怪異だって、現代社会では生きづらい。 ~元OL、怪異専門の相談所「KGB」を始めます~

「ねー、死神ちゃん、こないだの依頼料ってそろそろ振り込まれてもいい頃よね」

「所長さんから連絡があって、昨日振り込んだって言ってたよ、すごく感謝された。あれから事故もなく予定より早く工程が進んでるらしい」

私はもう一度スマートフォンでネットバンキングにログインしたのだけど。

取引後残高12,565円

3日前と変わらない微妙な残高しか確認できない どうなってんの?
どこに振り込んだの?

「死神ちゃん、間違った銀行口座教えたんじゃないでしょうね〜」
私は今月分の家賃が払えなくて、
焦っていたので死神ちゃんに空手の型を作りながら問い詰めた。


「ちょっと待って、、落ち着いて!落ち着いてイツキ!!今調べるから!!」

「三星UFJ六本木支店だよね、エカテリーナから、それがKGBのメインバンクにするって教えてもらったけど?」

なに、その聞き覚えのない銀行?
私はエカテリーナに、そのままの体勢で向き直した。


「ちょっとあんた待ちなさいよ!! 何私を冥府に送ろうとしてるのよ!
あなたには私を冥府には送れないって言ってるでしょ〜」

「おぼこよ、悪魔を送るならワラワをつけよ」

「あんたほんとに物覚え悪いわよね
ロシア大使館に勤務すると決まったときに、新しく銀行口座作ったのもう忘れてるの?
私はあなたの銀行口座なんかその情報しかもらってないから、それをメインバンクにしただけよ」

そうだった!すっかり忘れていたその銀行のこと、、
あった!このアプリだ!! え〜とパスワードはいつも使ってる 222Neko5656
これでいいわね!

「死神ちゃん、いくら請求した?」

「一応企業案件だから、ちょっと多めに300,000だったけど、少なかったかな」

私のスマートフォンには、

取引後残高1,892,378円。

と表示がされている 手が震えた、、、 スマートフォンを落としそうになる。

「死神ちゃん、振り込みの金額が間違えているみたい。所長さんにちゃんと確認してもらってもいいかな?」

「ひゃっひゃっ189万円入ってるんですけど、、、」

「イツキあなた、ほんとにそういうところ無頓着よね
あなたはまだロシア大使館に勤めていて
しかもゲーエルウーに在籍中だって事忘れているでしょ?それは3ヶ月分の報酬よ!」

「へへへ返金します!こんな言われのないお金受け取れません!!今後も振り込まないでくださいって伝えて下さい。お願いします。」

こんな恐ろしいお金持っていたらスパイだと思われる。
ちょっとかっこいいけど、
ちょっともったいないけど、喉
から手が出るほど欲しいけど、

やっぱりもらっちゃだめだよね。

エカテリーナとすったもんだやりとりした後、
ようやく納得してもらって、返金手続きを進めることにした

とは言え 初の依頼料は ゲット!!!!

そっちはとても嬉しい!!

「え〜ということで〜 大五郎さんとわらしちゃんの歓迎会、それと〜
KGB初の依頼料ゲットのお祝いとして、今日の夕飯はすき焼きパーティーにしたいと思います!!!!」

めちゃくちゃいい匂いがしている、

皆カウンターに並んで、
大五郎さんのいる厨房で、
その料理の手さばきを真剣に見ている。
誰1人として口をきかない。
きけないのだ。

いつもは騒がしいKGBのメンバーが誰1人として口をきかない。

私もお腹が鳴っているだけでしゃべれないでいる。

「できただよ〜すき焼きのほかにオラ適当に作っただ。なんだかんだあるからみんないっぱい食ってくれなぁ〜」

ああ神様この幸せな瞬間をありがとう 今日は奮発して、100グラム243円の和牛!
卵も高級地鶏 大五郎さんの田舎料理の数々...

エカテリーナは盛り付けが田舎臭いとか、色合いがどうだとか憎まれ口を言いながら.
チャラ男は皆のドリンクを作りながら 死神ちゃんはただひたすら黙々と.
無表情だったわらしちゃんは満面の笑顔で.
私は狙いをつけているあのもうすぐ食べられそうな牛肉の仕上がり具合を凝視しながら。

この幸せな食卓は一瞬にして終わったのだ、、、、

ご飯は2度炊いた、、、

「お弁当屋やろう!!大五郎さん、
まだ仕事決まってないでしょう?
こんなにおいしいんだから、お弁当屋さんやりましょうよ!
私も、料理手伝えるし どうせKGBなんかお客来ないんだから
BARのおつまみも一緒に作ってくれたら夜の営業も任せられるし
それにウチにはわらしちゃんと言う最強チート開運少女が居るからね!」

それを聞いたエカテリーナは、満腹でカウンターで突っ伏していた顔をあげ、どや顔でよろよろと立ち上がった。

「マーケティングや経営は私に任せなさい!
こんなハイクオリティーな料理食べたことないわ!この事業、必ず成功させる。
私に任せなさい イツキこれで儲けるんなら、あんたも文句ないわよね!!」

「じゃあ僕は近くの会社を回ってお弁当の注文を取る。営業してくるよ。
これでも死神のリクルーターだからね!」

妙に会社員臭いことを言う死神が仰向けになって、腹をさすりながら営業の話をしているのがシュールで笑える。

「じゃあチャラ男はお弁当の配達員で良いわね」

チャラ男は何か言いたそうだったが、私が型を構えているのでうんうんとうなずいている。

「ノアルは、、、、、幽体だから、、、、、経理?、、できる?」

「大丈夫、私だってアパートの管理してたんだから」

ノアル、幽体の方がしっかりしているんじゃない?

大五郎さんは赤鬼になったり、ピンク鬼になったりしながらとてもうれしそうだった。