再会した幼なじみが、怖い不良になっていた

 帰り道の途中、コンビニで休憩した。

 二人で店の前でアメリカンドックを齧る。
 
「バイクっていいな」
 
 こんなふうにどこへでも気軽に旅へ出られるなんて。
 まるで翼を得たようじゃないか。
 
「こうやってあちこち一人で行くのか?」
 
「時々な。古いバイクだし、乗らないとダメんなっちまうから」

 駐車場にバイクが二台入ってきた。
 バイクを降りて二人でなにか話しながら、コンビニに入っていく。
 彼らはツーリング仲間なのだろう。

 俺もバイクに乗れたら、これからもずっと熊澤と一緒にいられるんじゃないか。

 熊澤は俺のことをどう思っているのか知らない。
 けれど俺は、高校を卒業すると同時に彼とお別れというのは寂しいと思ってしまっている。

 俺らは二年生だから、まだ先の話だけど。

 いつだったか、熊澤に進学するのか聞いたことがあるが、「するわけねぇだろ」と笑われてしまった。

 バイト先の店主から高校を出たらそのままうちで働かないかと誘われているのだという。

「小せぇ店だけど、昔からの客に頼りにされてて働き甲斐はあるだろうなって思って。じいさん腰痛めてるしよ」

 熊澤らしいなと思った。

 彼はアメリカンドックを食べ終わっていて、遠くの空を見上げていた。

 すぐ脇に喫煙場所があるのに、煙草を吸おうとしない。
 
「なあ、俺もバイクの免許取ろうかな……」
 
 熊澤が目を丸くした。
 
 急に恥ずかしくなる。

 俺は熊澤と違って運動神経がいいわけじゃないし、バイクのことをなにも知らない。

 そんな俺がバイクに乗りたいと言うなんて、きっと熊澤は呆れたのだろう。

「いや、……俺には無理だよね」
 
 俺はうつむいて口ごもる。

 言わなければよかったと後悔した。

「なんでだよ、乗れるだろ! どんなバイクに乗りたいんだ?」

 熊澤は声を弾ませる。
 
「最初に買うのは中古だろ、探すの手伝ってやるよ」
 
「あはは、まず免許が取れたらの話だけどね」
 
 自分から言い出したくせに、免許が取れる自信はない。
 
「慧人なら取れるに決まってるだろ」
 
 当然のように熊澤はそう言った。
 彼はいつだって俺を信じてくれる。
 
「じゃあバイク買ったら一緒にツーリングしようぜ」

「当然よ。寝袋積んで北海道まで行くか? 九州もいいよな」

 いきなりずいぶんと遠い地名が出て目を見張る。
 でも熊澤、なんか生き生きしてるな、と思って俺はクスリと笑った。

「慣れたら行きたいな。行けるようになるかな」

「なるさ。でもまあ最初のうちは近場がいいよな。桜の時期が最高だ。桜のトンネルをバイクで通ると気持ちいいぜ」
 
 ああ、熊澤は本当にバイクが大好きなんだなと思った。
 
「連れて行ってくれよ」

「ああ、約束だ」
 
 俺たちは小指を絡ませた。
 熊澤の小指は俺よりずっと太い。
 
 そのとき、ポケットの中のスマホが鳴った。

 佐野からのメッセージだ。

『彼女とデート楽しんでるか? なんか今朝からパトカーのサイレンがすごいぞ。事件でもあったのかも』

 昨夜は佐野の家に泊まったことになっている。
 だから、何かあったのかと思って連絡をくれたのだろう。

「どうした?」

 スマホに視線を落としたまま表情を曇らせた俺に、熊澤が声をかけてきた。
 
「佐野からなんだけど、なんかパトカーがすごいらしい」

「パトカー?」

 嫌な胸騒ぎがした。
 俺たちは視線を絡めたまま、数秒の間黙り込んだ。