夢見る乙女は狼の守護のもとに 〜守られて愛されて一国を支える姫になる物語〜

 小春と狼弦を乗せた車の中は電気自動車のモーター音だけが響いている。

 帝都内の10階建てのマンションの前に車が停車した。

 どうやらここがこれから住む家のようだ・・・やたらと豪華である。

 マンションの周りには公園の散歩道のように木が植えられており、1階はどうやらロビーと共有スペースになっている。

 運転手と狼弦がアイコンタクトを取り、狼弦は車から降りた。

 小春も急いで降りる支度をしようとしたら、狼弦が小春が座っている側の車のドアを開けて手を差し伸べてきた。

「ありがとうございます・・・」

 なんか気恥ずかしい。郷にいたころ全て自分でだった。こんなことしてもらうことはなかった。

 小春はおずおずと狼弦の手を取って車から降りる。

「トキ様より事前に説明を受けておりますので、ご案内します」

 狼弦は小春の少し斜め前を歩いてマンションのロビーに向かう。

 ホテルマンのような制服を着た男性がロビーの前に立っていた。狼弦からコンシェルジュだと説明された。24時間いるそうだ。

 帝都の一等地にコンシェルジュが24時間常在するマンション・・・いったいいくらするんだろう。

「木花様、ようこそいらっしゃいました」

 コンシェルジュの男性は深々とお辞儀をする。

 小春はペコリとお辞儀をする。

「さっそくお部屋にご案内いたします」

「案内は結構です。業務にお戻りください」

 狼弦がきっぱりと断った。

 せっかくの親切を断るとは・・・冷たいなと小春は内心思っていた。

 狼弦はポケットから財布を出して、ロビー入り口の機械にかざす。自動ドアが開く。

「こちらです」

 そう言ってコンシェルジュを置いて小春をエレベーターホールへ案内する。

 ジムやシアタールームもあるとエレベーターホールへ向かうまで狼弦が簡単に話してくれた。

 エレベーターに乗ると狼弦がボソッと言った。

「若い男女が二人で住むには高級すぎるマンションです。どういう人か興味本位で案内を申し出た可能性があります」

「あ・・・うん」

 そういう人もいる。良く分からないが分かった。

 親切な顔をして近づいてくる人間にプライベートな部分を見せないよう気をつけろということなのだろう。

 最上階、10階に着いた。

 エレベーターから降りると廊下にドアは1つ。

 つまり最上階には2LDKの部屋しかないということだ。

「贅沢すぎる・・・」

 小春がつぶやく。

「贅沢じゃない、セキュリティ上の問題です」

 狼弦が訂正する。

「入ります」

 狼弦はカードキーで部屋の鍵を開けた。