腐男子な僕はBL展開に胸きゅんが止まらない!

「はぁ……」

 僕は苗字が『森川』だから、出席番号は後ろの方だ。
 名前順に並んだ今の席は、窓際だった。

 窓の外には、彼女と嬉しそうに並んで歩く支倉先輩の姿が見えた。

「僕は……どうしてしまったんだろう。何故、支倉先輩のことを考えると、こんなに胸が痛むのだろうか?」

「…………ちょっと、のじちゃん。勝手にナレーション付けないでよ」

 そう叫ぶと、のじちゃんはニヤリと笑い、

「だって、そう言ってそうな横顔だったんだもの」

 と言って、僕の前の席に座った。

「なに? 彼女いるから諦める?」

 そう言われて、

「はぁ? 諦める諦めない以前に、そういうんじゃないから!」

 と、慌てて反論した。

「まぁ、私は森っちがどういう選択をしても、森っちとは腐仲間(ともだち)だと思ってるから」

 そう言って微笑んだ。

「のじちゃん……」

 僕が感動していると、

「小泉先輩って路線も、ありよりのありだしね」

 と続けられ、僕はコケた。

「感動させといて、それ?」

「他に何かある?」

 顔を突き合わせて話していると、

「み~ずき!」

 聞き覚えのある声と同時に、誰かが僕の背中に飛び乗った。

 夏帆の重みにプルプル震えながら、

「夏帆!! 人の背中に飛び乗るな!!」

 と怒ると、

「え~、良いじゃん。幼馴染みなんだし」

 と、笑っている。

 そして、僕の背中に乗ったまま窓の外を眺め、

「あぁ、支倉先輩見てたの? 瑞稀は相変わらずだよね」

 などと言っている。

「どうでもいいから、背中から降りろ!! 重いよ!!」

 と叫ぶと、夏帆は背中から降り、ムッとした顔で僕を睨んだ。

「女子に重いは禁句です!!」

 そう言って、僕をヘッドロックした。

「痛い! 痛い! 夏帆、止めろよ!」

 僕と夏帆がギャーギャー騒いでいると、のじちゃんが席を立った。

「のじちゃん?」

「私、自分の席に戻るわね」

 そう言うと、のじちゃんは僕たちから離れていった。

 ……のじちゃんは、いつもそうだ。

 僕が男子の友達や他の女子と仲良くしていると、決して近付いてこない。
 一緒にいる時に誰かが来ると、こうやって離れていくんだよなぁ~。

「野尻さんって、瑞稀のことが好きなのかな?」

 ポツリと言われて、

「え? それは絶対にない!」

 と反論すると、

「なんで言いきれるの?」

 と返されてしまった。

 ……だって、僕は知っている。

「はぁ? 三次元の男だぁ? 興味ないわね! 大体、三次元の同年代男子なんて、臭い、うるさい、乱暴の三拍子じゃない!」

 以前、のじちゃんはそう言っていた。

「え? その中に僕は……?」

「森っち? 森っちは、こっち側の人間だから友達ならありよりのありだけど、好きとか……ふっ」

(あの笑顔見たら、絶対に僕のことが好きとか勘違いできないよ)

 そんなことを考えていると、

「分からないじゃない!」

 と、夏帆がギャーギャー言っている。

 僕は目を据えて、

「ありえない! のじちゃんには、好きな人がいるんだから……」

 と答えると、夏帆が目を丸くした。

「え? 野尻さんって、好きな人いるの?」

「そうだよ。年上のイケメン」

「うっそ!! 二次元にしか興味ないと思ってた!!」

 驚く夏帆に、

「おいおい。だったらなおさら、僕とかありえないだろうが」

 と呆れて返すと、

「何言ってるの? 瑞稀はね、この世の神が遣わした二次元寄りの三次元なのよ」

 と、夏帆が言った。

「はぁ?」

「サラサラの髪の毛に、クリクリの目。小さな顔に、すっとした鼻。この世に天使がいるとしたら、瑞稀じゃないかしら? って私は思ってる!」

「……はいはい」

「はいはいじゃないのよ! はいはいじゃ!」

 夏帆は僕の肩を掴み、ガクガクと身体を揺らした。