夢見る乙女は狼の守護のもとに 〜守られて愛されて一国を支える姫になる物語〜

 小春と狼弦は大学に着いた。

 先日、キャンパスを事前に見に行った時より学生が多い。健康診断のために新入生が来ているからだろう。

 新入生は教科書販売もある。

 健康診断は午前中のみ。教科書販売は午後3時まで。健康診断を終えたらそのまま教科書販売へ向かう生徒が多い。

 小春と狼弦は白鷺医療センターでの結果を学生課に提出して教科書販売の会場へ向かった。

「学部ごとで売ってるんだ」

 小春は会場のホワイエに到着して驚いていた。人も本もたくさんだった。

「専門が違うからそりゃそうなるだろ。1年は教養科目あるから共通の教科書も多そうだな」

 狼弦は冷静だった。去年も経験しているんじゃないかというくらいだ。

 まずは小春の入学する薬学部のブースへ並ぶ。教養科目については3月中に大学からリストが送られてきていた。薬学部では必修の教養科目がいくつかあった。選択科目のほうは希望をネットで提出して、昨日、結果が来た。

 大学側から送られてきた整理番号を入れると、前期の科目のリストが出て、教科書がそろえられるらしい。

 受付に整理番号を伝えると、すぐに数名のスタッフが必要な教科書を取りそろえた。

 教科書は紙袋2つ。いっぱいだった。

「これは・・・」

 小春は教科書の量に引いた。一人じゃなくて良かったと思う。

「1つは持つから大丈夫」

 狼弦は軽々と紙袋を1つ持ってくれた。さすが鍛えているだけある。

 狼弦はこっそりやっているつもりかもしれないが、時々、部屋から筋トレしている音が小春の部屋まで聞こえていた。

「狼弦、1回、自宅に戻る?これで狼弦の教科書までってなったらすごい荷物になるよ」

「大丈夫」

 小春は狼弦も紙袋2つの教科書になったら大変と思い、提案する。しかし、狼弦はすんなりと「大丈夫」と言ってのけた。

 こうなったら全部、教科書持ってもらおうと少し意地悪な思考が小春の中で湧いてくる。

 狼弦と一緒に経済学部のブースに並ぶ。

 狼弦が受付に整理番号を伝えると、スタッフが一人で教科書を持ってきた。

「え?」

「だから言ったでしょ。大丈夫って」

 よく見ると6冊、すべて教養科目のみ。専門科目の教科書が1冊もない。

 教養科目はすべて小春と同じ。

「どういうこと?」

 狼弦が小春の教科書の1袋と自分の教科書を片手で持ってホワイエから出ようとジェスチャーする。

「とりあえず、自宅に戻ってから話しても良い?」

「うん」

 狼弦は人が多いところで話をしたくないようなので小春は了承した。


 
 自宅のリビングに戻ると、狼弦がお茶を入れてくれた。

 狼弦の入れる煎茶は茶葉の旨味と甘味が強く、苦味が少ない。

 美味しいお茶だ。

 三人掛けのソファの右端に小春、左端に狼弦がかける。そして、2人がお茶を一口。

 狼弦が話し始める。

「教養は全て小春と同じものをとトキ様からの指示があったので」

「そっちじゃなくて、何で専門科目が1つもないの?」

「あぁ、そっち」

 教養科目が全て同じものであることも気になってはいたが、やっぱりトキが後ろで糸を引いていた。

 何となくそうかとは思ったが、専門科目の教科書が1冊もないのはおかしい。

 聞かれた狼弦は飄々と話し始めた。

「税理士の科目をいくつか持っていて、1年の専門科目はほとんど免除。後期から一部の専門科目に出ればいい。英語の実用試験の点数も良かったからそっちも免除」

 運転免許持ってるんだよね、くらいの感覚で狼弦は前期の教科書が少ない事情を小春に説明し始めた。