「日焼け絶許部」に入部を許された僕は、まさに天にも昇る気分だった。
部活動名を耳にした瞬間から「入りたい!」と直感的に思った部活に、まさか本当に入れるなんて!
これでまた一歩、僕の理想に近づく。
「あ、そうだ、さっちゃんに報告しないと」
ガタンゴトンと帰りの電車に揺られている最中に、ようやくはっと気がついた。
しかしこればかりはメッセージや電話ですませたくなかったので、僕はこのままさっちゃんちに押しかけることにした。
通学に二時間以上かかるので、さっちゃんちに着くころには、夏が近づき長くなりかけていた日もさすがに落ちかけていた。
橙と墨色が混ざったような暗い空の下、合鍵を使ってさっちゃんちの玄関ドアを開ける。
佐倉家と佐築家は家族ぐるみで仲がいいので、お互いにお互いの家の合鍵を持っている。
さっちゃんちも我が家と同じ共働き家庭なので、もう少し遅い時間にならないと、さっちゃんたちの両親は帰ってこない。さっちゃんとさっちゃんの二つ下の弟・「りゅーくん」こと竜騎くんは在宅だろうが、チャイムを鳴らして呼び出すより、合鍵を使った方が早かった。
「こんにちはー」
「あ、ささちゃんいらっしゃい」
ドアの開く音を聞きつけてやってきたのは、ラフな格好をしたりゅーくんだった。
さっちゃんとよく似た顔立ちをしながらも、仕草や言動にかわいらしさの残るりゅーくんは、僕のことを「ささちゃん」と大層かわいらしい響きで呼んでくれていた。
今日は特に暑かったからか、お風呂上がりらしいりゅーくんは、アイスバーをかじっていた。綺麗な水色、しゅわっと弾けるソーダ味。
大変おいしそうだったけれど、今重要なのはアイスじゃない。靴からスリッパに履き替え、「さっちゃん、いるよね?」とわかりきっていることを念のため確認すると、りゅーくんはこてんとあどけなく首を傾げた。
「いるけど、今兄貴機嫌悪いよ~? 今行くのはやめとけば? ――てかささちゃんは反対にめっちゃ機嫌よくね?」
「あ、わかる?」
普段との違いに気づいてもらえて、嬉しくなる。うん、とりゅーくんが頷いた。
「顔が明らか輝いてるもん。ペカペカしてる」
そこまで言ってりゅーくんは、「あ、わかった」とアイスの棒を握り締めたまま、ポンと器用に手を叩いた。一人腑に落ちたという顔をしている。
「兄貴の不機嫌の原因、ささちゃんでしょ~? ささちゃんがまた何か兄貴に心配かけてるんでしょ。俺にはわかる」
二つも下の子に、この言われよう。
「りゅーくんひどすぎない? 僕のことなんだと思ってるの?」
僕が軽くむくれてみせると、りゅーくんは無邪気ににこっと笑った。
「え~、大事な幼馴染み」
「え! 嬉しい」
確かにりゅーくんは第二の幼馴染みだし、弟みたいに大事に思っているから、そう言ってもらえるのは率直に嬉しかった。
「まあ正直、兄貴とささちゃんの仲には弟でささちゃんの第二の幼馴染みの俺でも割り込めないけどね~。兄貴とささちゃんって、いわゆる普通の幼馴染み関係とはちょっと違うもん。単に幼馴染みで片付けられる絆の深さじゃないっていうか、依存し合ってるわけじゃないけど、無理に引き離そうとすると、どっちもたちまち死んじゃいそうな感じ」
「そりゃあ、さっちゃんは僕の半分だもの」
「知ってるよぉ。ささちゃんいつもそう言うじゃん。兄貴はあんまそういう表現しないけど」
と、りゅーくんがまた笑う。
「――オイ、うるせぇぞ」
「あ、噂をすれば、さっちゃん」
笑い声を聞きつけたのか、Tシャツ短パン姿のさっちゃんが自室のある二階から、不機嫌そうに下りてきた。……昇降口で「さっちゃんって呼ぶな」と言ってきたときより機嫌悪いな、これ。別に怖くはないけど。
しかしさっちゃんの機嫌の悪さを察したりゅーくんは、触らぬ神に祟りなしとばかりにそそくさと立ち去る。
りゅーくんが退場したので、佐築家の玄関には僕とさっちゃんだけが残された。
「ねぇ、さっちゃん」
「なんだよ」
さっちゃんは、怒っている。昔から全然思い通りにならない幼馴染みの僕に対して。
でもね、さっちゃん。人ってもともと思い通りにならない生き物なんだよ。だからどうか、許してね。
僕は顔の横でピースサインを作り、思いっ切り明るく笑ってみせた。
「僕ね、『日焼け絶許部』に、特別に入部を許されちゃった。イエーイ」
「……………………は?」
思いもよらなかったのだろう僕の言葉に、さっちゃんが目を大きく見開いて固まる。
数十秒、綺麗な彫刻みたいに静止していたさっちゃんは、やがて「絶望した」と言わんばかりの表情を浮かべ、片手で頭を押さえてその場にしゃみこんだ。
ガシガシと乱暴に頭を掻きながら、「おまえそれ、マジで言ってんのか?」と問うてくる。
そこにはどうか嘘だと言ってほしいという響きが込められていたけれど、残念なことにさっちゃんの願いは叶わない。
「うん、大マジ。こんなことで嘘ついてどうすんのさ」
さっちゃんはしばらく頭を抱えて「あー」とか「うー」とか呻いていたが、やがて観念したように深い深い溜息をついた。
「………時々ありえん確率引き当てるおまえならそういう可能性もあるかもって思いつつ、そのまま行かせた俺が悪かったわ」
「そうだよぉ。それなのに、親切に部室教えちゃうんだから救えないよねぇ」
「……おまえ、馬鹿にしてんのかよ」
悪態をつくさっちゃんに、「してないよ」と僕は笑った。さっちゃんと目線を合わせるためにしゃがみこんで、言う。
「だってさっちゃんが、僕の行動に制限かけたくないからって理由で部室を教えてくれたこと、僕ちゃんとわかってるもん」
「…………」
「当たりでしょ?」
息がかかりそうなほどの近距離で、さっちゃんがじろりと僕を睨み上げる。
「……そこまでわかってんなら、俺の気持ちも慮れや。おまえはまた俺をぶっ倒れさせる気かよ」
ああ胃が痛ぇと、さっちゃんが胃をさすった。
「大丈夫だよぉ、さっちゃん。たかが部活に入るだけじゃん。それもぜーんぜん危ない部活じゃない。日焼け対策に勤しむだけの、これ以上なく健全な部活動だよ?」
「他じゃ聞いたこともねぇ、相当珍妙な部活動だけどな」
さっちゃんはもう一度だけ苦悩の息を吐き出し、入部してしまったものはもうしょうがないと思ったのか、今度は至極真面目な顔でアドバイスしてきた。
「いいか? 他のやつらには絶対に日焼け絶許部に入ったって言うなよ。あの部活に入れなかったことを恨みに思ってる女子は、おまえの想像以上に多いんだからな?」
「わかってるって~。おんなじこと、真壁先輩にも言われたし」
別れ際、部長と部員としてメッセージアプリのIDを交換するときに、「部員を増やしたことが知れると面倒だから、黙っておけよ」と、しっかりと釘を刺され済みだ。
僕は学校で大人気の真壁先輩に近づくために日焼け絶許部に来たんじゃないから、もとより言いふらすつもりはなかったけれど、神妙な顔で頷いておいた。
それでもさっちゃんは物言いたげなまなざしを僕に向けてきた。
「……おまえ、脳天気が過ぎる。おまえが思っている以上に人気がある人なんだぞ。そんな人に特別扱いを受けているのがバレると、恨まれるのはおまえだ」
どれだけ過保護なのだろう。さっちゃんの声は、恐怖で微かに震えていた。
「大丈夫だよ~」
僕は笑って安請け合いする。
「僕メンタル強いから。それに人の悪意なんてコントロールできないものの心配してたってしょうがないでしょ。でもま、さっちゃんは特別優しいからね」
それだから、過去の出来事も自分のせいだと思い込んでしまうのだ。馬鹿なさっちゃん。
数秒だけ、中学三年の夏に起きたあの出来事について回想する。
そして過去を消し去るようにぱちりぱちりと瞬きをし、あえてとびきり明るく言う。
「だからさ、心配しないで見ててよ。僕が理想の肌色を手に入れるところ」
すると「理想の肌色」という部分に引っかかったらしいさっちゃんが、「心底意味わかんねー」と顔を歪めた。
「肌の色って、そんなに大事か?」
人生で一度も日焼けというものを気にしたことがないさっちゃんは、僕が色白になりたいという願う意味が本気で理解できないらしく、僕が日焼け対策に目覚めはじめたときから、同じことを言い続けている。
だから僕も、同じ言葉を繰り返す。
「馬鹿だねぇ、さっちゃん。世の中の多くの人がどうして日焼け対策に命かけてると思ってるの。たかが肌、されど肌。時としてそれは、人の印象さえガラリと変えちゃうものなんだよ。そりゃどんな肌色だって一〇〇パーセント素敵に決まってるんだけどね」
「だろう?」
じゃあどんな色してたっていいじゃねぇか、と、さっちゃんが鼻を鳴らす。
「でも、憧れのアイくんに少しでも近づきたいからさ……」
大好きなアイくんを頭に浮かべ、モジモジしながら答えると。
さっちゃんは思い切り僕を小馬鹿にした。
「…………おまえとマジで性格良いで有名な白幡アイとじゃ性格が二〇〇〇パーセント違いすぎるから、肌白くしたところで近づくのは無理っていつも言って……あいたっ!」
「さっちゃん、サイテー!」
人のやる気をくじようなことを言うさっちゃんなんて、チョップだ、チョップ。チョップの刑!
手加減のないチョップは相当痛かったらしく、さっちゃんはしばらくその場にうずくまって悶えていた。
僕のさっちゃんへの部活入部報告は、こうして終わった。
部活動名を耳にした瞬間から「入りたい!」と直感的に思った部活に、まさか本当に入れるなんて!
これでまた一歩、僕の理想に近づく。
「あ、そうだ、さっちゃんに報告しないと」
ガタンゴトンと帰りの電車に揺られている最中に、ようやくはっと気がついた。
しかしこればかりはメッセージや電話ですませたくなかったので、僕はこのままさっちゃんちに押しかけることにした。
通学に二時間以上かかるので、さっちゃんちに着くころには、夏が近づき長くなりかけていた日もさすがに落ちかけていた。
橙と墨色が混ざったような暗い空の下、合鍵を使ってさっちゃんちの玄関ドアを開ける。
佐倉家と佐築家は家族ぐるみで仲がいいので、お互いにお互いの家の合鍵を持っている。
さっちゃんちも我が家と同じ共働き家庭なので、もう少し遅い時間にならないと、さっちゃんたちの両親は帰ってこない。さっちゃんとさっちゃんの二つ下の弟・「りゅーくん」こと竜騎くんは在宅だろうが、チャイムを鳴らして呼び出すより、合鍵を使った方が早かった。
「こんにちはー」
「あ、ささちゃんいらっしゃい」
ドアの開く音を聞きつけてやってきたのは、ラフな格好をしたりゅーくんだった。
さっちゃんとよく似た顔立ちをしながらも、仕草や言動にかわいらしさの残るりゅーくんは、僕のことを「ささちゃん」と大層かわいらしい響きで呼んでくれていた。
今日は特に暑かったからか、お風呂上がりらしいりゅーくんは、アイスバーをかじっていた。綺麗な水色、しゅわっと弾けるソーダ味。
大変おいしそうだったけれど、今重要なのはアイスじゃない。靴からスリッパに履き替え、「さっちゃん、いるよね?」とわかりきっていることを念のため確認すると、りゅーくんはこてんとあどけなく首を傾げた。
「いるけど、今兄貴機嫌悪いよ~? 今行くのはやめとけば? ――てかささちゃんは反対にめっちゃ機嫌よくね?」
「あ、わかる?」
普段との違いに気づいてもらえて、嬉しくなる。うん、とりゅーくんが頷いた。
「顔が明らか輝いてるもん。ペカペカしてる」
そこまで言ってりゅーくんは、「あ、わかった」とアイスの棒を握り締めたまま、ポンと器用に手を叩いた。一人腑に落ちたという顔をしている。
「兄貴の不機嫌の原因、ささちゃんでしょ~? ささちゃんがまた何か兄貴に心配かけてるんでしょ。俺にはわかる」
二つも下の子に、この言われよう。
「りゅーくんひどすぎない? 僕のことなんだと思ってるの?」
僕が軽くむくれてみせると、りゅーくんは無邪気ににこっと笑った。
「え~、大事な幼馴染み」
「え! 嬉しい」
確かにりゅーくんは第二の幼馴染みだし、弟みたいに大事に思っているから、そう言ってもらえるのは率直に嬉しかった。
「まあ正直、兄貴とささちゃんの仲には弟でささちゃんの第二の幼馴染みの俺でも割り込めないけどね~。兄貴とささちゃんって、いわゆる普通の幼馴染み関係とはちょっと違うもん。単に幼馴染みで片付けられる絆の深さじゃないっていうか、依存し合ってるわけじゃないけど、無理に引き離そうとすると、どっちもたちまち死んじゃいそうな感じ」
「そりゃあ、さっちゃんは僕の半分だもの」
「知ってるよぉ。ささちゃんいつもそう言うじゃん。兄貴はあんまそういう表現しないけど」
と、りゅーくんがまた笑う。
「――オイ、うるせぇぞ」
「あ、噂をすれば、さっちゃん」
笑い声を聞きつけたのか、Tシャツ短パン姿のさっちゃんが自室のある二階から、不機嫌そうに下りてきた。……昇降口で「さっちゃんって呼ぶな」と言ってきたときより機嫌悪いな、これ。別に怖くはないけど。
しかしさっちゃんの機嫌の悪さを察したりゅーくんは、触らぬ神に祟りなしとばかりにそそくさと立ち去る。
りゅーくんが退場したので、佐築家の玄関には僕とさっちゃんだけが残された。
「ねぇ、さっちゃん」
「なんだよ」
さっちゃんは、怒っている。昔から全然思い通りにならない幼馴染みの僕に対して。
でもね、さっちゃん。人ってもともと思い通りにならない生き物なんだよ。だからどうか、許してね。
僕は顔の横でピースサインを作り、思いっ切り明るく笑ってみせた。
「僕ね、『日焼け絶許部』に、特別に入部を許されちゃった。イエーイ」
「……………………は?」
思いもよらなかったのだろう僕の言葉に、さっちゃんが目を大きく見開いて固まる。
数十秒、綺麗な彫刻みたいに静止していたさっちゃんは、やがて「絶望した」と言わんばかりの表情を浮かべ、片手で頭を押さえてその場にしゃみこんだ。
ガシガシと乱暴に頭を掻きながら、「おまえそれ、マジで言ってんのか?」と問うてくる。
そこにはどうか嘘だと言ってほしいという響きが込められていたけれど、残念なことにさっちゃんの願いは叶わない。
「うん、大マジ。こんなことで嘘ついてどうすんのさ」
さっちゃんはしばらく頭を抱えて「あー」とか「うー」とか呻いていたが、やがて観念したように深い深い溜息をついた。
「………時々ありえん確率引き当てるおまえならそういう可能性もあるかもって思いつつ、そのまま行かせた俺が悪かったわ」
「そうだよぉ。それなのに、親切に部室教えちゃうんだから救えないよねぇ」
「……おまえ、馬鹿にしてんのかよ」
悪態をつくさっちゃんに、「してないよ」と僕は笑った。さっちゃんと目線を合わせるためにしゃがみこんで、言う。
「だってさっちゃんが、僕の行動に制限かけたくないからって理由で部室を教えてくれたこと、僕ちゃんとわかってるもん」
「…………」
「当たりでしょ?」
息がかかりそうなほどの近距離で、さっちゃんがじろりと僕を睨み上げる。
「……そこまでわかってんなら、俺の気持ちも慮れや。おまえはまた俺をぶっ倒れさせる気かよ」
ああ胃が痛ぇと、さっちゃんが胃をさすった。
「大丈夫だよぉ、さっちゃん。たかが部活に入るだけじゃん。それもぜーんぜん危ない部活じゃない。日焼け対策に勤しむだけの、これ以上なく健全な部活動だよ?」
「他じゃ聞いたこともねぇ、相当珍妙な部活動だけどな」
さっちゃんはもう一度だけ苦悩の息を吐き出し、入部してしまったものはもうしょうがないと思ったのか、今度は至極真面目な顔でアドバイスしてきた。
「いいか? 他のやつらには絶対に日焼け絶許部に入ったって言うなよ。あの部活に入れなかったことを恨みに思ってる女子は、おまえの想像以上に多いんだからな?」
「わかってるって~。おんなじこと、真壁先輩にも言われたし」
別れ際、部長と部員としてメッセージアプリのIDを交換するときに、「部員を増やしたことが知れると面倒だから、黙っておけよ」と、しっかりと釘を刺され済みだ。
僕は学校で大人気の真壁先輩に近づくために日焼け絶許部に来たんじゃないから、もとより言いふらすつもりはなかったけれど、神妙な顔で頷いておいた。
それでもさっちゃんは物言いたげなまなざしを僕に向けてきた。
「……おまえ、脳天気が過ぎる。おまえが思っている以上に人気がある人なんだぞ。そんな人に特別扱いを受けているのがバレると、恨まれるのはおまえだ」
どれだけ過保護なのだろう。さっちゃんの声は、恐怖で微かに震えていた。
「大丈夫だよ~」
僕は笑って安請け合いする。
「僕メンタル強いから。それに人の悪意なんてコントロールできないものの心配してたってしょうがないでしょ。でもま、さっちゃんは特別優しいからね」
それだから、過去の出来事も自分のせいだと思い込んでしまうのだ。馬鹿なさっちゃん。
数秒だけ、中学三年の夏に起きたあの出来事について回想する。
そして過去を消し去るようにぱちりぱちりと瞬きをし、あえてとびきり明るく言う。
「だからさ、心配しないで見ててよ。僕が理想の肌色を手に入れるところ」
すると「理想の肌色」という部分に引っかかったらしいさっちゃんが、「心底意味わかんねー」と顔を歪めた。
「肌の色って、そんなに大事か?」
人生で一度も日焼けというものを気にしたことがないさっちゃんは、僕が色白になりたいという願う意味が本気で理解できないらしく、僕が日焼け対策に目覚めはじめたときから、同じことを言い続けている。
だから僕も、同じ言葉を繰り返す。
「馬鹿だねぇ、さっちゃん。世の中の多くの人がどうして日焼け対策に命かけてると思ってるの。たかが肌、されど肌。時としてそれは、人の印象さえガラリと変えちゃうものなんだよ。そりゃどんな肌色だって一〇〇パーセント素敵に決まってるんだけどね」
「だろう?」
じゃあどんな色してたっていいじゃねぇか、と、さっちゃんが鼻を鳴らす。
「でも、憧れのアイくんに少しでも近づきたいからさ……」
大好きなアイくんを頭に浮かべ、モジモジしながら答えると。
さっちゃんは思い切り僕を小馬鹿にした。
「…………おまえとマジで性格良いで有名な白幡アイとじゃ性格が二〇〇〇パーセント違いすぎるから、肌白くしたところで近づくのは無理っていつも言って……あいたっ!」
「さっちゃん、サイテー!」
人のやる気をくじようなことを言うさっちゃんなんて、チョップだ、チョップ。チョップの刑!
手加減のないチョップは相当痛かったらしく、さっちゃんはしばらくその場にうずくまって悶えていた。
僕のさっちゃんへの部活入部報告は、こうして終わった。
