いつか、あの日の私を迎えにいく


 二年生になって、山本くんと茉莉、どちらともクラスは離れた。

 私は一組、山本くんは隣の二組、茉莉だけ階が違う三組だった。

 付き合ってからすぐにクラスは離れてしまったけど、LINEは頻繁にしているし、合同授業は二組と一緒だからそんなに寂しくはない。

 今日の体育も、二組との合同だ。

 遠くに、中野くんと喋っている山本くんの姿が見える。

 こっちに気付いた山本くんが、私に小さく手を振ってくれる。

「……ねえ、椎名ちゃん。もしかして山本くんと付き合ってる?」

 そう言って話しかけてくれたのは、高野(たかの)果歩(かほ)ちゃん。

 去年からクラスが一緒で、今年も同じクラスになった子のひとり。

 隠していたわけではないけど、なんとなく恥ずかしくなって、小さく頷く。

「えー! よかったね! おめでとう! 椎名ちゃん、山本くんのこと好きそうだったもんね」

「……うん」

「いいなー!」

 クラスで付き合っているのが私たちくらいだったこともあってか、私と山本くんが付き合っているという噂は、瞬く間に広まっていった。


◇


「みちる、今日俺ん家来る?」

「うん、行くー」

 いつの間にか、お互いの呼び方も変わった。

 付き合っているという噂が広まって、いろんな子から声をかけられるたびに、「え、名字で呼んでるの!?」って驚かれるから。

 最初は緊張した名前呼びも、次第に慣れて馴染んでいった。

 学校から歩いて30分くらいのところに、和真の家がある。

 学校近くの公民館なんかは、他校の生徒が勉強デートによく利用している。
 だからこそ、私たちはそこを会う場所には選ばなかった。

「みちる、好き」

「私も」

 公の場所では、こうやって和真とくっつけないから。

 月に数回。
 和真の家へ遊びに行くうちに、和真の家に私のものがだんだんと増えていった。

「みちるちゃん、これ食べる?」

 和真のお父さんが、私の好きなお菓子を用意していてくれること。

「はい、みちるちゃん用のコップ。買っちゃった」

 私専用の食器を、和真のお母さんが準備してくれたこと。
 遊びに行くたび、私のお茶はいつもそのコップに淹れてくれた。

「あれ? みちるちゃん、また来てるー! 一緒にゲームしよ!」

 そして、小6の和真の弟くんと遊ぶ時間。

 和真と付き合ってから、大切なものが少しずつ増えていった。


◇


 学校でも和真とは普通に喋るけど、本当に普通だ。

 近付きすぎることもなく、本当に友達のような距離感。

 それを少しだけ寂しく思うこともあったけど。

 毎年7月下旬に、夏季球技大会がある。

 クラスでサッカー、バスケ、卓球、バレーなど出る競技を決めて、全学年のクラスでトーナメント戦が行われる。

 和真はバスケ。
 中学はバスケ部だったんだって。

 背も176センチで高いし、実際体育のときにやってるのを見たけどかっこよかった!

 球技大会では私はバレーに出たけど、見事に初戦敗退。

 対して和真のクラスは順調に勝ち進んで、次の試合が準決勝戦だった。

 私と和真が付き合っていることを知っている人も校内に増えて、気を利かせてもらったのか、準決勝戦の得点板係を任された。

 係をしながらも、目は頑張る和真の姿を自然と追っていた。

 中学の時はシューティングガードっていうポジションだったこともあって、今回もそうみたいだった。

 残り時間が僅かになったとき、和真にボールが回った。
 3ポイントラインの外から、和真がシュートを放つ。

 綺麗な放物線を描いた和真のボールは、リングに触れることなくネットを揺らした。

 その瞬間、試合終了のブザーが鳴った。

 ……逆転勝ち!
 一点差。

 最後の和真のシュートが決まったから。

 和真はチームメイトと肩を組んで喜んでいる。

 ……かと思ったらこちらを振り返り、私の方まで駆け寄ってきた。

「勝ったよ!」

 私の肩を力強く抱き締めて嬉しそうに笑った和真は汗だくで、普段はこんなこと学校ではしないのに。

 恥ずかしくて、ドキドキして。
 ……でも、本当に嬉しかったんだ。