再会した幼なじみが、怖い不良になっていた

 刑事の説明を聞いてもなんだかすっきりしなかった。
 俺は肩を落としてとぼとぼと自宅へ帰った。

 二階の自室で、ひざを抱えて床に座る。
 
 なにが嘘で、なにが本当かわからない。
 熊澤はいつも説明がたりないんだ。

 しばらくそうしているうちに部屋の中が暗くなってきた。

 俺にはもう普段通りに振舞おうという気力すら湧いてこなかった。

 熊澤だけが逮捕されるなんて、どう考えても納得できない。

 不意に、投げ出していたカバンの中を見た。

 奥のほうに見覚えのない封筒がある。
 その中には一枚の便せんが折りたたんで入っていた。

『読んだらすぐ細かくちぎって捨てろ。実はお前は人を殺しちゃいない。俺が遺体を埋めようとしたとき、ピクリと動いたんだ。その場で救急車を呼べば助かっただろう。けれど俺は持っていた包丁で奴の胸を刺して殺したんだ』

 これは事実なのか!?
 
 そういえば、あのとき熊澤の服は血しぶきで汚れていた。

『お前がいてもいなくても俺はずっと岡部を殺そうと思っていた。だからお前はなにも関係ない。俺のことは忘れろ』

 しばらく放心状態だった。
 
 俺は震える手で、手紙をくしゃくしゃに丸めた。

「バカにしやがって……」
 
 ベッドへ思い切り投げつける。

 豪くんは昔のままだと思っていた。
 俺のことを守ってくれる、優しい豪くんのままだと。

 でも、それならどうして俺は、あいつが一人で苦しんでいることに気づけなかったんだ。
 あんなに近くにいたのに。

 熊澤の横顔を思い出す。
 
 彼は、父親のことを話すとき、いつも寂しそうだった。
 形見のバイクも、煙草も、大事にしていた。

 今でも父親を大切に思っている気持ちを、熊澤は素直に俺に打ち明けてくれた。
 
 父親を殺した相手を憎んでいるようには、感じなかった。
 
 岡部のことが話に出たときだって、「どうしようもない野郎」ぐらいにしか言っていない。
 
 だからきっと……。
 嘘だ。
 岡部を殺そうと思っていた、なんて嘘なんだ。

『父親を岡部に殺されたと思っている。だから復讐のために殺した』

 金銭トラブルがあったのは事実なのだろう。
 でもそれを口実に利用しただけだ。
 
 熊澤が俺を守るためについた嘘なんだ。
 ……俺にはわかる。