寝る前。ベッドへ寝転んで、スマホでニュースサイトを見ていた。
殺人や死体遺棄関連のニュースは開かずにいられない。
誰かが死体を掘り起こすんじゃないかと、そればかりが心配だった。
俺はこれからずっとこんな心配をしながら生きなければいけないのか?
それならやっぱり今からでも警察に話した方がいいんじゃないか。
いや、ダメだ。
俺の罪を告白すれば、熊澤のことも説明しないわけにいかない。
やっぱり最初に、通報していればよかったんだ。そうしたら熊澤を巻き込まずに済んだのに……。
後悔の念が頭の中で回り続けた。
血で汚れた熊澤の横顔が脳裏に浮かぶ。
遺体を切断するなんて、普通出来ることじゃない。
……どうして熊澤はそこまでしてくれたのだろうか。
金品目的ではなさそうだった。
――だとしたら、俺を助けるため?
だとしたら、熊澤は”豪くん”なんだろう。
眠りに落ちると、夢を見た。
いつだったか俺は他の子の真似をして、公園の木に登った。
昔から運動は苦手なくせに、どうしてか挑戦してみようと魔が差したのだ。
登るまではよかった。太い枝へ跨って、そこからの見晴らしはなかなか爽快なものだった。
俺だってやればできる。そう思ったのに。
いざ降りようと下を見た途端、怖くなって足がすくんだ。
想像以上に高い。落ちたらきっと大けがをする。
公園には子供たちがいた。
しかし、みんな遊ぶのに夢中で、木の上の俺に気づく子供はいない。
「どうしよう……」
俺は木の幹にしがみついてじっと耐えた。
手を離したら落ちると思った。
一番近くにいるのはいじめっ子たちだ。
大声で叫べば彼らに聞こえるかもしれない。
けれど、そんなことをすれば何と言われるか。
助けてくれないどころか、降りられなくなったことをからかわれるだろう。
「うう……」
なすすべなく俺は木の上でべそをかき始めた。
なんて惨めなんだ。このまま夜になったらどうしよう。
そのとき、声が聞こえた。
「慧人……? 何してるんだ?」
下を見ると、豪がこちらを見上げている。
「降りられないんだよ」
なるべく小さい声でそう伝えた。
彼は少し驚いた顔をしてから、両手を広げた。
「ほら、飛び降りてこい」
「えっ……」
俺は首を左右へ振る。飛び降りるなんて無茶だ。
「大丈夫。俺が受け止めてやるよ」
豪の真っ直ぐな目を見たらそれだけで安心できた。
なんだか勇気が出て、俺は彼の腕へ飛び込んだ。
豪は受け止めきれずに、どすんと後ろへ倒れ込んだ。
ギュッと俺の体を抱いたまま。
想像以上の衝撃に俺は驚いた。豪のことが心配だった。
しかし彼は「大丈夫か?」と笑った。
「うん。豪くんこそ、大丈夫?」
「なんともねぇよ」
逞しい腕で俺の背中を撫でた。
場面は体育館の裏へ切り替わっていた。
制服姿の熊澤が、俺の体を抱きしめている。
子供の頃よりずっと力強い腕に包まれている。
温かくて、心地いい。
「大丈夫だ、俺が守ってやるから」
大人びた声で囁かれ、俺は頭がクラりとした。
熊澤が俺を見つめる目は、あの頃のように優しい。
ああ、そうだ。”豪くん”はいつも俺にだけこういう眼差しを向けたのだ。
夢から覚めると、胸がドキドキしていた。
やっぱり熊澤はあの”豪くん”に違いない。
彼は俺のことを覚えていて、昔のように純粋な気持ちで俺を助けてくれたんだ。
そうだとしたら、俺たちはまた小さい頃のような関係で付き合える。
嬉しくて顔がにやけてしまう。
だけど、本当にそうか? 俺は自分の願望を夢に見ただけなんじゃないか?
熊澤は俺のことを「カイチョー」と呼んだ。つまり俺の名前を知らないのだ。
じゃあどうして助けた? 生徒会長だから? ……そんなわけない。
それにしても、熊澤はずいぶんと手際がよかった。
遺体の処理に慣れている? いや、まさか。
雑木林の存在は俺だって知っていたけれど、あの小屋は道路から見えない。
熊澤はあの廃墟を元々知っていた感じだった。どうしてあんな場所を?
考えれば考えるほど、熊澤のことがわからなくなる。
「近づいてはダメだ。キレると何をするかわからない」
校内で囁かれる熊澤の噂を思い出す。
もしかしたら俺はとんでもない人物と関わってしまったんじゃないか。
殺人や死体遺棄関連のニュースは開かずにいられない。
誰かが死体を掘り起こすんじゃないかと、そればかりが心配だった。
俺はこれからずっとこんな心配をしながら生きなければいけないのか?
それならやっぱり今からでも警察に話した方がいいんじゃないか。
いや、ダメだ。
俺の罪を告白すれば、熊澤のことも説明しないわけにいかない。
やっぱり最初に、通報していればよかったんだ。そうしたら熊澤を巻き込まずに済んだのに……。
後悔の念が頭の中で回り続けた。
血で汚れた熊澤の横顔が脳裏に浮かぶ。
遺体を切断するなんて、普通出来ることじゃない。
……どうして熊澤はそこまでしてくれたのだろうか。
金品目的ではなさそうだった。
――だとしたら、俺を助けるため?
だとしたら、熊澤は”豪くん”なんだろう。
眠りに落ちると、夢を見た。
いつだったか俺は他の子の真似をして、公園の木に登った。
昔から運動は苦手なくせに、どうしてか挑戦してみようと魔が差したのだ。
登るまではよかった。太い枝へ跨って、そこからの見晴らしはなかなか爽快なものだった。
俺だってやればできる。そう思ったのに。
いざ降りようと下を見た途端、怖くなって足がすくんだ。
想像以上に高い。落ちたらきっと大けがをする。
公園には子供たちがいた。
しかし、みんな遊ぶのに夢中で、木の上の俺に気づく子供はいない。
「どうしよう……」
俺は木の幹にしがみついてじっと耐えた。
手を離したら落ちると思った。
一番近くにいるのはいじめっ子たちだ。
大声で叫べば彼らに聞こえるかもしれない。
けれど、そんなことをすれば何と言われるか。
助けてくれないどころか、降りられなくなったことをからかわれるだろう。
「うう……」
なすすべなく俺は木の上でべそをかき始めた。
なんて惨めなんだ。このまま夜になったらどうしよう。
そのとき、声が聞こえた。
「慧人……? 何してるんだ?」
下を見ると、豪がこちらを見上げている。
「降りられないんだよ」
なるべく小さい声でそう伝えた。
彼は少し驚いた顔をしてから、両手を広げた。
「ほら、飛び降りてこい」
「えっ……」
俺は首を左右へ振る。飛び降りるなんて無茶だ。
「大丈夫。俺が受け止めてやるよ」
豪の真っ直ぐな目を見たらそれだけで安心できた。
なんだか勇気が出て、俺は彼の腕へ飛び込んだ。
豪は受け止めきれずに、どすんと後ろへ倒れ込んだ。
ギュッと俺の体を抱いたまま。
想像以上の衝撃に俺は驚いた。豪のことが心配だった。
しかし彼は「大丈夫か?」と笑った。
「うん。豪くんこそ、大丈夫?」
「なんともねぇよ」
逞しい腕で俺の背中を撫でた。
場面は体育館の裏へ切り替わっていた。
制服姿の熊澤が、俺の体を抱きしめている。
子供の頃よりずっと力強い腕に包まれている。
温かくて、心地いい。
「大丈夫だ、俺が守ってやるから」
大人びた声で囁かれ、俺は頭がクラりとした。
熊澤が俺を見つめる目は、あの頃のように優しい。
ああ、そうだ。”豪くん”はいつも俺にだけこういう眼差しを向けたのだ。
夢から覚めると、胸がドキドキしていた。
やっぱり熊澤はあの”豪くん”に違いない。
彼は俺のことを覚えていて、昔のように純粋な気持ちで俺を助けてくれたんだ。
そうだとしたら、俺たちはまた小さい頃のような関係で付き合える。
嬉しくて顔がにやけてしまう。
だけど、本当にそうか? 俺は自分の願望を夢に見ただけなんじゃないか?
熊澤は俺のことを「カイチョー」と呼んだ。つまり俺の名前を知らないのだ。
じゃあどうして助けた? 生徒会長だから? ……そんなわけない。
それにしても、熊澤はずいぶんと手際がよかった。
遺体の処理に慣れている? いや、まさか。
雑木林の存在は俺だって知っていたけれど、あの小屋は道路から見えない。
熊澤はあの廃墟を元々知っていた感じだった。どうしてあんな場所を?
考えれば考えるほど、熊澤のことがわからなくなる。
「近づいてはダメだ。キレると何をするかわからない」
校内で囁かれる熊澤の噂を思い出す。
もしかしたら俺はとんでもない人物と関わってしまったんじゃないか。
