夢見る乙女は狼の守護のもとに 〜守られて愛されて一国を支える姫になる物語〜

 4月3日、夕方。狼弦がヤマトオオカミになってからまる二日が経とうとしている。

 4月1日、小春が杏と棗に会った帰りに数日分の食材をまとめて購入していた。外に出る用事が無かったので、小春と狼弦はとりあえず部屋の中で過ごした。

 小春が外に出れば公安警察が狼弦の代わりに警護するが、それは狼弦の事情がバレてしまう可能性が高くなるため検討に検討を重ね今は止めておくことにした。

 あとどれくらいこの状態なんだろう?

 小春の中にはぼんやりした不安が湧いてくる。

 ヤマトオオカミになった狼弦はカッコよくて、可愛くて、モフモフだ。ことあるごとにモフモフしてしまう。そして、癒される。

 モフモフは良いのだが、良い状況ではない。まずは狼弦がヤマトオオカミになる時間を減らさなくては・・・

 小春はさっそく自分の夢に干渉しようとはしてみたが・・・うまくいかない。自分の夢という感覚になれなかった。夢に流されるまま・・・朝だった。

「どうしたら良いのかな?」

 ソファに寝そべっている狼弦をモフモフする小春。考えはするが、答えは出ない。

「モフモフ、気持ちいい~。癒されるわ~」

 狼弦がヤマトオオカミになっていることを良いことに小春は心の声が駄々洩れていた。

 狼弦がどう思っているかは知らずにモフモフする小春。

「モフモフだね~」

 そう言ってヤマトオオカミなっている狼弦に倒れこもうとした時、狼弦がすっと起き上がった。そして、自室に戻っていった。

「せっかくモフってたのに~」

 小春は不満げな声を上げ、恨めしそうに部屋に戻る狼弦を見る。

 あれ?今までと何か違う。よく分からないけど、違う。

 勘としか言えない何かを小春は感じた。

 もししたら、狼弦、元に戻るかも・・・そんな予感だった。

 狼弦が部屋に戻って10分が経過した。

 部屋の扉が開いて人間に戻った狼弦がうつむき加減でリビングに入ってきた。

「あ・・・」

 小春は「やっぱり」と言いかけた。でも、それは狼弦の申し訳なさそうな、困ったような顔を見て飲みこんだ。

 赤い夕陽とLEDの白い光が混ざるリビングに、重い空気が立ち込める。

「狼弦、おかえり」

 小春は、狼弦の斜め前に立って声をかけた。

 狼弦は小春をちらっと見る。目線が合ったかと思ったすぐそらした。

「ただいま・・・」

 かろうじて聞こえる声で返事がきた。