後ろの扉を急いで閉じると気休めのバリケードを椅子を使って築きあげ、退路を塞ぐとあとは先に進むのみ。
新参者の俺たちは遠慮し、先住民に先を譲り、少しでも突破される時間を稼ごうと積み上げられるものはなんでも積み上げた。
「沙羅は座ってて?」
俺は彼女の身体を心配していた。
いくら完治したからといって沙羅の身体はまだ本調子ではない。
それに…彼女に無理をさせたくないという気持ちもある。
病気になる前の彼女は活発で体力もあり、きっと力もあっただろう。
だけど今の彼女は病み上がりだ。
大病を発症後は運動なんてできなかったし、退院してからも少し内向的になってしまっていた。
彼女が身体を動かしている姿、好きだったんだけどなぁ…と思いつつ、
すべては病気のせいなのだから仕方なかったと思っている。
きっと彼女だって本当は今も動き回りたいと思っているに違いない。
俺だって今まで好きだったことをいきなりやめろと言われると悲しくなる。
彼女だってそう思うのは必然だと思う。
と、そんな風に考えながら彼女を労いつつ、簡単なバリケードを築き上げていく。
少しの時間だけでいい。
時間稼ぎが出来ればそれでいいのだ。
ある程度、椅子や机を絡ませて作ったバリケードを見て、「よし!」となったところで
沙羅の手を引き、この部屋を後にする。
「沙羅、ここはもう危険だ。行こう!」
部屋を出るときに背後でドンドンっとバリケードを押しのけようとする音が聞こえたが、
気にせず前進した。
「沙羅、大丈夫?」
彼女は心なしか、疲弊しているような顔をしていた。
心配で声をかけてみた。
『ボクはだいじょうぶだよ!』
『それに…先に進まないと追いつかれちゃうし!』
こんな危機的状況だ。
この異常事態に冷静でいられるわけがない。
疲弊だってするだろう。
こんなときに何もできない自分がとてももどかしかった。
せめて彼女のために…
そう思うと、声よりも先に身体が動いていた。
彼女の身体をヒョイっと抱きかかえたのだ。
世間一般的にいう「お姫様抱っこ」というやつだ。
俺にできることと言えば、彼女を「物理的に」支えること。
『ひゃっ!?』
彼女はいきなりのことに驚きを隠せないといった様子。
変な声が口から飛び出してきていた。
そんなことはお構いなしに彼女を抱えたまま、先ほどの年配の男に言われた脱出口に向けて駆け抜けていった。
『ちょ、ちょっと!恥ずかしいよ!?』
そんな彼女の切実な願いも聞こえないフリをしながら、目的地を目指す。
彼女の方も恥ずかしそうにはするものの、まんざらではないといった感じでその内、抵抗もしなくなっていた。
彼女は思っていたよりもはるかに軽く、華奢だった。
昔はもっとこう、ガッチリ体型で半袖短パンスタイルが常だったのでぱっと見、男の子だと見間違うほどだったのに、と懐かしむ。
『聞いてるの!? は、恥ずかしいんだけどっ』
『そろそろ…降ろしてくれない?』
「でも、今降ろしたら沙羅、1人で走れないでしょ?」
「それに…こうしてた方が君の顔、よく見えるし」
そう笑って冗談を言ってみる。
彼女の顔がみるみるとトマトのように真っ赤になるのを満足そうに眺めながら、先を急ぐ。
""感染者''と呼ばれたヤツらから逃げ延びなければならないこの緊迫した状況の中で、
この「お姫様抱っこ」だけはちょっとしたご褒美かもしれないな、と心の中でふと思った。
新参者の俺たちは遠慮し、先住民に先を譲り、少しでも突破される時間を稼ごうと積み上げられるものはなんでも積み上げた。
「沙羅は座ってて?」
俺は彼女の身体を心配していた。
いくら完治したからといって沙羅の身体はまだ本調子ではない。
それに…彼女に無理をさせたくないという気持ちもある。
病気になる前の彼女は活発で体力もあり、きっと力もあっただろう。
だけど今の彼女は病み上がりだ。
大病を発症後は運動なんてできなかったし、退院してからも少し内向的になってしまっていた。
彼女が身体を動かしている姿、好きだったんだけどなぁ…と思いつつ、
すべては病気のせいなのだから仕方なかったと思っている。
きっと彼女だって本当は今も動き回りたいと思っているに違いない。
俺だって今まで好きだったことをいきなりやめろと言われると悲しくなる。
彼女だってそう思うのは必然だと思う。
と、そんな風に考えながら彼女を労いつつ、簡単なバリケードを築き上げていく。
少しの時間だけでいい。
時間稼ぎが出来ればそれでいいのだ。
ある程度、椅子や机を絡ませて作ったバリケードを見て、「よし!」となったところで
沙羅の手を引き、この部屋を後にする。
「沙羅、ここはもう危険だ。行こう!」
部屋を出るときに背後でドンドンっとバリケードを押しのけようとする音が聞こえたが、
気にせず前進した。
「沙羅、大丈夫?」
彼女は心なしか、疲弊しているような顔をしていた。
心配で声をかけてみた。
『ボクはだいじょうぶだよ!』
『それに…先に進まないと追いつかれちゃうし!』
こんな危機的状況だ。
この異常事態に冷静でいられるわけがない。
疲弊だってするだろう。
こんなときに何もできない自分がとてももどかしかった。
せめて彼女のために…
そう思うと、声よりも先に身体が動いていた。
彼女の身体をヒョイっと抱きかかえたのだ。
世間一般的にいう「お姫様抱っこ」というやつだ。
俺にできることと言えば、彼女を「物理的に」支えること。
『ひゃっ!?』
彼女はいきなりのことに驚きを隠せないといった様子。
変な声が口から飛び出してきていた。
そんなことはお構いなしに彼女を抱えたまま、先ほどの年配の男に言われた脱出口に向けて駆け抜けていった。
『ちょ、ちょっと!恥ずかしいよ!?』
そんな彼女の切実な願いも聞こえないフリをしながら、目的地を目指す。
彼女の方も恥ずかしそうにはするものの、まんざらではないといった感じでその内、抵抗もしなくなっていた。
彼女は思っていたよりもはるかに軽く、華奢だった。
昔はもっとこう、ガッチリ体型で半袖短パンスタイルが常だったのでぱっと見、男の子だと見間違うほどだったのに、と懐かしむ。
『聞いてるの!? は、恥ずかしいんだけどっ』
『そろそろ…降ろしてくれない?』
「でも、今降ろしたら沙羅、1人で走れないでしょ?」
「それに…こうしてた方が君の顔、よく見えるし」
そう笑って冗談を言ってみる。
彼女の顔がみるみるとトマトのように真っ赤になるのを満足そうに眺めながら、先を急ぐ。
""感染者''と呼ばれたヤツらから逃げ延びなければならないこの緊迫した状況の中で、
この「お姫様抱っこ」だけはちょっとしたご褒美かもしれないな、と心の中でふと思った。



