もう一度聞こうとして朝倉を見たら。またスマートフォンの通知が来た。今度は吹奏楽部の、部員からのメッセージだった。
『朝倉くん、顧問が探してるよ!どこいったの…?』
「やば……!」
俺たちは慌てて、学校へ戻った。
抜け出した時間は結果的に2時間ほどだったのだが。雨に降られてびしょ濡れの格好で帰ってきたのだ。外に出ていたのは明白…。
「一体こんな時間までどこに行ってたんだ…?!」
「そ、その…、気分転換に…」
そんないいわけが通るわけもなく、戻った俺たちは自主練はせずに、夕飯を食べたらおとなしく部屋にいるようにと言われてしまった。
つまり、プチ謹慎ってこと。
「元に戻れなかったし、明後日のホール練習の前にもう少し練習したかったな…」
俺がため息混じりに言うと、朝倉もため息をつく。
「それより、汗かいて気持ち悪い…」
朝倉は俺の顔を覗き込んで尋ねた。
「風呂、入っちゃう?」
「女子より先に入るのはまずいだろ~…。あいつらうるせーよ。たぶん…」
濡れた服は脱いでジャージに着替えたけれど、風呂には入れていない。自主練の時間が終わって、女子が風呂に入るまで待たなければならないのだ。
汗をかいて気持ちが悪いことには同意するが、状況的にいって待つしかない。
「そっか~…。じゃ、とりあえず外出てみる?夜風に当たると気持ちいいかもしれないし」
「さっき、怒られたばかりだろ…」
「自主練でみんな帰ってくる時間ははっきりしてるじゃん。それまでに戻れば大丈夫だよ」
朝倉はいたずらっぽく笑うと、立ち上がった。
「おい…!」
呼び止めたが、朝倉は俺を振り返らず行ってしまう。
そういえば朝倉って俺がコンクールのメンバーから外された時、先生に意見するくらい大胆…、というか、向こう見ずな男だった…!
「どこ行くんだよ、朝倉~!」
朝倉は合宿所を出てグラウンドの方へ歩いて行く。そして、何か見つけたようで嬉々として俺に振り向いた。
「黒瀬、プールがあいてる…!」
「プール…?!」
目を凝らしてみるとグラウンドの端っこにあるプールの扉が、確かに開いている。今日、水泳部が練習していたから、誰かが閉め忘れたのかもしれない。
「プールでシャワー浴びようぜ!」
「え…?!何言ってるんだよ、また見つかったら怒られるぞ!」
「空いてたから閉めときました!って言えば大丈夫だって!」
まだ同意していないのに、朝倉は一目散に走って行ってしまう。
仕方なく俺は朝倉を追いかけた。
俺の体なのに、朝倉はあっという間にプールまで到着してしまった。
「さっきはバテたくせに、こんな時に鍛えてた成果を出すなよ…!」
引き止めようと声をかけたがその甲斐なく、朝倉は中に入ってしまった。
そしてすぐジャージを脱ぎパンツ一丁になると、外に設置されているシャワーをひねる。
「ふぁーー、サイコー!」
「おい、勝手に脱ぐなよっ!しかも真っ裸で見られたらどうすんだ!」
「大丈夫だよ。学校の門は閉まってて俺たち以外誰もいないし、暗いから見えないって…!俺も見てない♡」
朝倉はそう言ったが…。気のせいだろうか?なんか、シャワーの中で目、開けてない…?
しかし、朝倉があまりにも気持ち良さそうなので、俺もジャージを脱いでシャワーをひねる。
「つめたー!」
真夏とはいえ、夜の水道水はまあまあ冷たかった。でも、汗を流すにはちょうどいい。
「せっかくだからプール入ろうぜ!」
「え…?!」
朝倉はプールに走って行ってしまった。
お前、何する気だ?ま、まさか……!
「やめろ!俺、泳げないんだぞ?!」
「え…?!」
止めたけど、間に合わなかった。水しぶきとともに、どボーンと、大きな音がする。
「ぐはぁ…っ。ご…っ!」
「お、おい~~…!」
人の体で、勝手に溺れるな…っ!
泳げないけど、俺は仕方なくプールに飛び込んだ。
朝倉は泳げるらしい。飛び込んでも全く問題なかった。それにプールは110mくらいの深さだ。足がつくので、普通なら溺れないだろう。
しかし、朝倉は焦って溺れかけている。俺は朝倉のところまで、水を掻き分けて近づいた。
「足つくから落ち着けって!」
「う…っ!ごほ…!」
「朝倉、俺の体で死ぬなよ~~!」
慌てている朝倉の腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。俺の胸にもたれる格好になると安定したのかようやく落ち着いた。
「げ…、げほ…。あ…、ありがとう。びっくりした~。まさかカナヅチなんて…」
「人の話も聞かずに飛びこむからだろ!俺の体、大切にしてくれよ!なんでこんな突拍子もないことするんだよ…!」
「ごめん、つい…」
朝倉は俺にしがみ付いたまま、がくっと項垂れる。
「……今日黒瀬が落ち込んでたからなんとかしないと、って思って…」
「え……?」
それは、俺が先生の楽譜を見たこと…?
「アルトサックスのソロの件なら、朝倉が先生から直接言われてもないことで落ち込むなって、言ってたじゃん」
「……それもそうだし、今日、元に戻れなかっただろ?」
今日は、コンクール前に元の体に戻れる最後のチャンスだと思ったから合宿を抜け出したのだ。だからがっかりしたし、ショックだったことも確かだ。
「黒瀬、俺はもし戻れなくても…、いいかなって思ってて」
「朝倉…?」
SNSではそう言っていたけど、直接言われるのは初めてだ。今、その話をするってことは…。
告白…?
俺の心臓は、ドキンと大きな音を立てた。
朝倉は、顔を上げて正面から俺を見つめる。
「今まで黒瀬とはパートもクラスも違うから、あんまり話もできなかったけど、入れ替わってからは毎日黒瀬と会って、話せるようになって。……すごく、楽しくてさ」
朝倉は俺の顔で柔らかく微笑んだ。
……なんて顔するんだよ、朝倉。
俺の顔でそんなに、『お前が大好き』みたいな顔、しないでほしいんだけど……。
「もしこのまま元に戻らなかったら、同じ大学にいって、もっと、ずっと一緒に……」
それ、俺も同じことを考えてた。
ひょっとして俺たち…、両思いだったり、して…。
「……」
続く言葉は告白かもしれないと思っていた。でも、朝倉はその先を言わなかった。
ただ、少し寂しそうに俺を見つめる。
例え何も言わなくても、朝倉の言いたいことは分かった。
『…でも、黒瀬は迷惑だよな。男の俺にこんなこと言われても…』
抱き寄せた自分の体から切ない気持ちがいやってほど伝わってきて、胸が締め付けられる。
ーー気がついたらどちらからともなく、キスしていた。
『朝倉くん、顧問が探してるよ!どこいったの…?』
「やば……!」
俺たちは慌てて、学校へ戻った。
抜け出した時間は結果的に2時間ほどだったのだが。雨に降られてびしょ濡れの格好で帰ってきたのだ。外に出ていたのは明白…。
「一体こんな時間までどこに行ってたんだ…?!」
「そ、その…、気分転換に…」
そんないいわけが通るわけもなく、戻った俺たちは自主練はせずに、夕飯を食べたらおとなしく部屋にいるようにと言われてしまった。
つまり、プチ謹慎ってこと。
「元に戻れなかったし、明後日のホール練習の前にもう少し練習したかったな…」
俺がため息混じりに言うと、朝倉もため息をつく。
「それより、汗かいて気持ち悪い…」
朝倉は俺の顔を覗き込んで尋ねた。
「風呂、入っちゃう?」
「女子より先に入るのはまずいだろ~…。あいつらうるせーよ。たぶん…」
濡れた服は脱いでジャージに着替えたけれど、風呂には入れていない。自主練の時間が終わって、女子が風呂に入るまで待たなければならないのだ。
汗をかいて気持ちが悪いことには同意するが、状況的にいって待つしかない。
「そっか~…。じゃ、とりあえず外出てみる?夜風に当たると気持ちいいかもしれないし」
「さっき、怒られたばかりだろ…」
「自主練でみんな帰ってくる時間ははっきりしてるじゃん。それまでに戻れば大丈夫だよ」
朝倉はいたずらっぽく笑うと、立ち上がった。
「おい…!」
呼び止めたが、朝倉は俺を振り返らず行ってしまう。
そういえば朝倉って俺がコンクールのメンバーから外された時、先生に意見するくらい大胆…、というか、向こう見ずな男だった…!
「どこ行くんだよ、朝倉~!」
朝倉は合宿所を出てグラウンドの方へ歩いて行く。そして、何か見つけたようで嬉々として俺に振り向いた。
「黒瀬、プールがあいてる…!」
「プール…?!」
目を凝らしてみるとグラウンドの端っこにあるプールの扉が、確かに開いている。今日、水泳部が練習していたから、誰かが閉め忘れたのかもしれない。
「プールでシャワー浴びようぜ!」
「え…?!何言ってるんだよ、また見つかったら怒られるぞ!」
「空いてたから閉めときました!って言えば大丈夫だって!」
まだ同意していないのに、朝倉は一目散に走って行ってしまう。
仕方なく俺は朝倉を追いかけた。
俺の体なのに、朝倉はあっという間にプールまで到着してしまった。
「さっきはバテたくせに、こんな時に鍛えてた成果を出すなよ…!」
引き止めようと声をかけたがその甲斐なく、朝倉は中に入ってしまった。
そしてすぐジャージを脱ぎパンツ一丁になると、外に設置されているシャワーをひねる。
「ふぁーー、サイコー!」
「おい、勝手に脱ぐなよっ!しかも真っ裸で見られたらどうすんだ!」
「大丈夫だよ。学校の門は閉まってて俺たち以外誰もいないし、暗いから見えないって…!俺も見てない♡」
朝倉はそう言ったが…。気のせいだろうか?なんか、シャワーの中で目、開けてない…?
しかし、朝倉があまりにも気持ち良さそうなので、俺もジャージを脱いでシャワーをひねる。
「つめたー!」
真夏とはいえ、夜の水道水はまあまあ冷たかった。でも、汗を流すにはちょうどいい。
「せっかくだからプール入ろうぜ!」
「え…?!」
朝倉はプールに走って行ってしまった。
お前、何する気だ?ま、まさか……!
「やめろ!俺、泳げないんだぞ?!」
「え…?!」
止めたけど、間に合わなかった。水しぶきとともに、どボーンと、大きな音がする。
「ぐはぁ…っ。ご…っ!」
「お、おい~~…!」
人の体で、勝手に溺れるな…っ!
泳げないけど、俺は仕方なくプールに飛び込んだ。
朝倉は泳げるらしい。飛び込んでも全く問題なかった。それにプールは110mくらいの深さだ。足がつくので、普通なら溺れないだろう。
しかし、朝倉は焦って溺れかけている。俺は朝倉のところまで、水を掻き分けて近づいた。
「足つくから落ち着けって!」
「う…っ!ごほ…!」
「朝倉、俺の体で死ぬなよ~~!」
慌てている朝倉の腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。俺の胸にもたれる格好になると安定したのかようやく落ち着いた。
「げ…、げほ…。あ…、ありがとう。びっくりした~。まさかカナヅチなんて…」
「人の話も聞かずに飛びこむからだろ!俺の体、大切にしてくれよ!なんでこんな突拍子もないことするんだよ…!」
「ごめん、つい…」
朝倉は俺にしがみ付いたまま、がくっと項垂れる。
「……今日黒瀬が落ち込んでたからなんとかしないと、って思って…」
「え……?」
それは、俺が先生の楽譜を見たこと…?
「アルトサックスのソロの件なら、朝倉が先生から直接言われてもないことで落ち込むなって、言ってたじゃん」
「……それもそうだし、今日、元に戻れなかっただろ?」
今日は、コンクール前に元の体に戻れる最後のチャンスだと思ったから合宿を抜け出したのだ。だからがっかりしたし、ショックだったことも確かだ。
「黒瀬、俺はもし戻れなくても…、いいかなって思ってて」
「朝倉…?」
SNSではそう言っていたけど、直接言われるのは初めてだ。今、その話をするってことは…。
告白…?
俺の心臓は、ドキンと大きな音を立てた。
朝倉は、顔を上げて正面から俺を見つめる。
「今まで黒瀬とはパートもクラスも違うから、あんまり話もできなかったけど、入れ替わってからは毎日黒瀬と会って、話せるようになって。……すごく、楽しくてさ」
朝倉は俺の顔で柔らかく微笑んだ。
……なんて顔するんだよ、朝倉。
俺の顔でそんなに、『お前が大好き』みたいな顔、しないでほしいんだけど……。
「もしこのまま元に戻らなかったら、同じ大学にいって、もっと、ずっと一緒に……」
それ、俺も同じことを考えてた。
ひょっとして俺たち…、両思いだったり、して…。
「……」
続く言葉は告白かもしれないと思っていた。でも、朝倉はその先を言わなかった。
ただ、少し寂しそうに俺を見つめる。
例え何も言わなくても、朝倉の言いたいことは分かった。
『…でも、黒瀬は迷惑だよな。男の俺にこんなこと言われても…』
抱き寄せた自分の体から切ない気持ちがいやってほど伝わってきて、胸が締め付けられる。
ーー気がついたらどちらからともなく、キスしていた。

