地獄のテスト期間が終わり、夏休みに入った。楽しい楽しい夏休み。
朝目覚めた瞬間からそわそわいそいそとそのときを待っていた僕は、ピンポーンという玄関チャイムの音が聞こえた瞬間、最高速度で玄関へ飛び出す。
玄関ドアを開けた先には、オシャレなロゴ入りの紙袋を下げた真壁先輩が立っていた。髪型はいつものハーフアップだが、学校外なので着ているものは私服だ。
(き、綺麗めの私服、かっこいい……!)
好きな人の私服を見れるというだけで、どうしてこんなにテンションが上がるんだろう。清らかな朝日をスポットライトのようにして浴びている真壁先輩は、普段以上に眩しく輝いて見えた。
こっそり感動に打ち震えていた僕は、はっと我に返り、とびきりの笑顔を浮かべて歓迎の挨拶をした。
「いらっしゃいませ! 真壁先輩」
「ああ。……お邪魔します」
――真壁先輩と話し合った結果、夏休みの部活は週三回、我が佐倉家で行われることになった。僕としてはいつも通りに学校集合で良かったのだが、「佐倉が通うのが大変すぎるから」と、真壁先輩に強固に反対されてしまった。
僕の両親はどちらも仕事で忙しく、平日の日中は基本家にいない。だから僕の家を会場にすること自体は構わなかったのだが、問題は真壁先輩の交通手段だった。
真壁先輩は学校から徒歩圏内に住んでいるので、僕の家まで来るとなると、今度は先輩が片道二時間以上かけて移動せねばなるまい。
現実的な交通手段は二つ。徒歩+電車。もしくは、誰かに車で送迎してもらうか。
電車だと電車代がかかりすぎるし、毎日でないとはいえ、片道二時間以上かかる距離を送迎してもらうのも難しいだろう。
心配する僕に、真壁先輩は「家族に頼めばいつでも送迎してもらえるから大丈夫だ」と言った。
家族に頼るのはどことなく恥ずかしさもあるのか、ちょっぴり複雑そうな顔をしながら、真壁先輩が解説をする。
「昔色々あった関係で、俺の家族は俺にやけに甘くて。いや甘いって言うか、過保護って言うか……。俺が周囲を弾いてることも、口に出さないだけで本当はすごく心配してるし。……だから俺が部活するために後輩の家に行きたいって言ったら、大喜びで送り迎えしてくれると思う。親父も兄貴も姉貴も免許持ってるから、交代で」
ついでに言うなら元モデルの真壁先輩のお父さんは現在、会社経営をしつつも主夫業をメインにしているため時間の都合がつけやすく、四歳と三歳離れた真壁先輩のお兄さんとお姉さんに至っては現役大学生だから、なおさら時間にゆとりがあるのだという。
三人とも運転するの好きだから、とまでつけ加えられれば、僕も気持ちよく受け入れられた。
華麗なる真壁先輩のご家族にも会ってみたかったが、初日の朝担当のお兄さまはこれから大学とかで、僕が飛び出して行ったときにはすでに姿がなかった。
そのことを少しだけ残念に感じながらも、気を取り直して真壁先輩を家に上げる。
僕が用意していたお客さま用のスリッパに足を通すと、真壁先輩は手に持っていたオシャレな紙袋を控えめに僕に差し出してきた。
「これ、よかったらご家族で食べてくれ」
「わぁ! ありがとうございます!」
中身は有名ブランドのドーナツだった。
日中は僕しかいないので、まったく気を遣わないで下さい、とあらかじめ言っていたのに。
(……それでもこういうふうに気遣ってくれるところも、好きなんだよなぁ)
小さく小さく、けれど着実に好きが積み重なっていく。僕は最終的に先輩のことを、どれだけ愛してしまうのだろう。
恋をすると世界が色づいて見えるというけれど、僕は今それを実感している。キラキラキラキラ、世界は信じられないほど明るく輝いている。
こんな輝かしい日々が、夏が来るなんて、去年の段階では想像もできなかった。
真壁先輩からもらったドーナツと、自分で用意していたポテトチップスなどのジャンクなお菓子、それからガラスコップに入れた麦茶をトレーに置いて持ち、二階端にある自室へと先輩を案内する。
僕の部屋の配置は、ほとんどさっちゃんと一緒だ。互いにはじめて一人部屋をもらったときに、なんだかんだお揃いにしたから。
すなわち窓際にベッドがあり、部屋の中央にラグマットとローテーブル。
ただし僕の部屋にはベッドの真向かいに、祖父母から譲ってもらった小さなテレビが置いてある。僕が日頃アイくんを見るのに使っているテレビ。
折角旧理科室とは違ってテレビがあるので、この日はただお喋りするだけでなく、テレビにゲームを繋いで一緒にプレイしてみたり、『ウェイブズ』の冠番組を見てみたりした。
「真壁先輩って意外とゲームへ……ううん、あんまり上手じゃないんですね」
「……佐倉、そこまで言いかけたんならもうはっきりヘタって言っていいぞ。……ゲームなんか今までろくにしたことなかったからなぁ。俺、こう見えて意外と子どもらしい遊びしたことないんだよ」
「やっぱり先輩とミツルさんってどことなく顔似てますねぇ」
「そうか? 向こうの方がイケメンだと思うが」
などなど。
プライベートな空間に真壁先輩がいることが嬉しすぎて、ついつい口数が多くなってしまったけれど、真壁先輩もよく喋り、そしていつも以上にたくさん笑ってくれたので、きっと真壁先輩も今日という日を楽しんでくれたのだと思う。
夕方になって真壁先輩を迎えに来た、真壁先輩のお父さんも「おや、夏矢。今日はとっても楽しかったみたいだね」と、開口一番そう言ってくれたので、決して自惚れではないだろう。
はじめて見る真壁先輩のお父さん――響矢さんは、モデルというより俳優さんに近い雰囲気の、痺れるほど渋くてかっこいい美中年だった。
見るからに温和そうで、そして真壁先輩のことを心から大切に想っているのだろう、常に優しい眼差しを真壁先輩に向けていた。
「じゃあな、佐倉」
と真壁先輩が改めて別れの挨拶をし、車に乗り込もうとする。
真壁先輩の動きに釣られ、そこではじめて響矢さんの車にちゃんと視線を向けた僕は、「え?」と小さく声を漏らしてしまう。
――響矢さんの運転してきた車の窓にはすべて、黒の遮光カーテンが取りつけられていた。おかげでなかなか物々しい外観になっている。というか車体も黒なので正直かなり怖い。駐車場でかち合っても、絶対に隣には停めたくない雰囲気だ。むしろ全力で避ける。
窓を見て固まっている僕に、響矢さんがからからと明るく笑いながら「これはねぇ、夏矢たっての希望なんだよ。絶対日に焼けたくないからって。徹底してるでしょう」と説明してくれる。
「真壁家の車はみんなこうなんだよ。夏矢の兄姉の車もね。じゃないと夏矢が乗ってくれないから」
「そうなんですか」
そう相槌を打ちながら、僕はそこではじめて、何かがおかしい気がする、と思った。違和感で背筋がぞわりとする。
……日焼け対策と言えば、日焼け止めを塗るとか、日傘を差すとか、アームカバーをつけるとか、サングラスをかけるとか、あるいは日差しの強い窓際の席を避けるとか。
そういった工夫は日常に根づいているし、日焼け対策をうたう雑誌や動画でも必ずと言っていいほど紹介されているから、実践者が多い。身近でその通りに行動している人を見ても、「ああ日焼けしたくないもんね」ですんなり納得して終われる。特に不思議には思わない。
でも車の窓から入ってくる日光までは、気にしない人が多いのではないか。いやたとえ気になったとしても――車の窓一つ一つに遮光カーテンを取りつけるという行動に出る人はごくわずかだろう。
(だって普通、そこまではしなくて良くないって、思っちゃわない……?)
アイくんのように肌の白さを一種の売りにしている芸能人ならわかるけれども、一般人には色んな意味で面倒くさすぎる。
ただでさえ、日焼け対策には根気がいって面倒くさいのに。
(一体どれだけ焼けたくないの……?)
ある種の神経質ささえ感じてしまう。
だが僕の知る限り、真壁先輩は神経質というよりおっとりした性格だ。細かいことはあまり気にしないというか、何が起きても焦らず自分のペースで対処している。
でも、日焼けに関してだけは、少しピリピリしている部分がある気がする。
違和感の正体を必死で探す。精一杯頭を回転させる。
(――ていうか、根本が違うのかも)
はっと思い至る。
(真壁先輩の白くなりたいって想いは、僕とか世間一般のライトな『色が白くなりたい』という気持ちとは少しズレてるのかも……)
真壁先輩のそれは、もう少し切迫している気がした。色白になりたいというより、色白にならなければというような切迫感。
(だけど真壁先輩の行動って、矛盾してもいるんだよね)
だって部室では、いつも豪快に日光を浴びて外を眺めている。
だから気のせいかもとも思うけれど、どうにも引っかかって、その引っかかりが気持ち悪い。
けれどそこで響矢さんと真壁先輩に直接声をかけられたので、僕は思考を中断した。
そしてこの件については一旦綺麗に忘れてしまうことにする。だって手元の情報が少なすぎて、こまま考えてもきっと答えは出ないだろうし。
「佐倉くん、また夏矢と遊んでやってね。こんなに楽しそうにしてる夏矢を見るのは、本当に久し振りだから」
「……親父、うるさい。佐倉、またな」
「はい、真壁先輩!」
にこにこと笑う響矢さんに、真壁先輩がちょっぴりうざったそうに悪態をついて、それから今度こそ、真壁先輩が車に乗り込む。
真壁先輩を乗せた車は、そうして穏やかに去っていった。
朝目覚めた瞬間からそわそわいそいそとそのときを待っていた僕は、ピンポーンという玄関チャイムの音が聞こえた瞬間、最高速度で玄関へ飛び出す。
玄関ドアを開けた先には、オシャレなロゴ入りの紙袋を下げた真壁先輩が立っていた。髪型はいつものハーフアップだが、学校外なので着ているものは私服だ。
(き、綺麗めの私服、かっこいい……!)
好きな人の私服を見れるというだけで、どうしてこんなにテンションが上がるんだろう。清らかな朝日をスポットライトのようにして浴びている真壁先輩は、普段以上に眩しく輝いて見えた。
こっそり感動に打ち震えていた僕は、はっと我に返り、とびきりの笑顔を浮かべて歓迎の挨拶をした。
「いらっしゃいませ! 真壁先輩」
「ああ。……お邪魔します」
――真壁先輩と話し合った結果、夏休みの部活は週三回、我が佐倉家で行われることになった。僕としてはいつも通りに学校集合で良かったのだが、「佐倉が通うのが大変すぎるから」と、真壁先輩に強固に反対されてしまった。
僕の両親はどちらも仕事で忙しく、平日の日中は基本家にいない。だから僕の家を会場にすること自体は構わなかったのだが、問題は真壁先輩の交通手段だった。
真壁先輩は学校から徒歩圏内に住んでいるので、僕の家まで来るとなると、今度は先輩が片道二時間以上かけて移動せねばなるまい。
現実的な交通手段は二つ。徒歩+電車。もしくは、誰かに車で送迎してもらうか。
電車だと電車代がかかりすぎるし、毎日でないとはいえ、片道二時間以上かかる距離を送迎してもらうのも難しいだろう。
心配する僕に、真壁先輩は「家族に頼めばいつでも送迎してもらえるから大丈夫だ」と言った。
家族に頼るのはどことなく恥ずかしさもあるのか、ちょっぴり複雑そうな顔をしながら、真壁先輩が解説をする。
「昔色々あった関係で、俺の家族は俺にやけに甘くて。いや甘いって言うか、過保護って言うか……。俺が周囲を弾いてることも、口に出さないだけで本当はすごく心配してるし。……だから俺が部活するために後輩の家に行きたいって言ったら、大喜びで送り迎えしてくれると思う。親父も兄貴も姉貴も免許持ってるから、交代で」
ついでに言うなら元モデルの真壁先輩のお父さんは現在、会社経営をしつつも主夫業をメインにしているため時間の都合がつけやすく、四歳と三歳離れた真壁先輩のお兄さんとお姉さんに至っては現役大学生だから、なおさら時間にゆとりがあるのだという。
三人とも運転するの好きだから、とまでつけ加えられれば、僕も気持ちよく受け入れられた。
華麗なる真壁先輩のご家族にも会ってみたかったが、初日の朝担当のお兄さまはこれから大学とかで、僕が飛び出して行ったときにはすでに姿がなかった。
そのことを少しだけ残念に感じながらも、気を取り直して真壁先輩を家に上げる。
僕が用意していたお客さま用のスリッパに足を通すと、真壁先輩は手に持っていたオシャレな紙袋を控えめに僕に差し出してきた。
「これ、よかったらご家族で食べてくれ」
「わぁ! ありがとうございます!」
中身は有名ブランドのドーナツだった。
日中は僕しかいないので、まったく気を遣わないで下さい、とあらかじめ言っていたのに。
(……それでもこういうふうに気遣ってくれるところも、好きなんだよなぁ)
小さく小さく、けれど着実に好きが積み重なっていく。僕は最終的に先輩のことを、どれだけ愛してしまうのだろう。
恋をすると世界が色づいて見えるというけれど、僕は今それを実感している。キラキラキラキラ、世界は信じられないほど明るく輝いている。
こんな輝かしい日々が、夏が来るなんて、去年の段階では想像もできなかった。
真壁先輩からもらったドーナツと、自分で用意していたポテトチップスなどのジャンクなお菓子、それからガラスコップに入れた麦茶をトレーに置いて持ち、二階端にある自室へと先輩を案内する。
僕の部屋の配置は、ほとんどさっちゃんと一緒だ。互いにはじめて一人部屋をもらったときに、なんだかんだお揃いにしたから。
すなわち窓際にベッドがあり、部屋の中央にラグマットとローテーブル。
ただし僕の部屋にはベッドの真向かいに、祖父母から譲ってもらった小さなテレビが置いてある。僕が日頃アイくんを見るのに使っているテレビ。
折角旧理科室とは違ってテレビがあるので、この日はただお喋りするだけでなく、テレビにゲームを繋いで一緒にプレイしてみたり、『ウェイブズ』の冠番組を見てみたりした。
「真壁先輩って意外とゲームへ……ううん、あんまり上手じゃないんですね」
「……佐倉、そこまで言いかけたんならもうはっきりヘタって言っていいぞ。……ゲームなんか今までろくにしたことなかったからなぁ。俺、こう見えて意外と子どもらしい遊びしたことないんだよ」
「やっぱり先輩とミツルさんってどことなく顔似てますねぇ」
「そうか? 向こうの方がイケメンだと思うが」
などなど。
プライベートな空間に真壁先輩がいることが嬉しすぎて、ついつい口数が多くなってしまったけれど、真壁先輩もよく喋り、そしていつも以上にたくさん笑ってくれたので、きっと真壁先輩も今日という日を楽しんでくれたのだと思う。
夕方になって真壁先輩を迎えに来た、真壁先輩のお父さんも「おや、夏矢。今日はとっても楽しかったみたいだね」と、開口一番そう言ってくれたので、決して自惚れではないだろう。
はじめて見る真壁先輩のお父さん――響矢さんは、モデルというより俳優さんに近い雰囲気の、痺れるほど渋くてかっこいい美中年だった。
見るからに温和そうで、そして真壁先輩のことを心から大切に想っているのだろう、常に優しい眼差しを真壁先輩に向けていた。
「じゃあな、佐倉」
と真壁先輩が改めて別れの挨拶をし、車に乗り込もうとする。
真壁先輩の動きに釣られ、そこではじめて響矢さんの車にちゃんと視線を向けた僕は、「え?」と小さく声を漏らしてしまう。
――響矢さんの運転してきた車の窓にはすべて、黒の遮光カーテンが取りつけられていた。おかげでなかなか物々しい外観になっている。というか車体も黒なので正直かなり怖い。駐車場でかち合っても、絶対に隣には停めたくない雰囲気だ。むしろ全力で避ける。
窓を見て固まっている僕に、響矢さんがからからと明るく笑いながら「これはねぇ、夏矢たっての希望なんだよ。絶対日に焼けたくないからって。徹底してるでしょう」と説明してくれる。
「真壁家の車はみんなこうなんだよ。夏矢の兄姉の車もね。じゃないと夏矢が乗ってくれないから」
「そうなんですか」
そう相槌を打ちながら、僕はそこではじめて、何かがおかしい気がする、と思った。違和感で背筋がぞわりとする。
……日焼け対策と言えば、日焼け止めを塗るとか、日傘を差すとか、アームカバーをつけるとか、サングラスをかけるとか、あるいは日差しの強い窓際の席を避けるとか。
そういった工夫は日常に根づいているし、日焼け対策をうたう雑誌や動画でも必ずと言っていいほど紹介されているから、実践者が多い。身近でその通りに行動している人を見ても、「ああ日焼けしたくないもんね」ですんなり納得して終われる。特に不思議には思わない。
でも車の窓から入ってくる日光までは、気にしない人が多いのではないか。いやたとえ気になったとしても――車の窓一つ一つに遮光カーテンを取りつけるという行動に出る人はごくわずかだろう。
(だって普通、そこまではしなくて良くないって、思っちゃわない……?)
アイくんのように肌の白さを一種の売りにしている芸能人ならわかるけれども、一般人には色んな意味で面倒くさすぎる。
ただでさえ、日焼け対策には根気がいって面倒くさいのに。
(一体どれだけ焼けたくないの……?)
ある種の神経質ささえ感じてしまう。
だが僕の知る限り、真壁先輩は神経質というよりおっとりした性格だ。細かいことはあまり気にしないというか、何が起きても焦らず自分のペースで対処している。
でも、日焼けに関してだけは、少しピリピリしている部分がある気がする。
違和感の正体を必死で探す。精一杯頭を回転させる。
(――ていうか、根本が違うのかも)
はっと思い至る。
(真壁先輩の白くなりたいって想いは、僕とか世間一般のライトな『色が白くなりたい』という気持ちとは少しズレてるのかも……)
真壁先輩のそれは、もう少し切迫している気がした。色白になりたいというより、色白にならなければというような切迫感。
(だけど真壁先輩の行動って、矛盾してもいるんだよね)
だって部室では、いつも豪快に日光を浴びて外を眺めている。
だから気のせいかもとも思うけれど、どうにも引っかかって、その引っかかりが気持ち悪い。
けれどそこで響矢さんと真壁先輩に直接声をかけられたので、僕は思考を中断した。
そしてこの件については一旦綺麗に忘れてしまうことにする。だって手元の情報が少なすぎて、こまま考えてもきっと答えは出ないだろうし。
「佐倉くん、また夏矢と遊んでやってね。こんなに楽しそうにしてる夏矢を見るのは、本当に久し振りだから」
「……親父、うるさい。佐倉、またな」
「はい、真壁先輩!」
にこにこと笑う響矢さんに、真壁先輩がちょっぴりうざったそうに悪態をついて、それから今度こそ、真壁先輩が車に乗り込む。
真壁先輩を乗せた車は、そうして穏やかに去っていった。
