いつか、あの日の私を迎えにいく


「みちる、今日このあと暇?」

 友達にそう言われて、ちょっと考える。

「んー、ちょっと寄りたいところがあるんだよね」

「そーなんだ。どこ行くの?」

「ん? 楽器屋さん」

 そう言って、私は笑って見せた。

 七月になった。
 東京の夏は、想像していたよりずっと暑い。

 高校生の頃見ていたアニメの続編が放送され始めた。

 それをたまたま見つけたのが昨日のこと。

 あの日弾くことができなかったベースを、ちゃんと見に行きたいと思ったんだ。

 どこにお店があるのかは、昨日のうちに調べておいた。

 今日は、初めてそこに行ってみる。

 店の外からでも、たくさんの楽器が並んでいるのが見えた。

 ちょっと緊張する。
 でも、それ以上にわくわくした。

 入り口を開けると、からんとひとつ鐘が鳴った。

 私はまっすぐ、ベースが置いてあるコーナーへ向かう。

「ベース、やってるんですか?」

 私が迷わず歩いて行ったからか、店員さんがにこやかに話しかけてくれる。

 私は小さく、首を横に振る。

「いえ、やったことなくて」

 昔だったら、そこで終わってたのかもしれない。

「でも、やってみたいんです!」

 調べていた真っ白のベースを指さして、私は笑った。