重く頑丈な扉を開けるとそこには複数の人間が暖を取るように真ん中で固まって座っていた。
扉を開けるや、一斉に視線がボクに集中して少したじろぐ。
そこが業務用の休憩室で、蛍光灯が一本だけついており、ジジジッと不快な音を立て、煌々と光を放っていた。
パイプ椅子が6脚とテーブルが1つ、壁際に5人の人間が固まっていた。
男が3人と女が2人、年齢はまばらで20代~50代、全員が一様に疲弊しきった顔をしていた。
その内の1人、50代くらいの男がボクのことを凝視する。
痩せこけた顔に無精髭、作業着を着ているがなんとなくガタイが良く、目はギラギラと光り、鋭かった。
その男が話しかけてくる。
「おい。お前誰だ。どこから来た?」
その声に反応するようにほかの4人もつられてボクのことを凝視し始める。
空気が張り詰める。
明らかに警戒している。
当たり前だ。
この状況で見知らぬ人間が現れれば、誰だって敵か味方かなんて判断はできない。
ボクだって怖い。
特にあの50代の男の目は厳しく、目つきだけで人を殺せそうな威圧感がある。
ボクはたじろぐ。
だけど、このまま警戒されたままではいけない、と笑顔を作った。
『あ、あの…ボク、怪しい者じゃなくて…えっと、その……』
言葉が続かない。
何を言えばいいのだろう。
今の状況だって混乱している。
その上、さきほど彼を…優くんを失ったばかりなのだ。
自分自身落ち着いて話すだけで精一杯だった。
すると、目つきの鋭い男がすっくと立ちあがり近づいてきた。
「ねえちゃん、その服、入院患者か何かか?」
5人の視線が突き刺さる。
特に目の前に立ち尽くすこの男の人はボクの頭のてっぺんからつま先まで値踏みするかのように見ている。
きっと信用していないんだろうなぁ…
そんな緊迫した空気を風船を割るように割り込んできた背中からの声。
「沙羅!沙羅じゃないか!」
聞き覚えのある声と共に後ろとからぎゅっと抱きしめられ、思考が停止する。
背後から腕を回され、ぎゅっと強く抱きしめられた。
一瞬、亡霊かとも思ったが、温かく、人間の体温だ。
その瞬間、いろいろと我慢してきたものがこみ上げてきた。
ボクの目から涙がぶわっと溢れ出してきてしまった。
堪えようとしてみたが無駄だった。
ボロボロと涙が頬を伝ってとめどなく落ちてくる。
怒りや安堵、恐怖や愛しさなどが全部いっぺんに押し寄せてきて大洪水のように感情の処理が追い付かない。
『な、なんで…なんでここに…いるの…?』
声が裏返る。
鼻声でぐしゃぐしゃの顔。
さっきまでの作り笑顔が台無しですでに顔面は崩壊している。
『ボクを置いてったくせに…』
『大好きって言って、キスまでしてくれたのに…』
『ボクをエレベーターに押し込んで……優くん死ぬ気だったでしょ!』
最後の方はもはや叫びに近かった。
抱きしめられたまま、首だけ後ろに回して優くんの顔を見上げる。
あぁ…あの顔だ。落ち着くなぁ。
涙で滲んだ視界に彼の顔が映る。
汗だくで手首に擦り傷があった。
無茶、したんだろうなぁ。
生きててくれてよかったぁ。
そんな風に安心した。
そんなやり取りをまじまじと見つめる男。
少し警戒が緩んだようにも見えた。
「お前…」
何かを言おうとしたそのとき、休憩室の外から音が聞こえた。
ヒタヒタと歩く音と聞き覚えのある、あのいや~な呻き声。
ヤツらだ。
ドアを開け、これだけ大きな声で話していたからか、ヤツらに気づかれてしまったようだ。
『ねぇ…外に…何かきてる…』
「おじさん!他に出口、ありませんか!?」
男は腕を組んで考える。
その腕は太くたくましく、血管が浮き出ていた。
優くんの質問を咀嚼するように一拍置いてから、顎で部屋の奥を示す。
「ある。奥に搬入用の裏口がな。普段は施錠されてるが、鍵はあるから開けられるぜ」
キラリと鍵をポケットから出し、ちらりと見せた。
男は親指で奥の扉を指す。
そこには鉄製の重い扉があった。
業務用の大型機材を搬入するためのものだろう。
「だが、な。」
男が声を低くして言う。
部屋にいた他の4人がびくっと肩を震わす。
この男がこの集団のリーダー格なのは明白だった。
「外も同じだぞ?むしろ地上の方がここより’’感染者’’が蠢いていやがる」
「それでも…いくか?」
答えは明白だった。
もう引き返すことはできない。
それに…優くんが戻ってきてくれた。
それだけでボクの心は温かい。
『少しでも生き残れる可能性があるなら、奥に進もう!』
勇気を振り絞って、先へ進もう
彼と一緒ならきっと…どこへだっていけるから。
扉を開けるや、一斉に視線がボクに集中して少したじろぐ。
そこが業務用の休憩室で、蛍光灯が一本だけついており、ジジジッと不快な音を立て、煌々と光を放っていた。
パイプ椅子が6脚とテーブルが1つ、壁際に5人の人間が固まっていた。
男が3人と女が2人、年齢はまばらで20代~50代、全員が一様に疲弊しきった顔をしていた。
その内の1人、50代くらいの男がボクのことを凝視する。
痩せこけた顔に無精髭、作業着を着ているがなんとなくガタイが良く、目はギラギラと光り、鋭かった。
その男が話しかけてくる。
「おい。お前誰だ。どこから来た?」
その声に反応するようにほかの4人もつられてボクのことを凝視し始める。
空気が張り詰める。
明らかに警戒している。
当たり前だ。
この状況で見知らぬ人間が現れれば、誰だって敵か味方かなんて判断はできない。
ボクだって怖い。
特にあの50代の男の目は厳しく、目つきだけで人を殺せそうな威圧感がある。
ボクはたじろぐ。
だけど、このまま警戒されたままではいけない、と笑顔を作った。
『あ、あの…ボク、怪しい者じゃなくて…えっと、その……』
言葉が続かない。
何を言えばいいのだろう。
今の状況だって混乱している。
その上、さきほど彼を…優くんを失ったばかりなのだ。
自分自身落ち着いて話すだけで精一杯だった。
すると、目つきの鋭い男がすっくと立ちあがり近づいてきた。
「ねえちゃん、その服、入院患者か何かか?」
5人の視線が突き刺さる。
特に目の前に立ち尽くすこの男の人はボクの頭のてっぺんからつま先まで値踏みするかのように見ている。
きっと信用していないんだろうなぁ…
そんな緊迫した空気を風船を割るように割り込んできた背中からの声。
「沙羅!沙羅じゃないか!」
聞き覚えのある声と共に後ろとからぎゅっと抱きしめられ、思考が停止する。
背後から腕を回され、ぎゅっと強く抱きしめられた。
一瞬、亡霊かとも思ったが、温かく、人間の体温だ。
その瞬間、いろいろと我慢してきたものがこみ上げてきた。
ボクの目から涙がぶわっと溢れ出してきてしまった。
堪えようとしてみたが無駄だった。
ボロボロと涙が頬を伝ってとめどなく落ちてくる。
怒りや安堵、恐怖や愛しさなどが全部いっぺんに押し寄せてきて大洪水のように感情の処理が追い付かない。
『な、なんで…なんでここに…いるの…?』
声が裏返る。
鼻声でぐしゃぐしゃの顔。
さっきまでの作り笑顔が台無しですでに顔面は崩壊している。
『ボクを置いてったくせに…』
『大好きって言って、キスまでしてくれたのに…』
『ボクをエレベーターに押し込んで……優くん死ぬ気だったでしょ!』
最後の方はもはや叫びに近かった。
抱きしめられたまま、首だけ後ろに回して優くんの顔を見上げる。
あぁ…あの顔だ。落ち着くなぁ。
涙で滲んだ視界に彼の顔が映る。
汗だくで手首に擦り傷があった。
無茶、したんだろうなぁ。
生きててくれてよかったぁ。
そんな風に安心した。
そんなやり取りをまじまじと見つめる男。
少し警戒が緩んだようにも見えた。
「お前…」
何かを言おうとしたそのとき、休憩室の外から音が聞こえた。
ヒタヒタと歩く音と聞き覚えのある、あのいや~な呻き声。
ヤツらだ。
ドアを開け、これだけ大きな声で話していたからか、ヤツらに気づかれてしまったようだ。
『ねぇ…外に…何かきてる…』
「おじさん!他に出口、ありませんか!?」
男は腕を組んで考える。
その腕は太くたくましく、血管が浮き出ていた。
優くんの質問を咀嚼するように一拍置いてから、顎で部屋の奥を示す。
「ある。奥に搬入用の裏口がな。普段は施錠されてるが、鍵はあるから開けられるぜ」
キラリと鍵をポケットから出し、ちらりと見せた。
男は親指で奥の扉を指す。
そこには鉄製の重い扉があった。
業務用の大型機材を搬入するためのものだろう。
「だが、な。」
男が声を低くして言う。
部屋にいた他の4人がびくっと肩を震わす。
この男がこの集団のリーダー格なのは明白だった。
「外も同じだぞ?むしろ地上の方がここより’’感染者’’が蠢いていやがる」
「それでも…いくか?」
答えは明白だった。
もう引き返すことはできない。
それに…優くんが戻ってきてくれた。
それだけでボクの心は温かい。
『少しでも生き残れる可能性があるなら、奥に進もう!』
勇気を振り絞って、先へ進もう
彼と一緒ならきっと…どこへだっていけるから。



