夢見る乙女は狼の守護のもとに 〜守られて愛されて一国を支える姫になる物語〜

 健康診断は木花家御用達の白鷺(しらさぎ)医療センターで行われた。

 狼弦も小春に同行した。

 男性・女性で健康診断のスペースが分かれている。小春は途中から公安警察のお姉さんと一緒に女性専用スペースへ入った。

 どうやらトキが9時から10時の1時間だけ貸し切り状態にしているようで、同じ時間に利用している人はいなかった。

 健康診断の結果は二人とも異常なしと医師から説明があった。二人とも18歳。当たり前の結果だった。

 小春と狼弦は白鷺医療センターを出て、電車の駅に向かって歩いていた。

「一瞬だった~。特に問題ないとは思ったけど、健康診断って結果が出ると気持ちが緩んでジャンキーな物が食べたくなるよね?」

 小春は伸びをしながら狼弦(ろうげん)に話しかける。

「小春の言う、ジャンキーな食べ物って?」

「それは、もちろんハンバーガー!」

「健康診断の後にめちゃくちゃジャンキーだな」

 狼弦はあきれながらも笑っている。

 反応としては悪くはない感じだ。

「狼弦、帝都でこう、がっつりしたハンバーガーのお店ってある?」

 狼弦は少し考えてから答えた。

「がっつり・・・欧米で人気のハンバーガーのお店が1年くらい前にできたなあ」

「狼弦、行こうよ!」

「ここからなら電車で2駅だからすぐだな。まだ10時半前なのでそこまで混んでないだろうし・・・行こうか」

 この会話、知らない人が見たら普通にカップルの会話になる。でも、実際は守られる側と守る側。

 二人は駅から電車に乗って2駅。白鳥駅に着いた。

 白鳥駅は帝都でも有数の電気街の近くにある駅だ。パソコン関連の部品などを幅広く扱っている。

 オフィスもあるので女性もいるが、どちらかといえば男性が多い。休日は男性が断然多いエリアになる。

 今日は平日なのでスーツを着た女性も歩いている。

「こっち」

 狼弦はスマホで駅から目的地までの道順を確認して小春を案内する。

 そっけない感じが少しあるが、表情は以前より柔らかくなっている。

 ほんのわずか狼弦が小春の前を歩く形で電気街を進む。

「ここか」

 狼弦が足を止めた。

「metro grill burger・・・」

 小春は看板を読んでみた。

「意外と発音良いな。本店から来てる店員さんもいるみたいだから英語で注文してみたら?」

「からかってるでしょ」

「まあ、からかってるね」

「もう」

 狼弦にからかわれて小春はすねた表情をする。

 一方で狼弦の声に表情が出てきた。初対面の時は機械に話しかけているみたいな感覚だった。1か月も続いたら小春は心が折れてしまっていたかもしれない。

 表情はまだ硬さが残ってはいるが時間とともに理解できそうな気がしてきた。