夢見る乙女は狼の守護のもとに 〜守られて愛されて一国を支える姫になる物語〜


「小春、うるさいよ・・・」

 トキは諭すように小春に言った。

「あ、ごめんなさい。
 というか、おばあちゃん、私、年頃の女の子だよ?」

「知ってる。まあ、小春と狼弦(ろうげん)はどうこうならないから大丈夫」

「何を根拠に・・・」

 帝都に来ていきなり見ず知らずの青年とルームシェアとか、もうおばあちゃんの思考には着いていけない。

 これは両親は知っているのだろうか・・・愛娘が急に同じくらいの年齢の男性と一緒にルームシェアとかお父さんが発狂しそうだ。

「おばあちゃん、ちなみにこのことはお父さんとお母さんは知ってるの?」

「今さっき電話で話して納得してもらったよ」

 それはたぶん納得したんじゃなくて、納得させられたんだと思う。特にお父さんは絶対に納得してないじゃん、それ。

 小春は心の中でツッコミを入れてしまうが、さすがにこの場では言えない。

「真面目な話なんだがね」

 不満そうな小春のことを知ってか知らずかトキが話し始める。

「ルームシェアの話は終わってない気がするんだけど・・・」

「それを含めて話をするの。とりあえず、おばあちゃんの話を最後まで聞いてくれるかな、小春」

 トキの何か理由がありそうな、そんな言い方に小春は「はい」としか言えなかった。

 たぶん、木花(このはな)家と夢紡(ゆめつむぎ)の御力(みちから)に関係する話と思われる。
 
 こういう時はきちんと話を聞いた方が良い。

「最初の姫、淡雪様の話は小さい頃に聞いたね」

「はい」

「淡雪様を守っていた一族がいるんだよ」

「帝の近衛兵に守ってもらっていたんじゃないの?」

「違う。今で言うと公正中立を守るため淡雪様は帝から守られることを拒んだ。

 近衛兵は帝のためにある。正室でも側室でもない淡雪様のために仕事をしてはおかしなことになる。
 
 もちろん帝の近衛兵も念のため数名は着いていたみたいだけど、主にはその一族によって淡雪様は守られていたんだよ」

 淡雪様は最初に帝に仕えた夢紡の姫のこと。

 小春の中で淡雪様はずっと帝に守られていたと思っていた。

 今、夢紡の御力を持つ木花家は公安警察に守られている。公安警察は国の機関である。

 平安の昔から同じだと思っていた。

「その一族が月影家だよ。『月』の光の下で夢を視る姫を『影』となり守る。

 木花家の女の子が郷を出たら、必ず月影家から一人護衛として着いてもらっている。

 年齢が近いものが基本的には着くから、小春の従姉の永和子(とわこ)は大学に行く時に狼弦の姉がちょうど近い年齢で美羽(みう)いたからルームシェアしていたね」

「おばあちゃん、私も女の子とルームシェアしたい」

 6つ年上の永和子には同じ女性が着いたなら、同じように小春だって女性とルームシェアしたい。

「小春に一番近い年齢の月影家の子は同じ年の狼弦だけ。

 女の子で一番近い年齢は、5つ下になるね。そういうことだから、今日から一緒に生活してね」

 ここまでの話をされたら強く「No」は言えない。

 小春は目線を斜め下に移す。

「翡翠《ひすい》、車はもう来ているかな?」

「はい、トキ様。プライベートスペースに手配してあります」

 さすが、トキの秘書兼護衛。完璧な仕事をする。