夢見る乙女は狼の守護のもとに 〜守られて愛されて一国を支える姫になる物語〜

 昼ご飯は簡単にスパゲッティを茹でて、レトルトソースをかけた。

 旧都にいる小春の両親から送られてきた野菜たっぷりのパウチスープを足して、オシャレなお昼になった。

 小春は料理を作りながら気持ちを落ち着けたが、先ほどの狼弦との距離を何回も思い出してしまう。

 頬が熱を帯びて熱い。

 二人で昼ご飯を食べる。

 リビングは始めてこの部屋に来た日の夕食と同じくらい静かだった。

 狼弦は無表情にスパゲッティを口に運ぶ。スープを口に運ぶ。

 小春はうつむいたまま食べる。なんであんなに力を込めて行ってしまったんだろう・・・後悔先に立たずとはまさにこのことではと思いながら食事をする。

「ごちそうさまでした」

 二人の声がかぶる。

「作ってくれてありがとう。片付けするから、出かける準備してて」

 狼弦がお皿をシンクに運ぶ。

「出かける・・・?」

「幼馴染の杏《あんず》さんと棗《なつめ》さんに会うんでしょ?」

「あ・・・」

 小春はさっきの一件で杏と棗と約束していたことがすっかり抜けていた。

 小春は狼弦とのルームシェアについて杏と棗にはまだ話す勇気がないので、待ち合わせの時間に早めに行くことにしたのだ。

 狼弦は近くの席でお客さんのフリをするとのことだった。

「し・た・く」

 狼弦は小春がこれからの予定を忘れていたことをスルーして準備を促した。

 こういうところは大人だ。

 小春は自分の部屋に戻って、バッグの中身を確認する。

 財布、ハンカチ、リップ、スマホ・・・

 ペパーミントグリーンのワンピースに、白いロングカーディガン。教科書販売の時と同じ明るめのベージュのスプリングコート。

 バッグはブラウンの斜め掛けタイプ。同じ色のローファーと合わせると少しお姉さんな印象になる。

 一人になって少しずつ気持ちが落ち着いてくる。でも、あの狼弦の顔はなぜか忘れることができない。

 綺麗な黒いキラキラとした瞳だった。吸い込まれてしまいそうな。

「ダメダメ、今から杏たちに会うんだから」

 小春は頭を左右に振って、先ほどの脳内映像を消したことにする。

 部屋を出て、リビングに戻る。

 狼弦は昼ごはんの片づけを終わらせて、ソファで待っていた。

「行けそう?」

「うん」

 13時10分。

 約束の時間は14時30分。約束のカフェは電車と徒歩で30分くらい。

 ゆっくり出かけてちょうど良いくらいの時間だ。

 いつもの距離で歩いているのに、二人の間にはぎこちない雰囲気が漂う。