜。
緋埜「澄子はこの瀧上緋埜が保護する。異論は認めない」
力強い視線で女性団員たちを睨む緋埜。
澄子は彼の腕の中で、固唾を呑む。
女性団員①「っ……!」
歯ぎしりをする女性団員①。
緋埜「神森英造に伝えておけ。貴様らの腐った性根を、客は目聡く見抜くぞ……と」
踵を返し、澄子を連れてテントを出ていく緋埜。
○サーカスのテント付近
夜道を歩く澄子と緋埜。
しばらく無言。
澄子「あ、あの、私……これから……」
恐る恐る口を開く澄子。
緋埜「心配するな。先の言葉に偽りは無い」
優しく微笑む緋埜。
緋埜「心も体も疲れているだろう。まずは、俺の家で休むといい」
立ち止まる緋埜。
そこには自動車が停まっている。
※緋埜の所有する自動車。運転手付き。
○緋埜の家・朝(冒頭つづき)
澄子(寝床を用意してもらえるだけでも、有り難いのに)
恐縮のあまりうつむく澄子。
澄子(綺麗な服に、髪まで整えてもらって……)
回想:緋埜の家に着いた後、使用人に世話をしてもらう澄子。
澄子(しかも、こんなに豪華なご飯……生まれて初めて……!)
澄子の目に、キラキラと輝いて見える料理。
澄子「い、いただきます」
震える手を合わせる澄子。
緋埜「ああ」
にこりと笑う緋埜。
澄子は並べられたカトラリーに手を伸ばす。
が、いくつも種類があるそれらに、ぴたりと手が止まる。
澄子「あ……」
澄子(どうしよう……食器の使い方がわからない)
顔を曇らせる澄子。
澄子(今までずっと、手で食べてたから)
回想:神森座にて、浅い皿に少しだけ盛られた食事を、手で食べる澄子。
※澄子が受けていた酷い扱いを強調する描写。
澄子(やっぱり、卑しい私なんかが手を付けて良いものじゃ……)
手を引っ込める澄子。
緋埜「…………」
ハッと、澄子の様子に気付く緋埜。
緋埜「すまない、出す食器を間違えていたようだ」
おもむろに席を立つ緋埜。
そのまま緋埜は、自分と澄子のカトラリーを全て下げ、代わりに木製の使いやすい匙を置く。
緋埜「実を言うと俺の家では、朝食には匙だけを使うのが作法なんだ」
見え透いた嘘だが、澄子のためにあくまで堂々と言う緋埜。
澄子は呆気に取られた表情をする。
緋埜「久々の来客で緊張していたせいか、うっかりしていた。許してくれ」
席に座り直す緋埜。
匙を見つめ、手に取る澄子。
澄子「ありがとう、ございます」
泣きそうな顔で感謝する澄子。
緋埜は何でもないことのように、ただ柔らかく微笑む。
澄子「……っ」
匙を使い、料理を口に入れる澄子。
ひと口食べただけで、目を見開き、感激の表情。
緋埜「口に合うか?」
澄子「は、はい! とても……とても美味しいです」
震えた声で言う澄子。
緋埜は満足げに頷き、自分も料理を食べる。
緋埜「さて、澄子。食べながらで良い。聞いてくれ」
いったん手を止め、話し始める緋埜。
緋埜「少々繰り返しになるが、君のことは俺が保護する。清潔な服と、栄養のある食事と、安心して眠れる場所を用意しよう」
真摯な表情で言う緋埜。
澄子は思わず背筋を伸ばす。
緋埜「そして、君を我が日ノ出座に迎え入れる」
澄子「えっ……!?」
ガタッと椅子を揺らして驚く澄子。
緋埜「何をそんなに驚く。言っただろう、『明るい場所へ君を連れて行こう』と」
首を傾げる緋埜。
緋埜「君の踊りは、例えるならば原石だ。正しく磨けばこの上なく輝き、人々を魅了する」
澄子「でっ、でも、私なんか……!」
緋埜「そう自分を卑下するな。君には才がある。日ノ出座の座長が保証しよう」
真っ直ぐに澄子を見つめる緋埜。
澄子はうつむき、口を噤む。
緋埜「君は、舞台で踊りたくはないのか?」
澄子「そ、それは……」
逡巡する澄子。
回想:舞台で踊る団員たちを、澄子が憧れの目で見ている。
ぎゅっと手を握りしめ、顔を上げる澄子。
澄子「踊り、たいです。私も……あんなふうに輝いてみたい」
まだ自信なさげだが、それでも言い切る澄子。
※決意の場面。
緋埜「決まりだな」
頷く緋埜。
○町中・昼
穏やかな昼の町中。
1話の街よりも少し落ち着いた雰囲気で、人通りも少ない。
緋埜「知っての通り、日ノ出座は2年前に発足したばかりだ。本拠地をこの街に置いていて、今は丁度、巡業を終えて戻ってきている」
自動車の後部座席に座り、話す緋埜。
隣には澄子が座っている。
澄子「日ノ出座は緋埜さんが立ち上げたんですか?」
緋埜「ああ」
澄子(華族の方とはいえ、この若さで……。すごいなあ)
心から感心する澄子。
澄子「お父様やお母様も、鼻が高いでしょうね」
何の気なしに言う澄子。
すると、緋埜は顔を曇らせる。
緋埜「……そうだな」
複雑な表情で笑う緋埜。
※両親との間に確執があることを示唆。
澄子「?」
緋埜の表情の変化に、眉をひそめる澄子。
○日ノ出座の共同住居・昼
共同住居の敷地内に、自動車が停止する。
自動車から緋埜と、彼にエスコートされた澄子が下りる。
緋埜「ここが、団員たちの住まいだ」
目の前にある建物を示す緋埜。
建物は2階建てで、洋風の寄宿舎のような外観をしている。
澄子「大きい……!」
口を開けて驚く澄子。
緋埜「巡業の合間の休息所、と言っても良い。俺のように自宅を持つ者もいるが、便利だからと大半の団員がここで暮らしている」
歩き出す緋埜。
澄子もそれに続く。
緋埜「皆、気の良い者たちばかりだ。きっと君を歓迎する」
澄子「……はい」
頷きながらも、不安が顔に出ている澄子。
緋埜が玄関扉の前に立ち、呼び鈴を鳴らす。
あざみ「はーい」
扉が開き、あざみが現れる。
【あざみ:25歳。艶のある美女。ウェーブのかかったたおやかな黒髪。】
あざみ「あら、座長――」
パッと顔を明るくするが、澄子を見て表情が固まるあざみ。
あざみは勢いよく身を翻し、扉を閉めて、建物の中へと駆け足で戻っていく。
澄子(や……やっぱり、私なんか……)
震えながらうつむく澄子。
そんな澄子の肩を、緋埜は優しく叩く。
澄子が顔を上げると、緋埜は「大丈夫」と言わんばかりの表情で、扉の方を見るように無言で促す。
恐る恐る、再び扉を見る澄子。
次の瞬間、扉が勢いよく開く。
鈴代「えーっ! 新入り!?」
加代「新入りちゃんだ! かわいーっ!」
扉からワッと飛び出してくる日ノ出座の団員たち。
※緊張→緩和のシーン。
【鈴代:22歳。短髪の活発そうな女性。向かって右の横髪が巻いている。※加代の双子の姉。】
【加代:22歳。短髪の活発そうな女性。向かって左の横髪が巻いている。※鈴代の双子の妹。】
あざみ「ねっ!? ねっ!?」
興奮した様子で、「言ったでしょう!」とばかりに団員たちを見るあざみ。
六太「座長直々の紹介!? じゃあすっごい期待の新星じゃん!」
目を輝かせて言う六太。
【六太:16歳。やや小柄な少年。長めの髪を三つ編みにしている。】
辰峯「ほほう、これはまた」
興味深そうに笑みを浮かべ、顎をさする辰峯。
【辰峯:26歳。どこか胡散臭い雰囲気のある美男。】
緋埜「待て。まだ誰も新入りとは言っていないだろう」
わいわいと盛り上がる団員たちに、制止の言葉をかける緋埜。
あざみ「え、違うの?」
目を丸くするあざみ。
緋埜「新入りだ」
すまし顔で言う緋埜。
あざみ「やだもう、やっぱりそうじゃない!」
鈴代「やったあ!」
加代「歓迎会しましょ、歓迎会!」
再び盛り上がる団員たち。
澄子「…………」
団員たちの様子を、呆気に取られて見つめる澄子。
緋埜「こういう者たちだ。まあ、多少喧しいが……大目に見てやってくれ」
溜め息交じりに言う緋埜。
緋埜「どうだ。日ノ出座で、やっていけそうか」
にこ、と笑う緋埜。
澄子はぎゅっと胸の前で手を握りしめる。
澄子「……はいっ!」
少し明るい表情で、頷く澄子。
○神森座のテント内・昼
英造「どういうことだ!」
団員たちが集められたテントの中で、怒号が響く。
女性団員①「そ、その……先ほど申し上げた通りで……」
バツの悪そうな顔の女性団員①と②。
他の団員たちも、気まずそうな顔をしている。
英造「不破が日ノ出座の座長で! しかも瀧上家の嫡男で! あのノロマを連れて出ていったと!?」
女性団員②「は、はい……」
英造「なぜ誰も奴の正体に気付かなんだ!」
女性団員①「日ノ出座を見に行ったことがありませんし……それに、広告でも」
日ノ出座のビラを差し出して見せる女性団員①。
そこには団員たちの姿が描かれているが、座長=緋埜は仮面をしており人相がよくわからない。
英造「ぐうう……こけにしおって……!」
顔を真っ赤にして怒りに震える英造。
英造「華族のぼんくら息子と、役立たずのみなしご風情が……! ただで済むと思うな……!」
日ノ出座のビラをぐしゃりと握り潰す英造。
