夢見る乙女は狼の守護のもとに 〜守られて愛されて一国を支える姫になる物語〜

 狼弦と小春は18歳、同い年らしい。

 落ち着きがあるから小春より4つくらい上かと思っていた。

「本当に?サバ読んでないです?」

「本当です。免許証、見ますか?」

 狼弦の提案に小春は頷く。

 こんなに落ち着いた18歳、いる?免許証見ないと信じられないと思い見せてもらう。

「・・・本当だ。同い年だ。しかも誕生日まで一緒」

 帝紀2670年6月1日。小春の誕生日と全く同じだった。

 やれやれと言う顔で狼弦は免許証を財布へしまう。

 こういう時はなぜか顔に出ている気がする。

「生きている時間はほとんど同じです」
 
 言われてみれば生年月日が同じということは、生きている時間もほぼ同じということになる。

 同じ時間を生きていて、こんなにも違うものなのか。

「ということは、敬語で話さなくても良いような気が・・・」

 小春はふと気が付いた。今まで小春は狼弦が年上だと思って敬語でいた。狼弦はどう思っているかは分からないが、守るべき相手として敬語を使っていたかもしれない。

「自分は仕事ですのでこのまま敬語で大丈夫です」

 狼弦は敬語を貫こうと意思表示をしてくる。

 同じ大学で同じ学年、一緒にいることも多いのに敬語は違和感があるような・・・

「狼弦さん、周りに私たちの関係を気取られないことも仕事では?同じ指輪をしているからバレるのは時間の問題かもしれないけど、契約のことはバレたらいろいろ面倒なことになると思うの」

「なるほど、確かに・・・」

「そうでしょ?それなら敬語はやめて遠い親戚という設定でいた方が良いんじゃないかな?」

「遠い親戚。まあ似てませんもんね、いろいろ」

 狼弦は理解してくれているようだが、最後の一言が失礼な気がした。

「そうね、似てないわね、いろいろ」

 小春は少しイラっとしてそのまま言葉を返してみた。

「ということで、今から敬語禁止!遠い親戚という設定で大学生活を送りましょう」

「分かりました、小春様」

「ちがう~、様もつけない!」

「小春、分かった」

 狼弦は少し微笑みながら小春の名前を呼び捨てにした。

 なんか、ちょっとだけカッコいいかも・・・。

 小春はドキッとしてしまい狼弦から目をそらす。

「小春は呼んでくれないの、俺の名前?」

 狼弦の一人称が「自分」から「俺」になった。

 カッコよさが増してる気がする。

「えっと、狼弦さん」

「いやいや、ここはお互いに呼び捨てのほうが親戚って感じになるでしょ」

「~~~~!」

 さっき小春の方から敬語を使わないよう狼弦を丸め込んだのに、今度は狼弦に反撃されている感じがする。

「早く、ね」

 狼弦は小春の耳元でわざとささやく。

「・・・ろう・・・げん」

 恥ずかしくて顔に熱が帯びてくる。

 小春は消えそうな声で狼弦の名前を口にする。

「よくできました」

 狼弦は満足そうにニヤニヤしている。

「悔しい!」

「お互い様だろ」

 薬草園に続く道、人気がないのは偶然なのか誰かによって作為的なものなのか。

 二人のやり取りを聞いているのは、春の植物たちだけだった。