夢見る乙女は狼の守護のもとに 〜守られて愛されて一国を支える姫になる物語〜

 夜、狼弦(ろうげん)は自室に戻り、椅子に座りながら今日一日を思い返した。

 やっぱり小春は普通すぎてまったく目立たない。

 もちろん仕事なので周囲に目を光らせてはいるが、狙われる気配は全くしない。

「急に敬語使うなとか言うし・・・無性にからかいたくなってしまった」

 小春からタメ口でと言われた時のことを思い出す。

 ムキなって言い返すときの小春の表情は自然だった。可愛いと思ってしまうくらいだ。

「いやいや、あくまで守る対象で、可愛いと思うのはおかしい」

 仕事に忠実でなくては。

 小春の言う通り「様」をつけて呼ぶのは大学では危険すぎた。初めての仕事だったため肩に力が入っていたかもしれない。

 遠い親戚くらいがちょうどいいかも。

 ただ、ルームシェアしているのはバレたらまずい気がする。

 ペアリングについての言い訳も考えておいた方が良さそうだ。

 事前に聞いていた小春の交友関係は大学に行っても続きそうだ。杏と棗はきちんとしたご家庭のご子息とご息女らしい。

 きっとどこかのタイミングで近しい関係にはルームシェアはバレるだろう。

「トキ様からのご指示とは言え、この年齢でルームシェアはちょっとな。何か意図があるのだろうか?」

 文武両道で育った狼弦。人並みに常識はある。

 狼弦としてもこの状況は距離が近すぎるのではないかと思う。でも、小春に何かあった時に盾になるには充分な距離だ。

 仕事を始めたばかりの狼弦からしたら、ありがたい環境だ。

 コンシェルジュが見れる防犯カメラは、狼弦のスマホからでも確認できるようになっている。

 不審者がいればすぐに分かる。

 外にいる公安警察からも連絡がくる。

 とりあえず万全を期して小春の警護をしている。

 今日も不審な者がいたという連絡はない。小春が寝静まった気配を感じてから狼弦も眠りにつく。