恋と焦燥のロードマップ

最初のデートから二週間。私と大輔のメッセージのやり取りは、毎日のルーティンになっていた。
『真由さん、おはよう。今週も一週間頑張りましょう』
『大輔さん、おはようございます!今日は天気が良くて気持ちがいいですね。お仕事、無理せず頑張ってくださいね』
朝の通勤電車、満員電車のドアに押し潰されながら、私は必死に清楚な絵文字を選んでスマホをタップする。口にはいつものランチパックのピーナッツ味が残っている。画面に映る『真由』という健気なキャラクターは、すでに私の手を離れて一人歩きを始めているようだった。
けれど、偽物の関係だったはずなのに、私の心だけがジワジワと本物に侵食されつつあった。
大輔は、メッセージの返信が驚くほどマメだった。私が仕事のちょっとしたミスで「少し落ち込むことがあって」と濁して送った夜には、すぐに『大変でしたね。真由さんはいつも頑張っているから。温かいものでも飲んで、今日は早く休んでください』と、胸がすっと軽くなるような言葉をくれた。
優しくて、スマートで、こちらの気持ちをいつも一番に考えてくれる。気づけばスマホの通知が鳴るたびに、私の心臓はアプリの全能感からではなく、純粋な恋のドキドキで跳ね上がるようになっていた。
好きになればなるほど、比例するように恐怖が肥大化していく。
(本当の私は、床にゴミを散らかしたままスウェットでビールを飲む干物女なのに。もし本当の私を知られたら、この優しい言葉は全部、消えてなくなってしまうんだろうか)