闇から出た光

ボクは気づくと優くんにお姫様抱っこされていた。

『ひゃっ!?』

お姫様抱っこされた瞬間、私は思考が追いつかなかった。
突然のことだったので変な声まで出てしまった。
とても…恥ずかしい。
たとえ誰にもみられていないとしても恥ずかしい。
こんな状況でもなければ、きっと最高に嬉しいんだろう。
いつもはボクの方が彼を引っ張ってあげているという立場のはずなのに、
時々、優くんは男らしくなったりする。
そんな姿を見せられたらドキドキとしてしまう。
『優くん、いいなぁ』
『やっぱり好きだなぁ』
そんな風に思ってしまう。
物思いに耽っていると、また彼が恥ずかしいことを言ってくる。

「それに…こうしてた方が君の顔、よく見えるし」

ダメダメ!それは反則!
こっちが優くんの顔、見れなくなっちゃう。

そんな風にボク一人、抱っこされながら暴れていると優くんが急に立ち止まる。

『ど、どうしたの?』
「ここ…だね」

優くんの顔が向いている方向にボクも向き直って見ると、そこには解錠された鎖が地面に落ち、
解放された地上へのエレベーターが立ち塞がっていた。
見るからに古そうで、今も動くのかも怪しい。
扉が解放されていることから、先に行った人たちはどうやらこれに乗って地上に向かったと思われる。

『とても…古そうだね。』
『動いてくれる…かな?』
「動かすしかないだろうね」

そう言って優くんはひとまずボクを下ろし、機械をいじり始めた。
業務用エレベーターといっても原理は普通のエレベーターとあまり大差はない。
少しけたたましいエンジン音と共に地上からエレベーターがスーーっと降りてきた。

『わー!やったね。動いた動いた!』

その時、遠くでガシャーーンと音がした。
あのゾンビたちがバリケードを壊してきたのだろう。

「沙羅!早く行こう」
『う、うん!そうだね』

急いでエレベーターに乗り込むと上ボタンを押す。
再度けたたましい轟音と共にエレベーターが動き出した。
その音に釣られるように、ゾンビたちがこちらに向かってきたが、寸でのところでエレベーターは出発することができた。
上空から見上げるとこのフロア一帯にゾンビたちが溢れていて、とても怖かった。
あそこで逃げていなければ
あそこでバリケードを張っていなければ
優くんがお姫様抱っこをしてくれていなければ…
今までの行動一つ一つのどれか一つでも欠けていたらどうなっていただろう?
そう考えると顔が真っ白になった。
優くんが一緒にいてくれて本当に良かったな、と改めて思った。
だからボクは言った

『優くん、ありがとうね』

感謝の言葉を伝えた。
ボク一人ではきっと生き延びることはできなかっただろうから…