せっかく綺麗な夕暮れを優くんと堪能していたっていうのに、なんだか廊下の方が騒がしかった。
検査結果を伝えに来るには早いし、かといってこんな夕暮れ時に病人がわーっと増えてくるとも考えづらい。
『なんか騒がしいね?』
『何かあったのかな?』
「変な声も聞こえるし、見に行ってみようか」
そう言って、優くんと一緒に立ち上がる。
まだ夕暮れの光で電灯をつけなくても明るい病室。
ベッドからよっこいしょっと起き上がると、彼の隣に立ち、一緒に廊下の方に向かう。
もう少しで廊下、というところで彼がボクの手を引き、扉の横にある仕切りカーテンに身を潜ませる。
彼の方が一歩先を歩いていたから、何か見たのだろうか?
『(優くん、何か見えたの?)』
「(しー!ちょっと危険、かも)」
彼の顔は真剣だった。
決して冗談を言っているような顔ではない。
彼の言うように鳴りを潜め、ジッとする。
すると……
〔ああああーー〕
〔うーーーうーーー〕
聞きなれない、恐ろしい声が響いてきた。
明らかに人間の声ではない。
怖かった。
怖くて声が出そうになったので自分で口を押え、必死に耐えた。
しばらく、ヒタヒタっという音と共にその「人ならざる者」の卑屈な叫び声が鳴り響いていたけれど、
その内、遠ざかっていった。
涙が出ていた。
直接姿を見たわけでもない。
なのに、とても怖かった。
今のはなに?
なんだったの?
『ゆ、ゆうくん、今の…なに?』
『ボク、怖い…』
「俺も…わからない」
「だけど、見つかっちゃいけない気がして…」
「沙羅、だいじょうぶ、もう通り過ぎて行ったから」
そう言ってぎゅっと抱きしめてくれた。
きっとボクが震えているのがわかったのだろう。
優しいなぁゆうくんは。
今はただただ怖くて、ぎゅっとされて心が温かくなった。
恐怖心が少しずつ薄れてきた。
優くんに感謝しなきゃ。
少し落ち着いたところで、物音ひとつしないのを確認し、廊下に出てみた。
そこにはそこらじゅうに飛び散る血の跡と患者「だった」人たちの亡骸、飛散した肉片だった。
『ひぃっ……』
『なに…これ…』
「これは…ひどい」
『ど、どうしてこんな…ひどすぎる……』
それは言葉にならないくらい悲惨な惨状だった。
彼も今にも吐きそうな顔をしていたが、ボクに気を使って我慢をしているように見えた。
そしてそっと彼の手が私の顔を覆う。
「見ちゃ、だめ」
『ん…わかっ…た』
彼なりの優しさだろう。
それから、ボクの手を引き、彼が先頭になって先に進んでくれた。
ぎゅっと目を瞑って彼の手だけを頼りに歩いていく。
しばらく進んでいくと先ほどのあの嫌な声が遠くの方で聞こえた。
『ゆ、ゆうくん、いまの』
「わかってる」
「エレベーターで上に向かおう」
『えっ 上?下じゃなくて?』
「下にもあいつらがいたらどうする?」
「ドアが開いた瞬間襲われたらひとたまりもない」
『そ、そうだね。上にいこっか』
エレベーターの上ボタンを押す。
来るまでの時間がじれったい。
とてもそわそわする。
決してトイレとかではない。
やつらに見つからないか心配で仕方ないのだ。
チーン
という音と共にエレベーターが開く。
やっと来た。
ホッと一息。
だけど、次の瞬間、それは恐怖にかわる。
エレベーターの到着音でやつらに見つかってしまったのだ。
急いで中に入り、ボタンを押す。押しまくる。
押しまくっても意味はないと知っていても押したくなる。
カチカチカチ
『ゆうくん!きちゃった!きちゃったよ!』
「わかってる…!」
「わかってる…けどっ!」
『はやくしまってぇぇぇぇ!!』
あとすんでの差で扉はしまった。
彼と一緒にホッとし、生きた心地がした。
ずっと水の中に潜っていてやっと息ができた感覚だった。
はぁはぁと2人して息を切らしてはいたが、ホッとしたからか、笑いだした。
ボクは自然と優くんの手を握りしめていた。
検査結果を伝えに来るには早いし、かといってこんな夕暮れ時に病人がわーっと増えてくるとも考えづらい。
『なんか騒がしいね?』
『何かあったのかな?』
「変な声も聞こえるし、見に行ってみようか」
そう言って、優くんと一緒に立ち上がる。
まだ夕暮れの光で電灯をつけなくても明るい病室。
ベッドからよっこいしょっと起き上がると、彼の隣に立ち、一緒に廊下の方に向かう。
もう少しで廊下、というところで彼がボクの手を引き、扉の横にある仕切りカーテンに身を潜ませる。
彼の方が一歩先を歩いていたから、何か見たのだろうか?
『(優くん、何か見えたの?)』
「(しー!ちょっと危険、かも)」
彼の顔は真剣だった。
決して冗談を言っているような顔ではない。
彼の言うように鳴りを潜め、ジッとする。
すると……
〔ああああーー〕
〔うーーーうーーー〕
聞きなれない、恐ろしい声が響いてきた。
明らかに人間の声ではない。
怖かった。
怖くて声が出そうになったので自分で口を押え、必死に耐えた。
しばらく、ヒタヒタっという音と共にその「人ならざる者」の卑屈な叫び声が鳴り響いていたけれど、
その内、遠ざかっていった。
涙が出ていた。
直接姿を見たわけでもない。
なのに、とても怖かった。
今のはなに?
なんだったの?
『ゆ、ゆうくん、今の…なに?』
『ボク、怖い…』
「俺も…わからない」
「だけど、見つかっちゃいけない気がして…」
「沙羅、だいじょうぶ、もう通り過ぎて行ったから」
そう言ってぎゅっと抱きしめてくれた。
きっとボクが震えているのがわかったのだろう。
優しいなぁゆうくんは。
今はただただ怖くて、ぎゅっとされて心が温かくなった。
恐怖心が少しずつ薄れてきた。
優くんに感謝しなきゃ。
少し落ち着いたところで、物音ひとつしないのを確認し、廊下に出てみた。
そこにはそこらじゅうに飛び散る血の跡と患者「だった」人たちの亡骸、飛散した肉片だった。
『ひぃっ……』
『なに…これ…』
「これは…ひどい」
『ど、どうしてこんな…ひどすぎる……』
それは言葉にならないくらい悲惨な惨状だった。
彼も今にも吐きそうな顔をしていたが、ボクに気を使って我慢をしているように見えた。
そしてそっと彼の手が私の顔を覆う。
「見ちゃ、だめ」
『ん…わかっ…た』
彼なりの優しさだろう。
それから、ボクの手を引き、彼が先頭になって先に進んでくれた。
ぎゅっと目を瞑って彼の手だけを頼りに歩いていく。
しばらく進んでいくと先ほどのあの嫌な声が遠くの方で聞こえた。
『ゆ、ゆうくん、いまの』
「わかってる」
「エレベーターで上に向かおう」
『えっ 上?下じゃなくて?』
「下にもあいつらがいたらどうする?」
「ドアが開いた瞬間襲われたらひとたまりもない」
『そ、そうだね。上にいこっか』
エレベーターの上ボタンを押す。
来るまでの時間がじれったい。
とてもそわそわする。
決してトイレとかではない。
やつらに見つからないか心配で仕方ないのだ。
チーン
という音と共にエレベーターが開く。
やっと来た。
ホッと一息。
だけど、次の瞬間、それは恐怖にかわる。
エレベーターの到着音でやつらに見つかってしまったのだ。
急いで中に入り、ボタンを押す。押しまくる。
押しまくっても意味はないと知っていても押したくなる。
カチカチカチ
『ゆうくん!きちゃった!きちゃったよ!』
「わかってる…!」
「わかってる…けどっ!」
『はやくしまってぇぇぇぇ!!』
あとすんでの差で扉はしまった。
彼と一緒にホッとし、生きた心地がした。
ずっと水の中に潜っていてやっと息ができた感覚だった。
はぁはぁと2人して息を切らしてはいたが、ホッとしたからか、笑いだした。
ボクは自然と優くんの手を握りしめていた。



