腐男子な僕はBL展開に胸きゅんが止まらない!

とんだ人たらし&女たらしの鈴木航大と別れ、私は部室へと足を踏み入れた。
その瞬間、
「待っていたぞ、野尻!!」
もっちり食パン先生こと、及川部長が目を輝かせて立ち上がった。
この人が目を輝かせると、ろくなことがない。
私が部室から出ようとすると、
「まぁまぁ、待ちたまえ。ところで野尻、きみは《《あの》》森川瑞稀と同じ委員会だそうじゃないか」
と、手を顎の下で組み、ニッコリと微笑んだ。
「同じ委員会って……学級委員ですよ?」
「そうだな。しかし、委員会は委員会だ。しかも学級委員などという、面倒な事を一緒にやっている仲となれば、それはそれは仲良しなんだろうとも……」
及川部長の言葉に、嫌な予感がした。
確かに、私もアニメのキャラでどちゃくそヤバいBLを書いたりはしている。
森っちでも、BLを想像はしている。
しかし、二次元と三次元は分けて考えているのだ。
私の中で、BLはファンタジー!
しかし、もっちり食パン先生こと及川部長は違う。
あの目の輝きは、サバンナで獲物を見つけた肉食獣のようだ。
私はか弱きうさぎちゃんの森っちを守る為に、
「委員会は一緒ですが、特に仲良くもありません」
と、嘘をついた。
すると、
「あれあれ? 拙者は森川氏と野尻氏が仲良さげにしていたのを見ましたぞ!」
なんて言われてしまった。
「そりゃあ、クラスメイトですから。多少は雑談しますよ。それを言うなら、今、鈴木航大とも二人で会話して来ましたよ」
私の言葉に、及川部長の目が光った。
「鈴木航大、あの爽やかサッカー少年か! いかにも少女漫画のヒロインが惚れそうな、爽やかイケメンだったな……」
「拙者ら陰キャには、あのキラキラした顔に目がつぶれそうでござるよ!」
及川部長の言葉に、漫研男子の嫉妬混じりの声が飛び交う。
その時だった。
「野尻、まずは森川瑞稀を漫研に連れて来い」
及川部長がそう言ったのだ。
「はぁ? 森川瑞稀を漫研部に連れて来い?」
思わず叫んだ私に、及川部長は続けて、
「実はね、私は新作を描くにあたり、壁にぶち当たっていたのだよ。どこかに、私の創作意欲をかき立てる人物がいないかと……」
と、芝居がかった口調で語り始めた。
(部長……これが始まると長いんだよなぁ~)
私は部室にある自席に着き、パソコンの電源を入れた。
「そんな時、出会ったのだよ! 受けの中の受け! そう、Prince of 受様!」
何故かPrince ofだけ妙に発音が良い。
「それが、森川瑞稀なわけだ!」
部長の熱弁に、他の部員が拍手している。
私は相手にしていられず、描きかけの漫画を描こうと液タブに手を伸ばした、その時だった。
「しかもだよ……野尻。私は聞いてしまったんだ」
及川部長は私の肩に手を置き、囁くように呟いた。