キスして入れ替わったら、美形部長の秘密の本音は俺への「好き」でいっぱいでした

「うわぁ~…」

 俺は思わずその場に崩れ落ちた。

 俺がしゃがみ込むと、朝倉は俺の背中から降りて正面に回り込んだ。

「ごめん黒瀬。たぶん俺が雨雲の動きを見間違えたんだ…!」
「朝倉のせいじゃないよ。俺も何も調べないで、朝倉におんぶにだっこでさ…」
「今日おんぶされたの、俺だから。黒瀬のせいじゃないって…!」
「それも俺が普段体を鍛えていないことが原因だし…」

 最後のチャンスだと思ったから怒られるのを覚悟で合宿を抜け出した。朝倉を背負ってまで走って、雷を追いかけて…。それが失敗したのだ。なかなか顔をあげられずにいると、朝倉は俺を慰めようと少し明るい声を出す。

「黒瀬、本当にお前のせいじゃないよ。だから、魔王に逃げられた勇者みたいな顔するなよ…」
「魔王に逃げられた勇者……?」
「そんなに絶望するなってこと!」

 朝倉はよくわからない、変な例えを出してきた。

 SNSもそうだけど、朝倉の言動って、ちょっとおかしい。たぶんあっちが朝倉の本心だから、もともと知らなかっただけで、実はおもしろいやつなのかも。

「はは……!」

 俺が笑うと、つられて朝倉も笑い出した。

 以前のようにすました顔をしていない、この朝倉が俺は好きだ。

 こんなに笑うのは、俺の体だからなのか…?

 ひとしきり2人で笑った後、立ち上がってもう一度一緒に雨雲レーダーを見る。

「黒瀬これ、どう思う?」
「近くには雨雲なさそうだ。少し離れたところは?」
「あー、かなり広範囲で晴れちゃってる」
「もう16時過ぎたし、遠出も無理そうだなぁ…」

 そろそろ全体練習が終わり、夕食の時間だ。俺たちがいないと分かったら問題になるかも…。だから18時には戻りたい。

「今日は戻ろうか」
「うん」

 俺たちは地図を見ながら、駅に向かって歩き出した。

「黒瀬、ずいぶん走ったな。ここからだと『あずき野学園前駅』の方が近いかも」
「そうなんだ、じゃ『あずき野学園前駅』から乗ろう」

 俺たちが向かった『あずき野学園前駅』は私立の大学が複数ある学生の街だ。

 この近くには、俺が志望している大学もある。楽器ケースを背負って歩いている大学生とすれ違い、俺はそれを目で追った。

「俺さ、すぐそこの大学、目指してるんだ」
「え、ここが、、黒瀬の志望大学……?」
「大学でも吹奏楽続けたくて。ここはコンクールも常連だし、定期演奏会もかっこよかったし…」
「そうなんだ…」
「朝倉は……?」

 夏のコンクールが朝倉との最後の演奏になる。けど朝倉は『俺と同じ大学に行きたい』と言っていた。

 ただ、朝倉の成績はトップクラス。俺と同じ大学となると相当ランクを下げることになる。

 俺は朝倉の進路が気になって尋ねたが、朝倉は目を輝かせて、持っていたスマートフォンでぽちぽちとなにか入力を始めた。

「何してんの?」
「え……?!な、なんでもない…!」

 何でもなくはないだろ。

 すると俺の持っていた本来朝倉のスマートフォンにログイン通知が来た。どうやらSNSを更新していたようだ。

 こんな時に何やってるんだ…?

「じゃ、帰ろうぜ!」
「あ…、ああ…」

 自分の志望校は言わないのかよ…。不満に思いながら電車に乗った。車内で何か話す気になれず、こっそりとさっき更新されたSNSを見てみる。

 するとやはり、最新の投稿があった。

『かなDの志望大学げっと♡雷に打たれて記憶飛んでも分かるようにメモしておく!!』

 朝倉は雷に打たれる気なのか…?! 

 さっき自分の志望大学言わなかったのは、この投稿に夢中だったから?

 なんなんだ。本当に…。

 でも忘れないようにしようってことは、本当に俺と同じ大学に行くつもり…?あんなに成績がいいのに。本当に、本気なのか……?