夢見る乙女は狼の守護のもとに 〜守られて愛されて一国を支える姫になる物語〜

 14時前にカフェに着いた。

 杏が見つけたカフェはそれなりに人はいるが落ち着いている。大衆的というよりは昔からあるおしゃれなカフェだった。

 洋風のテーブルとイス。棚にはオシャレなカップとソーサーが並べてある。

 青や黄色、赤などいろんな色を使ってデザインされているカップとソーサーは店内を見守っている妖精のようだ。

 さすが、杏。良いセンスをしている。

 好きな席へどうぞと店員さんからうながされる。

「とりあえず、別の席で、近くにいるから」

「狼弦は何しているの?」

「何してるって、仕事」

「お客さんのフリはするんでしょ?」

「本読んでる」

「ふーん、普通だね」

「目立つことするわけないだろ」

 会話は日常に戻っている。

 意識しているのは小春だけだったのかもしれない。普通にしていればきっとさっきのこともなかったことになる。

 小春はそう思い始めた。

 小春は空いている席に着く。狼弦も近くの席を選んで座る。

 小春はハーブティーを注文する。ローズヒップとハイビスカス、そこにリンゴが入ってフルーティーな味わいらしい。

 狼弦はブレンドコーヒーを注文していた。渋めの選択をしている。

 オレンジジュースとかハーブティーを注文する狼弦は想像できない。イメージ通りなのかもしれない。

 ハーブティーが運ばれて来て一口、二口。香りと酸味・甘みを楽しむ。

 小春のスマホにメッセージが入る。心からだ。

『小春、着いたけど、どこにいる?』

『店に入ってるよ~』

 杏からのメッセージに返信をすると、杏と棗が店に入ってきた。

 杏は髪をマロン色に染めて、うっすら化粧をしていた。ふわっとしたブラウスとロングスカートに軽いブーツ。革製の黒のジャケットを羽織っていた。しっかり大学生のお姉さんになっている。

 棗は水色のシャツに濃紺のカーディガン、黒のパンツに、ジャケットはオフホワイト。よく見ると翼は髪に青いメッシュを入れておしゃれになっていた。

「おまたせ、小春」

「さっき来たばっかりだよ!それよりも二人とも大人になっている!!」

 卒業式依頼、それぞれにあわただしく会えていなかったため1か月でこんなにも変わったとは・・・

 小春は少し取り残されたような気持になった。

「中身は変わってないわよ、特に棗はお子ちゃまのまま」

「杏だって中身は変わってないだろ」

「何よ、こっち来て初日の夜、ホームシックで同じ部屋で寝たいって言ったの誰よ」

「それは杏だって同じこと言ったじゃないか」

 仲良しの双子。この可愛らしい痴話げんかを小春は何回見てきたか。

 帝都に来てもこれが見れる安心感。

 ただ、知らない人は同じ顔の男性と女性が喧嘩しているようにしか見えない。そろそろ止めないと。

「杏、棗、とりあえず、注文しよっか」

 小春の声で二人は切り替わる。

「私、紅茶!」

「俺はコーヒー」