夢見る乙女は狼の守護のもとに 〜守られて愛されて一国を支える姫になる物語〜

「店、入ろうか」

 狼弦《ろうげん》はさらっと話題を変えた。

 10時50分。

 昼には少し早いが店内はお客さんがまばらにいる。帝都にまだ慣れていない小春にとっては落ち着いて食べられる空間はありがたい。

「いらっしゃいませ!」

 店内に入ると明るい女性の店員さんの声が響いた。

 ユニフォームは黒のパンツとTシャツ。エプロンは赤と黄色を使っており、ハンバーガーに使われているケチャップやトマト、マスタードを連想させて食欲を掻き立てる。

 店内の壁は全体的にポップな絵が描かれており、海外旅行で立ち寄ったハンバーガー屋さんはこんな感じなんだろうなと思える作りになっていた。

 少し脚が長めのテーブルとイス。

 大和国の人は欧米の人より一回り小さい。あえて高めのテーブルとイスにすることで、大和国にはないハンバーガーを食べたという雰囲気までも味わるようにできている。
 
「小春、何にする?」

 狼弦はメニューを小春に見やすいように持ってくれた。

「こういう時はがっつりチーズ&チーズバーガーのセットにしようかな。狼弦は?」

 小春はカロリーが高そうセットメニューを選ぶ。

「俺はアボカドバーガーのセットにしようかな。ナゲット付けるけど、シェアする?」

「狼弦もけっこうがっつりじゃん。じゃあ少しだけナゲットいただくね。
私のポテト、シェアする?」

「ポテトは俺のセットにもあるし。量が多かったら言って。手伝うから」

 さらっと小春のボケにツッコミを入れながらも、狼弦がさりげなく気を使ったことに小春は驚いた。

「なんか紳士じゃん~」

「じゃあこれで注文するよ」

 小春の茶々をサラッと流して狼弦は注文をしようとうながす。

 さすがに警護している立場上、小春を置いてはいけないのだろう。小春が一歩踏み出すのを待ってから歩き出した。

 注文をして、お会計を済ませ、番号札を受け取って壁側の席に座る。

 席は狼弦が決めた。やはりセキュリティ上の関係か真ん中の席や窓際の席は避けた。

 小春の冗談に付き合いながらもしっかり仕事をする狼弦に小春は少しずつ尊敬の気持ちが芽生えてきた。