小春と狼弦《ろうげん》は翡翠《ひすい》によって準備されていた車に乗り、新居に向かった。
どっしりとした外観の国産セダン。暗いシルバーの外装はよりその車の印象を重くさせた。
二人が座る後部座席のガラスは黒いフィルムで外からは中が見えないようにされていた。
座席は革製でシートに座ると、しっとりと体にフィットする感じがする。シートベルトは強すぎず、弱すぎず体を固定する。
運転手の後ろに小春、助手席の後ろに狼弦。
アサヒビルディングから車は滑らかに走り出す。
都会の喧騒《けんそう》も車の窓から見るとまるでテレビの世界を見ているように感じる。
さっきのルームシェアの話もテレビの世界の話なら良いのに・・・
でも隣には狼弦が座っている。相変わらず無表情だ。
これからルームメイト。 とりあえず何か話をして最低限の会話ができるようにしないと。
「あの、狼弦さんは翡翠さんと同じ苗字だけど・・・」
小春は狼弦の様子を窺うように話しかける。
「翡翠さんは、自分の父親の妹です。なので叔母と甥の関係になります」
小春の聞こうとしていたことに簡潔に答える狼弦。
「どうりでこう、凛とした雰囲気が似ているんですね」
「・・・」
狼弦は無言だった。
会話が止まり静かな空気が車内に流れる。
車はきっと電気自動車なのだろう。エンジンの音すらせず、沈黙の時間だけが新居まで続いた。
そのころ、小春と狼弦をアサヒビルディングの35階で見送ったトキと翡翠。
トキは翡翠の入れた緑茶を飲みながら一息ついている。
「翡翠の入れるお茶が一番だね」
トキは帝都の景色を見ながら、ゆっくりとお茶を飲む。
「トキ様、あの指輪、契約の指輪でもありますけど婚約指輪ですよね。良いんですか?二人に言わなくて」
翡翠が口を開いた。
「今、あの若い二人に言ったところで変に反発して、変に意識して意味わからんことになるのが関の山だよ」
「パパラチアの石言葉に『一途な愛』『運命的な恋』もありますよね。あえて言わなかったですよね。トキ様、もしかして視えてました?」
「さあね。言い伝え通りならあの二人は大丈夫さ」
「あの言い伝えのことですね」
「そうだよ」
小春と狼弦は契約として指輪を受け取ったが、婚約の意味もあったようだ。
知っているのはトキと翡翠だけのようだ。
さらに、トキと翡翠の間でしか分からない話
まで出てきたが、トキはそれ以上は言わなかった。
しばらく静かな空気が部屋に流れた。
翡翠はもう一つ気になっていることを口にした。
「トキ様、小春様はもう少しあか抜けないものでしょうか?何と言うかこう・・・芋っぽい」
「はははっ、芋ね、芋。確かにあの子は芋だね。まあ辺な虫が寄ってこないから狼弦の仕事が減って良いじゃないか」
「まあ、はい、そうですね」
主人と秘書の関係ではあるが、昔からの顔なじみのトキと翡翠。
翡翠はトキと契約して約7年。未だにトキの食えない物言いに翻弄されている。
どっしりとした外観の国産セダン。暗いシルバーの外装はよりその車の印象を重くさせた。
二人が座る後部座席のガラスは黒いフィルムで外からは中が見えないようにされていた。
座席は革製でシートに座ると、しっとりと体にフィットする感じがする。シートベルトは強すぎず、弱すぎず体を固定する。
運転手の後ろに小春、助手席の後ろに狼弦。
アサヒビルディングから車は滑らかに走り出す。
都会の喧騒《けんそう》も車の窓から見るとまるでテレビの世界を見ているように感じる。
さっきのルームシェアの話もテレビの世界の話なら良いのに・・・
でも隣には狼弦が座っている。相変わらず無表情だ。
これからルームメイト。 とりあえず何か話をして最低限の会話ができるようにしないと。
「あの、狼弦さんは翡翠さんと同じ苗字だけど・・・」
小春は狼弦の様子を窺うように話しかける。
「翡翠さんは、自分の父親の妹です。なので叔母と甥の関係になります」
小春の聞こうとしていたことに簡潔に答える狼弦。
「どうりでこう、凛とした雰囲気が似ているんですね」
「・・・」
狼弦は無言だった。
会話が止まり静かな空気が車内に流れる。
車はきっと電気自動車なのだろう。エンジンの音すらせず、沈黙の時間だけが新居まで続いた。
そのころ、小春と狼弦をアサヒビルディングの35階で見送ったトキと翡翠。
トキは翡翠の入れた緑茶を飲みながら一息ついている。
「翡翠の入れるお茶が一番だね」
トキは帝都の景色を見ながら、ゆっくりとお茶を飲む。
「トキ様、あの指輪、契約の指輪でもありますけど婚約指輪ですよね。良いんですか?二人に言わなくて」
翡翠が口を開いた。
「今、あの若い二人に言ったところで変に反発して、変に意識して意味わからんことになるのが関の山だよ」
「パパラチアの石言葉に『一途な愛』『運命的な恋』もありますよね。あえて言わなかったですよね。トキ様、もしかして視えてました?」
「さあね。言い伝え通りならあの二人は大丈夫さ」
「あの言い伝えのことですね」
「そうだよ」
小春と狼弦は契約として指輪を受け取ったが、婚約の意味もあったようだ。
知っているのはトキと翡翠だけのようだ。
さらに、トキと翡翠の間でしか分からない話
まで出てきたが、トキはそれ以上は言わなかった。
しばらく静かな空気が部屋に流れた。
翡翠はもう一つ気になっていることを口にした。
「トキ様、小春様はもう少しあか抜けないものでしょうか?何と言うかこう・・・芋っぽい」
「はははっ、芋ね、芋。確かにあの子は芋だね。まあ辺な虫が寄ってこないから狼弦の仕事が減って良いじゃないか」
「まあ、はい、そうですね」
主人と秘書の関係ではあるが、昔からの顔なじみのトキと翡翠。
翡翠はトキと契約して約7年。未だにトキの食えない物言いに翻弄されている。
