夢見る乙女は狼の守護のもとに 〜守られて愛されて一国を支える姫になる物語〜

 小春はトキの話を聞いて同居生活に反論できなかった。

 自分がここで強く拒否することはできるかもしれないが、もし何かあった場合の責任が取れない。

 帝都は人が多い。その分、善良な人の中に悪意を持った人が必ずいる。

 それを全て見極めるだけの力はない。

 それなら狼弦(ろうげん)と一緒にルームシェアしたほうがマシだ。

「納得はしてないけど…分かった」

 小春は今できる精一杯の抵抗をしてルームシェアを了承した。

「そうか、そうか。
じゃあ、おばあちゃんから少し早いけど入学祝いだよ。翡翠(ひすい)、よろしく」

 翡翠が部屋の棚から長方形の桐の箱を持ってきた。そして、トキへ渡す。

「狼弦、あんたも小春の隣に」

「はい」

 狼弦は軽くお辞儀をして小春の隣に座った。

 1人掛けのソファなのでそれなりに距離がある。それでも今の小春にとっては近く感じる。

「小春、これを開けてごらん」

 桐の箱を渡された。

 小春は箱を受け取り、トキを見る。トキは静かに頷く。

 恐る恐る桐の箱を開ける。

 箱の中にはプラチナの指輪が2つ。真ん中にはピンクっぽいオレンジの石が着いていた。

「指輪だ……」

「契約の指輪だよ。守る側と守られる側を繋ぐもの。私もほら、翡翠と同じモノを着けてる」

 トキと翡翠の手を見る。二人ともゴールドの指輪を中指に着けていた。宝石は着いていない。

「宝石は内側に着けてるんだよ、ほら、レッドエメラルド」

 トキは自分の指輪を外して小春に見せる。赤い石がついてる。

「エメラルドは緑じゃない?」

「赤いのもあるよ。小春と狼弦のはパパラチア。石言葉は信頼。これから関係を築くには良い石だね」

 トキはニコニコしながら話す。

「とりあえず、二人とも着けてみな」

 小春は小さいほうの指輪を取り、もう一つの指輪が入った桐の箱を狼弦へ渡す。

 狼弦は無表情に桐の箱を受け取り、右手で指輪を取り出す。箱は左手でゆっくりテーブルへ置く。

 キレイな所作…

 見とれる小春。狼弦は左手の中指に指輪を着けた。ピッタリだった。

「小春、あんたもほら」

 トキに言われて小春は慌てて左手の中指に指輪を着けた。

「ピッタリだ…」

 左手の中指にちょうどピッタリのサイズだった。いつの間にサイズを確認されていたのだろうか?

 たぶんトキが誰かに指示を出していたのだろう。

「契約成立だね。死がふたりを分かつまでつながり続ける」

「死がふたりを分かつまで?」

「そうだよ、二人の指輪に着いている石、パパラチアはもともと1つの石だった。それを二つに分けて指輪として作ったから、二人を永遠につなげる石なんだよ」

 なんかもう壮大な話過ぎて良く分からない。

 小春は「へえ」とうなずいて聞くのが精いっぱいだった。