夢見る乙女は狼の守護のもとに 〜守られて愛されて一国を支える姫になる物語〜

 朝7時。

 小春はスマホのアラームで目を覚ます。

 旧都の家ではない。

「そうだった、昨日から帝都に来てたっけ」

 思い出して現実に戻った。隣の部屋には狼弦がいる。

 なんで年ごろの私が同じくらいの年齢の男性と一緒にルームシェアしないといけないのか・・・

 やっぱりモヤっとする。

 ベッドにずっと横になっていても始まらないので、小春は着替えをした。

 カジュアルなブラウスとスカート。パンプスに合わせやすそうな靴下がクローゼットには何セットかあった。

 大学への通学用に準備されているようだ。

 水色のブラウス、ブラウンのスカート、白いロングカーディガンを選んだ。

 身繕いを整えた小春はリビングに向かう。

 狼弦はもう起きてキッチンにいた。

 昨日のスーツ姿とは違って、カジュアな濃紺の襟付きシャツに、黒い綿パンツだった。

 洗練された青年がそこにいた。小春は狼弦に見とれてしまいそうになる。

「小春様、おはようございます」

「狼弦さん、おはようございます」

 ぎこちない朝の挨拶をする。
 
 小春は昨日からずっと「様」を付けて呼ばれていることに違和感を感じている。なぜ「様」?

 ツッコミたいが狼弦の出す空気がそれをさせない。

 何かのタイミングで聞いてみよう。

「朝はパンとハムエッグで良いですか?」

「作ってくれるの?」

「簡単なものしか作れませんが、昨日は作ってもらいましたし」

 すごく律儀。新しい面が少しずつ出てくる。

「じゃあ、私、昨日買った玉ねぎでオニオンスープ作ります」

「ありがとうございます」

 小春は狼弦の隣で玉ねぎを薄く切り始めた。

「昨日も見てましたが、手際、良いですね」

「向こうでちょこちょこやってたからね」

「お手伝いさんとかいなかったんですか?」

「いなかったよ。それが普通だった気がする。人が多ければ危険の数が増えるからかな?」

「それはあるかもしれません」

 話しながら、小さな鍋にバターを入れて薄く切った玉ねぎを炒める。火が通ったら塩・胡椒と顆粒のコンソメを入れて玉ねぎの旨味を出す。

 最後にお湯を入れてスープが出来上がる。

 狼弦は隣でハムと卵を焼く。弱火にしている間にパンをトースターに入れて温める。

「料理、慣れてますね」

「学校の家庭科でやったくらいしかできないです」

「手際、良いなって思って」

「ありがとうございます」

 会話は弾まないが、昨日よりは会話ができている。

 それぞれに作った料理をお皿に移して完成した。

 整った生活は整った食生活から・・・小春がお母さんから常に言われていた言葉だ。

 美味しく朝ご飯を食べて、片づけをする。

 洗濯機を回して、リビングと居室に掃除機をかける。さすがに小春は狼弦の部屋に入るのは気が引けるので、セルフでとお願いした。

 洗濯物をサンルームに干し終わるとちょうど9時30分だった。

「散歩しながら大学を視たいのだけど、良いですか?」

 小春は狼弦に声をかけた。

「はい、一緒に行きましょう」

 狼弦は無表情で答えた。