腐男子な僕はBL展開に胸きゅんが止まらない!

「で、鈴木航大の黒歴史って何?」

そう聞かれたのは、委員会終わりのある日だった。

「あぁ……」
「話してくれるわよね!」

のじちゃんに鼻息荒く迫られ、
「たいした話じゃないよ」
と前置きしてから、
「航大の初恋の人って、僕なんだ」
そう答えると、のじちゃんの眼鏡が眩しく光った。

「それだけじゃ分からないわよ! もっと詳しく!」

のじちゃんの勢いに圧倒されながら、
「そんなたいした話じゃないって! 幼稚園の時に、『大きくなったら、お嫁さんになって下さい』って言われて、キスされたんだよ」
と答えた。

すると、のじちゃんに両肩を掴まれ、
「キス! どこに?」
と、顔を近付けられた。

「のじちゃん、顔近い! 唇だよ。僕と航大、お互い親や親戚以外では初めてのキスだったんだよ!」
「な、な、な、なんですって!!」
「まぁさ、子供の頃の話だしね」

そう笑って話す僕に、
「そうなると……作者の公式カプは、航大×瑞稀? でも、森っちの好きな人は支倉先輩よね? え? ダークホースで小泉先輩とか?」

突然、のじちゃんがブツブツと独り言を言い始めた。

「のじちゃん?」

恐る恐る声を掛けると、のじちゃんは突然、僕を真剣な顔で見つめ、
「森っち、あんたが友達で……本当に良かったわ!」
と、僕の手を握りしめた。

「はぁ……?」

僕が首を傾げた瞬間、のじちゃんの後ろから影が現れた。

なんだろう? と見上げると、航大が額に青筋を浮かべていた。

「瑞稀? なに、人の黒歴史を話してるんだよ! しかも、よりによって野尻に!」
「え? ダメだった?」
「ダメに決まってるだろうが!」
「なんで?」
「なんでって……」

僕の問いに、答えていいのか迷っているような顔をする航大。

その時、
「やっぱり王道は喧嘩っプルよね。幼馴染みの二人。将来を誓い合うも、歳を重ねて結ばれないと知る……王道中の王道だけど、王道になるってことは……みんな好きっ!!」
と、のじちゃんがまたブツブツ独り言を始めた。

航大は頭を抱え、
「ほら、こうなるだろう?」
と呟いた。

「え? のじちゃんが今描いてる、僕が主役のBL、相手は航大になっちゃうの?」
「森っち……そこは伏せさせて頂くわ。ラストは作者である私のみぞ知る……よ」

ふふふふふ、と笑いながら、のじちゃんが眼鏡を光らせている。

「野尻……俺を巻き込むのは――」
「やめないわよ! 森川瑞稀の幼馴染みとして生まれ、あまつさえプロポーズしてファースト・キスを奪ったなんて、こんな美味しいシチュエーションを、私が捨てるわけないじゃない!」
「野尻……お前、気持ち良いくらい己の欲望に忠実だな」
「褒めてくれてありがとう」
「褒めてねぇよ!」

言い合う二人を見て、今度は僕の方がニヤニヤしちゃったよ。

だって、航大とのじちゃん。

二人こそまさに、少女漫画のド定番。