「そ……それは?」
ごくりと生唾を飲み込んだ私に、
「あの日、そう……運命の入学式の日。私は支倉にお姫様抱っこされて保健室に運ばれた森川瑞稀を見た時、ピンッと来たのだよ! 森川瑞稀は、世の攻めたちの為に遣わされた姫なのだと!」
と、及川部長は語った。
「……はぁ?」
「しかもだ! あのノンケの支倉が『保健の先生に頼まれて、倒れた子の学ランを脱がせたんだけどさ……妙に色っぽくてビビったよ』とまで言ったのだよ!」
及川部長の熱弁に、他の部員が、
「おぉー!!」
と拍手喝采。
「……それでだ。森川瑞稀のお陰で、その瞬間、雷に打たれたように新作の構想が降りてきたのだよ。タイトルは『学園の姫~それ以上はダメ~』だ!」
明らかにヤバい漫画のタイトルを叫ばれ、私は思った。
この人たちから、森っちを守らなければ!
それから私は、他の人がいる場所では森っちを『森川君』と呼び、あえて距離を置くようになった。
だって……森っちは、ちょっと小悪魔チックな容姿と違って、中身が本当に良い奴なのよ!
しかも、無自覚人たらしの上に無防備すぎるのよ、あの子は!!
漫研部に、森っちが好きな『もっちり食パン』先生がいるなんて知ったものなら、
「僕、漫研部に入ります!」
とか言い出しかねないわ。
そうなったら最後。
憐れ、子うさぎ森っち。
何をさせられるか、わかったもんじゃない。
確かに、私も描いてるわよ。
森っちと生徒会の人たちのBL。
でも、私のは可愛い胸きゅんBLよ!
今の森っちのリアルを描いているけど……偶然、鈴木夏帆さんにバレちゃったのよね。
あれから、鈴木夏帆さんに目の敵にされている。
……まぁ、そうよね。
好きな人でBLを描かれたら、腹が立つわよね。
しかも問題なのは、私が森っちでBLを描いている……というのを、森っちが鈴木夏帆さんから聞いたらしく、
「のじちゃん、読ませて」
と言い出したことだ。
鈴木夏帆さん……あんたは幼馴染みなのに、森っちを分かってなさすぎる。
私から引き離す為に言ったのだろうが、逆効果よ!!
とにかく、私は森っちが漫研に興味を持たないように仕向けた。
……そう、仕向けたのに!!
どうやら、森っちにはBLの神様がついているらしい。
そう、運命のあの日。
私がいつものようにBLを描いていると、漫研部の部室のドアが荒々しく開いた。
「のじちゃん!」
現れたのは、飛んで火に入る夏の虫……ならぬ、走って漫研部に飛び込む子うさぎ森っち。
案の定、及川部長が『もっちり食パン』先生だと知り、漫研部に入部してしまったのだ。
私が心配だったのは、漫研部の餌食になることはもちろんだが、男子と仲良く出来るのかということだった。
……しかし、森っちの人たらしぶりは無敵だった。
「あ、おたく君たち、おはよう!」
朝、漫研部の織田、田代、久保田の三人に声を掛けているではないか!!
しかも、仲良し三人組の苗字を取って『おたく』と悪気なく呼ぶんだから、やっぱり森っちだ。
しかし、最初は嫌がっていた奴等も、いつの間にか、
「もりもり、おはよう」
と返しているのを見て、衝撃を受けた。
しかも今朝は遂に、
「モス、おはよう」
と返していて、(モス?)と首を傾げていると、隣の鈴木航大が笑顔で、
「オタクくんたち、今日も仲良しだね」
そう答えているではないか!!
私はハッと気付いた。
森川と鈴木で、モスなの? ……え? そういうこと?
動揺する私に気付かず、美少年と爽やかイケメンに並ぶオタク三人組。
※もちろん、反対側に複雑な顔をした夏帆がいます。(作者談)
……なんともシュールな光景を、私は眺めていた。
後々知ったのだが、森っちが三人それぞれの得意分野を見抜き、それを活かして作ったアニメ動画がバズったらしい。
森っちの人たらしの根源は、人の良いところを見抜いて、それを素直に褒めるところなんだろう。
私はまた一つ、新たな森っちの魅力を知った。
……とはいえ、森っち!!
お前、いくら大好きな『もっちり食パン』先生のお願いだからって、なんでも引き受けるな!!
「え? 目を閉じて顔を少し上げれば良いんですか?」
「そう! 角度はそのまま!」
今、目の前で、まるでキス待ちしているような森っちを一心不乱にスケッチしている及川部長を横目で見ながら、私、野尻華子はため息をついた。
過激にならないよう、私が子うさぎ森っちを守らないと!
そう誓いを新たに、ペンを握り締めた。
「森川君、学ラン脱げる?」
「はい!」
「森っち、それ以上はダメ~~!!」
漫研部に、私の声が響いたのは、言うまでもない。
ごくりと生唾を飲み込んだ私に、
「あの日、そう……運命の入学式の日。私は支倉にお姫様抱っこされて保健室に運ばれた森川瑞稀を見た時、ピンッと来たのだよ! 森川瑞稀は、世の攻めたちの為に遣わされた姫なのだと!」
と、及川部長は語った。
「……はぁ?」
「しかもだ! あのノンケの支倉が『保健の先生に頼まれて、倒れた子の学ランを脱がせたんだけどさ……妙に色っぽくてビビったよ』とまで言ったのだよ!」
及川部長の熱弁に、他の部員が、
「おぉー!!」
と拍手喝采。
「……それでだ。森川瑞稀のお陰で、その瞬間、雷に打たれたように新作の構想が降りてきたのだよ。タイトルは『学園の姫~それ以上はダメ~』だ!」
明らかにヤバい漫画のタイトルを叫ばれ、私は思った。
この人たちから、森っちを守らなければ!
それから私は、他の人がいる場所では森っちを『森川君』と呼び、あえて距離を置くようになった。
だって……森っちは、ちょっと小悪魔チックな容姿と違って、中身が本当に良い奴なのよ!
しかも、無自覚人たらしの上に無防備すぎるのよ、あの子は!!
漫研部に、森っちが好きな『もっちり食パン』先生がいるなんて知ったものなら、
「僕、漫研部に入ります!」
とか言い出しかねないわ。
そうなったら最後。
憐れ、子うさぎ森っち。
何をさせられるか、わかったもんじゃない。
確かに、私も描いてるわよ。
森っちと生徒会の人たちのBL。
でも、私のは可愛い胸きゅんBLよ!
今の森っちのリアルを描いているけど……偶然、鈴木夏帆さんにバレちゃったのよね。
あれから、鈴木夏帆さんに目の敵にされている。
……まぁ、そうよね。
好きな人でBLを描かれたら、腹が立つわよね。
しかも問題なのは、私が森っちでBLを描いている……というのを、森っちが鈴木夏帆さんから聞いたらしく、
「のじちゃん、読ませて」
と言い出したことだ。
鈴木夏帆さん……あんたは幼馴染みなのに、森っちを分かってなさすぎる。
私から引き離す為に言ったのだろうが、逆効果よ!!
とにかく、私は森っちが漫研に興味を持たないように仕向けた。
……そう、仕向けたのに!!
どうやら、森っちにはBLの神様がついているらしい。
そう、運命のあの日。
私がいつものようにBLを描いていると、漫研部の部室のドアが荒々しく開いた。
「のじちゃん!」
現れたのは、飛んで火に入る夏の虫……ならぬ、走って漫研部に飛び込む子うさぎ森っち。
案の定、及川部長が『もっちり食パン』先生だと知り、漫研部に入部してしまったのだ。
私が心配だったのは、漫研部の餌食になることはもちろんだが、男子と仲良く出来るのかということだった。
……しかし、森っちの人たらしぶりは無敵だった。
「あ、おたく君たち、おはよう!」
朝、漫研部の織田、田代、久保田の三人に声を掛けているではないか!!
しかも、仲良し三人組の苗字を取って『おたく』と悪気なく呼ぶんだから、やっぱり森っちだ。
しかし、最初は嫌がっていた奴等も、いつの間にか、
「もりもり、おはよう」
と返しているのを見て、衝撃を受けた。
しかも今朝は遂に、
「モス、おはよう」
と返していて、(モス?)と首を傾げていると、隣の鈴木航大が笑顔で、
「オタクくんたち、今日も仲良しだね」
そう答えているではないか!!
私はハッと気付いた。
森川と鈴木で、モスなの? ……え? そういうこと?
動揺する私に気付かず、美少年と爽やかイケメンに並ぶオタク三人組。
※もちろん、反対側に複雑な顔をした夏帆がいます。(作者談)
……なんともシュールな光景を、私は眺めていた。
後々知ったのだが、森っちが三人それぞれの得意分野を見抜き、それを活かして作ったアニメ動画がバズったらしい。
森っちの人たらしの根源は、人の良いところを見抜いて、それを素直に褒めるところなんだろう。
私はまた一つ、新たな森っちの魅力を知った。
……とはいえ、森っち!!
お前、いくら大好きな『もっちり食パン』先生のお願いだからって、なんでも引き受けるな!!
「え? 目を閉じて顔を少し上げれば良いんですか?」
「そう! 角度はそのまま!」
今、目の前で、まるでキス待ちしているような森っちを一心不乱にスケッチしている及川部長を横目で見ながら、私、野尻華子はため息をついた。
過激にならないよう、私が子うさぎ森っちを守らないと!
そう誓いを新たに、ペンを握り締めた。
「森川君、学ラン脱げる?」
「はい!」
「森っち、それ以上はダメ~~!!」
漫研部に、私の声が響いたのは、言うまでもない。

