夢見る乙女は狼の守護のもとに 〜守られて愛されて一国を支える姫になる物語〜

 4月1日、大学の健康診断の日。健康診断は9時から実施されている。

 小春は狼弦は先日の健康診断の結果を持参して、教科書の販売が開始される10時に合わせて家を出た。

 小春は4月になったというだけで、気温が上がったようなそんな気がしてしまう。

 7分袖のワンピースにロングカーディガンで出かけ得ようとした小春を狼弦が止めて、スプリングコートを羽織ることになった。

 外は小春が思ったより寒かった。ビル風もあって余計に寒く感じる。

 これが帝都の4月。

「狼弦が正解だった」

「こんなに肌寒いのにあんな薄着とか、アホとしか思えん」

「アホっ!ひどい。というか、最近、私の扱い雑じゃない?心は警護されないわけ?」

 小春は敬語を使わなくなった狼弦が小春をからかうことが増えてきていることに気が付いていた。

「心は知らないけど、健康は守ってる。というか小春、俺に言われないくらいしっかりしとけば解決しない?」

「うっ」

 ぐうの音も出ないとはこのことだろうか?

 狼弦の的確な答えは、小春の逃げ道をふさいだ。確かに今日もちゃんとベランダで気温を確認してから洋服を選べばこんなことにはならなかったはずだ。

「でもさ、狼弦、もう少し優しく言っても良いと思うんだよね。まだ知り合って2週間も経ってないんよ?」

 小春は負けじと言い返す。

「まだ2週間目か・・・言われてみればそうかもしれない。ただ、なんか小春といるとこう昔からの知り合いみたいな感じがあるんだよな?」

「?」

 狼弦が不思議な言葉をつぶやいた。小春とは3月22日に会ったばかりだ。

 一緒に生活をしているとは言うものの、普段はそれぞれの部屋にいることも多く、新生活の準備のため買い物に出かけたり、食事を作るために買い出しに出かけたり・・・

 小春からしたら狼弦がうまく距離を保ってくれているからこそ、帝都で安心して生活を始められている。

 自宅でも気配を薄くして、小春がリラックスできるような空間を作ってくれているのだろう。

 もちろん小春も狼弦が生活しにくくならないよう、食事はタンパク質多めのしっかり目を心掛け、小春を守る仕事の邪魔にならないよう必要以上に話しかけすぎないようにしている。

 それなりにお互いに気づかいをしているし、生活しやすいように配慮している。

 小春は「昔からの知り合い」の意味が分からず、首をかしげて狼弦を見てしまう。

「あ、いや、まあ話しやすいってことかな。昔からの知り合いの部分は忘れて」

 小春の視線に困った狼弦は慌てて訂正した。

「どうしよっかなぁ?」

 今度は小春が狼弦に反撃する。

「勝手にして」

 狼弦は小さなため息をつきながら、つぶやく。 動揺を隠すかのように狼弦の歩幅が少し大きくなった。