腐男子な僕はBL展開に胸きゅんが止まらない!

「やだー!! 森川君までいるじゃない!!」

 そう叫ぶと、僕とのじちゃんに、

「大丈夫よ。あなた達みたいな良い子には、なんにもしないから」

 そう言ってはくれたけど……。

 僕とのじちゃんは、変わらず教室の隅っこでガクブルしていた。

 すると、都築先輩は何か言いたげに口を開きかけると、クルリと小泉先輩と支倉先輩に向きを変えた。

 そして、いきなり小泉先輩の胸ぐらを掴み、

「それもこれも、あんたがいつも生徒会の仕事をサボるせいよ、小泉!!」

 と、矛先を小泉先輩に向けてしまった。

「なんで俺のせいなんだよ!」

 めんどくさそうに呟いた小泉先輩に、

「あんたがちゃんとしていたら、可愛い森川君に怯えられずに済んだのに!」

 と叫んだのだ。

(ん? ここでなんで僕の名前?)

 疑問に首を傾げて、

「え? 僕?」

 と思わず呟いた。

「森っち、罪な男」

 小泉先輩と都築先輩の一連の流れを唖然と見ていた僕の耳に、のじちゃんの呟きが聞こえた。

 のじちゃんは眼鏡を人差し指で上げながら、

「老若男女を魅惑する男……森川瑞稀……ふふっ」

 と笑っていた。

「のじちゃん……なに言ってるの?」

 呆れてのじちゃんを見ていると、

「やっぱり、森川君はその子と付き合ってるの?」

 と言われて、支倉先輩が、

「都築もそう思うよな? 違うんだって。友達らしいよ」

 そう続けた。

「そうですよ。私と森っちは、腐った仲間(どうし)なんです」

 のじちゃんが眼鏡を光らせて答えた。

(のじちゃん、僕にだけしか分からなかったから良いけど、どさくさに紛れて変な漢字で『どうし』って読まないでよね!)

 僕は心の中で呟きながら、支倉先輩と並ぶ都築先輩を眺めていた。

(この二人、何気に仲が良いんだよな~。……まさか、支倉先輩の彼女って)

 そう思った時だった。

「あ、大和。こんな所にいた!」

 漆黒の長い髪を二つに分け、三つ編みにした色白の美少女が現れた。

「百合~」

 その瞬間、穏やかだった支倉先輩の表情が、頬を染めてパッと華やいだ。

(あれ? 先輩、嬉しそう……)

 胸の奥がモヤッとして、思わずそこを押さえた。

「今日、担任に呼び出されて遅くなったから、一緒に帰ろうと思って」

「え! でも俺、まだ少し生徒会の仕事あるよ」

「瑞月もいるし、手伝うよ」

「マジ!」

 嬉しそうに笑う支倉先輩を、複雑な気持ちで見ていた。

 しばらく二人を眺めていると、

「あ! この子ね! 瑞月と同じ名前の可愛い子って!」

 先輩の彼女が僕の視線を感じたのか、僕を見て叫んだ。

「シーッ! 本人の目の前で、余計なことを言わないで!」

「え? 都築先輩も、みずきって名前なんですか?」

「うん……。だからさ、勝手に親近感持っちゃってて。ごめんね」

 恥ずかしそうに笑う都築先輩の声も、もう耳には入らなかった。

 支倉先輩に彼女がいた――その事実だけが、胸に重くのしかかっていた。