「森川!」
足早に下駄箱に向かう僕を、何故か支倉先輩が追いかけて来た。
僕の腕を掴む支倉先輩に、泣きそうになった。
「森川、俺、何かしたのか?」
悲しそうに言われて、僕は言葉を失った。
追いかけてもらえて嬉しいのに、優しくされると……切なくなる。
「え? なんでですか?」
必死に笑顔を作って答える僕に、
「なんでって……」
戸惑う支倉先輩。
沈黙が流れる中、
「お~い、支倉。俺をお前の彼女と二人にするなよな!」
そう言って、小泉先輩が現れた。
「森川には俺から話を聞いておくから、お前は浜辺と教室に行けよ」
と支倉先輩に話す小泉先輩が、初めてまともな人に見えた。
「……わかった。俺が何かしてたら、ごめんな」
そう言われて、頭をポンッと撫でられた瞬間、涙が込み上げて来た。
「と、言うことで! 行くぜ、森川!」
「え? 行くって……何処に?」
僕の腕を掴み、小泉先輩が走り出した。
「え? 瑞稀、何処行くの?」
慌てる夏帆の声に振り向き、航大を見上げて、
「わかんな~い!」
と答えた。
唖然とする夏帆と航大、そして二人から少し離れた場所で眼鏡を光らせているのじちゃんを尻目に、僕は小泉先輩に引っ張られて校内に入って行った。
「下駄箱で靴履いたら来るから、待ってろよ!」
もの凄い勢いで走り去る小泉先輩を見送り、僕はのろのろと上履きに履き替えた。
「お待たせ~!」
凄い勢いで小泉先輩が再び現れ、僕の腕を掴んで走り出した。
「朝礼が始まるまで、あと15分。急げ~」
さすが運動部。
僕の腕を引っ張ったまま、非常階段に飛び出した。
「あ……あの?」
戸惑う僕をよそに、小泉先輩は非常階段の左右と上を確認すると、
「よ~し、誰もいない。さぁ、この胸で泣きたまえ」
と、両手を広げた。
「はぁ⤴︎︎︎?」
「はぁ⤴︎︎︎? じゃないだろう? 今は誰もいない。この俺が、胸を貸してやるって言ってるんだよ」
「……はぁ⤵︎︎︎?」
「なんだよ、お前。失恋した後輩を、優しいこの俺様が慰めてやるって言ってるのに」
そう言われて、思わず目をひん剥いた。
「ええええ!!」
「え? 違うのか? 俺、そういう勘は外さないんだけどなぁ?」
首を傾げる小泉先輩に、
「ちょっと待って下さい。憧れては、います。でも、失恋?」
僕も、小泉先輩と逆側に首を傾げた。
そう。今、僕たちは向き合って、首を傾げて顔を見合わせているのだ。
なんとシュールな光景。
しばらく見つめ合うと、二人で吹き出した。
「何だよ! 違うのかよ」
「さぁ? よく分からないです。……でも、心配してくれて、ありがとうございます」
そう言ってお辞儀すると、小泉先輩が僕の頭をくしゃりと撫でた。
「なんかあったら、相談に乗るからさ。遠慮なく言えよ」
そう言われて、
「どうして……優しくしてくれるんですか?」
と聞くと、小泉先輩は真顔になって、
「聞きたいか? 聞いて……後悔しないか?」
そう聞いて来た。
いつになく真顔で僕を見つめる小泉先輩に、思わず胸がドキドキと高鳴った。
「森川……それはな」
「はい」
見つめ合う僕と小泉先輩。
風がふわりと通り抜け、まるでBL漫画の告白シーンみたいだとドキドキしていると、
「お前が俺より小さいからだ!」
小泉先輩はそう言って、満面の笑みを浮かべた。
「ですよね~」
思わず僕も頷くと、
「え~!!」
と、のじちゃんがドアから倒れ込んで来た。
壁に耳あり障子に目あり。
……非常口のドアにのじちゃんあり。
そう思った朝だった。
足早に下駄箱に向かう僕を、何故か支倉先輩が追いかけて来た。
僕の腕を掴む支倉先輩に、泣きそうになった。
「森川、俺、何かしたのか?」
悲しそうに言われて、僕は言葉を失った。
追いかけてもらえて嬉しいのに、優しくされると……切なくなる。
「え? なんでですか?」
必死に笑顔を作って答える僕に、
「なんでって……」
戸惑う支倉先輩。
沈黙が流れる中、
「お~い、支倉。俺をお前の彼女と二人にするなよな!」
そう言って、小泉先輩が現れた。
「森川には俺から話を聞いておくから、お前は浜辺と教室に行けよ」
と支倉先輩に話す小泉先輩が、初めてまともな人に見えた。
「……わかった。俺が何かしてたら、ごめんな」
そう言われて、頭をポンッと撫でられた瞬間、涙が込み上げて来た。
「と、言うことで! 行くぜ、森川!」
「え? 行くって……何処に?」
僕の腕を掴み、小泉先輩が走り出した。
「え? 瑞稀、何処行くの?」
慌てる夏帆の声に振り向き、航大を見上げて、
「わかんな~い!」
と答えた。
唖然とする夏帆と航大、そして二人から少し離れた場所で眼鏡を光らせているのじちゃんを尻目に、僕は小泉先輩に引っ張られて校内に入って行った。
「下駄箱で靴履いたら来るから、待ってろよ!」
もの凄い勢いで走り去る小泉先輩を見送り、僕はのろのろと上履きに履き替えた。
「お待たせ~!」
凄い勢いで小泉先輩が再び現れ、僕の腕を掴んで走り出した。
「朝礼が始まるまで、あと15分。急げ~」
さすが運動部。
僕の腕を引っ張ったまま、非常階段に飛び出した。
「あ……あの?」
戸惑う僕をよそに、小泉先輩は非常階段の左右と上を確認すると、
「よ~し、誰もいない。さぁ、この胸で泣きたまえ」
と、両手を広げた。
「はぁ⤴︎︎︎?」
「はぁ⤴︎︎︎? じゃないだろう? 今は誰もいない。この俺が、胸を貸してやるって言ってるんだよ」
「……はぁ⤵︎︎︎?」
「なんだよ、お前。失恋した後輩を、優しいこの俺様が慰めてやるって言ってるのに」
そう言われて、思わず目をひん剥いた。
「ええええ!!」
「え? 違うのか? 俺、そういう勘は外さないんだけどなぁ?」
首を傾げる小泉先輩に、
「ちょっと待って下さい。憧れては、います。でも、失恋?」
僕も、小泉先輩と逆側に首を傾げた。
そう。今、僕たちは向き合って、首を傾げて顔を見合わせているのだ。
なんとシュールな光景。
しばらく見つめ合うと、二人で吹き出した。
「何だよ! 違うのかよ」
「さぁ? よく分からないです。……でも、心配してくれて、ありがとうございます」
そう言ってお辞儀すると、小泉先輩が僕の頭をくしゃりと撫でた。
「なんかあったら、相談に乗るからさ。遠慮なく言えよ」
そう言われて、
「どうして……優しくしてくれるんですか?」
と聞くと、小泉先輩は真顔になって、
「聞きたいか? 聞いて……後悔しないか?」
そう聞いて来た。
いつになく真顔で僕を見つめる小泉先輩に、思わず胸がドキドキと高鳴った。
「森川……それはな」
「はい」
見つめ合う僕と小泉先輩。
風がふわりと通り抜け、まるでBL漫画の告白シーンみたいだとドキドキしていると、
「お前が俺より小さいからだ!」
小泉先輩はそう言って、満面の笑みを浮かべた。
「ですよね~」
思わず僕も頷くと、
「え~!!」
と、のじちゃんがドアから倒れ込んで来た。
壁に耳あり障子に目あり。
……非常口のドアにのじちゃんあり。
そう思った朝だった。

