夢見る乙女は狼の守護のもとに 〜守られて愛されて一国を支える姫になる物語〜

 杏(あんず)と棗(なつめ)は席に着いた。

 杏は小春の隣に、棗は小春の前の席に座る。

 二人は落ち着いてメニューを見る。

「やっぽり紅茶はダージリンかな?ケーキも美味しそう」

「ブレンドコーヒーに苺タルトにする」

「私も苺タルト。小春は?」

「私は不知火(しらぬい)のタルトにしよっかな」

 さっきまでの痴話げんかが嘘のように落ち着いて話す二人。

 しれっと二人とも苺タルトを食べたいと言っている。小さい頃から見ているが、本当に仲の良い双子だ。

 二人ともそれを認めていないけど、小春は知っている。

 好きなもの、食べたいもの、話すタイミング・・・二卵性だけど全く一緒だ。

 中学の社会のテストの答案の点数が同じ、間違えた個所が同じ、間違えた内容も一字一句同じ時はカンニングを疑われていた。

 二人は別々の教室で試験をしている。通信機器なども利用できない環境だった。

 一応、両親が学校に呼ばれて事情を説明されたようだったが、爆笑で終わったらしい。

 両親から見ても自宅でも思い当たることがあったようだ。

 こんな二人だからきっと、二人の両親も安心して二人暮らしにしたのだろう。本人たちは納得していないようだが。

「今日の健康診断、すごい人だったよね~。小春に会えるかと思ったら全然だったね」

「杏が出かける前に化粧に時間かかって遅くなったからだろ」

「棗だって髪の毛のセットが~とか言ってたじゃない」

 相変わらず仲良し。

 二人は今日の健康診断で小春に会えなかったは受付時間が遅くなったためと解釈してくれている。

 小春が別の病院ですでに健康診断を受けていたことは、今のことろは内緒にしておこう。

 いずれ分かることかもしれないが・・・お互いに環境が変わった今はまだ時期尚早だ。

「二人ともすっごく素敵!私も大学デビューしようかな?」

「小春は髪染めてパーマかけたら超かわいいと思う!」

 杏はカラーとパーマを勧めてきた。

「いや、小春のこのストレートヘアはいじらない方が良い。それならナチュラルメイクだけで十分だ」

 今度は棗がメイクを勧める。

 そして、いつものやり取りが始まりそう・・・なところでタルトが来た。

「美味しそう~」
「うまそう~」

 杏と棗の声が重なる。

 「いただきます」の声で食べ始める。

 小春も不知火のタルトを食べる。

 程よい柑橘の酸味とカスタードクリームの甘みが何とも言えない美味しさだ。ハーブティーとの相性も良い。

 杏と棗も苺のタルトを美味しそうにほおばっている。

 見た目が大人になってもやっぱり杏も棗も変わっていない。

「小春、前期の教科書買った?」

 杏が現実的な話をしてきた。

「もちろん」

「やばくない?」

「え?何が?」

「教科書の量が多すぎて私、すでに折れそう」

 小春の教科書の半分は狼弦が持ってくれた。部屋には自分で運んだがまだしっかりとは見ていない。

 真面目な杏はさっそく教科書を見たのだろう。たぶん、中身も。

 そして、気持ちが折れかけているようだ。

「小春、俺は心を止めたよ。授業受けたらそうでもないこと多いからって。なのに気になって読んでみて、で、今、不安らしい」

「あぁ」

 棗の説明に小春は納得する。

 少しでも先を考えて行動しようとする杏は時々こういうループにハマる。

「杏、来週から授業始まるけどさ、分からないところは高校の時と同じで一緒に教え合おう。棗もいるし、大丈夫だって」

「こはる~」

 杏の気持ちを読みとって安心させる、小春。

 そんな小春に抱き着く杏。

 旧都にいたときに変わらない日常が帝都でも始まった。