放課後、生徒会室で作業していると、他の生徒会メンバーが入ってきた。
「新堂会長、花田先生が呼んでいますよ」
花田というのは俺のクラスの担任だ。
「わかった。ありがと」
何の用だろうと思いながら、職員室へ向かった。
「失礼します」
ノックして入る。
すぐに、室内の様子がいつもと違うことに気が付いた。
スーツを着た二人の男が、先生たちと話をしている。
なんだか、ぴりりとした空気がそこにある。
「ああ、新堂くん。ちょっとこっちへ」
花田先生に手招きされ、俺はその集団の近くへ歩み寄った。
「はい……」
スーツの男たちの鋭い視線が俺に集まる。
「彼が生徒会長の新堂です。新堂くん、こちら北川警察署の刑事さんたちだよ」
――刑事。
そう聞いた瞬間、心臓がドクンと脈打った。
嫌な予感がしてならない。
だけど俺の気持ちとは裏腹に、先生たちの表情はにこやかだ。
「この人を知っているかい?」
刑事の一人が写真を見せた。
そこに写るガラの悪い男。岡部宏司だ。
終わったと思った。
今まで聞こえていた吹奏楽部の練習の音が、ぴたりと止む。
早い胸の鼓動が自分の耳の裏から響いてくる。
「こ、この人って……?」
震えず、掠れもせず、普通の声が出たのが奇跡だった。
「特殊詐欺の容疑者として行方を追っている男なんだ」
「と、特殊詐欺……っ!?」
予想しなかった言葉だ。
「この近辺で高校生と一緒にいたという目撃情報があってね。最近起きた詐欺事件と関係があるはずなんだ。近頃は高校生が詐欺事件の加害者として巻き込まれることも多いから」
なんだ、岡部の遺体が見つかったわかじゃないんだ。
内心ほっと安堵する。
背中に汗が流れ落ちた。
「あの、新堂くんは見ての通り、品行方正なとても真面目な生徒ですから。そういうものに関わるような子じゃないですよ」
黙っている俺を見かねて、花田先生が助け舟を出してくれた。
胸がズキンと痛んだ。
俺はその男を知っているどころか、殺したというのに。
先生は俺を疑うことすらしていない。
「見たことないかい?」
刑事がもう一度聞いてきた。
「知らないです」
首をふるふると横へ振る。
刑事たちの眼光はずっと俺の表情を捕らえていた。
「すごい汗だね」
ぽつりと言われて背筋が凍り付いた。
「廊下を走ってきたんです。いや、走っちゃいけないんですけど、急いでて。すみません」
苦し紛れの言い訳だった。
「ふーん。そう」
刑事がかすかに口元を歪ませて頷く。
怖い。少しでも変な言動をすれば、きっとバレる。
相手はプロだ。
そう思うと再び心臓がドクドクと激しく打つ。
「失礼します」
サッカー部のユニホームを着た三年生が入ってきた。
「ああ、林くん。ちょっとこっちへ」
先生に手招きされ、林が不思議そうな顔で近づいてきた。
「新堂くんはもういいよ、ありがとうね」
花田先生が俺の肩をポンっと叩いた。
俺は一刻も早く職員室から出ていきたくて、速足で歩く。
ドアを出る際に振り返ると、刑事の一人が俺をじっと見ていた。
まさか、疑われただろうか。
いや、そんなはずはない。
彼らは岡部が死んでいるとは思っていないのだから。
しかし岡部が刑事に追われていたなんて……。
警察が本気で捜し始めたら、遺体が見つかってしまうのではないか。
熊澤にこのことを伝えたい。
まだ校内にいるだろうか。
正面玄関の二年E組の熊澤の靴箱をそっと開ける。
中には上履きが入っていた。もう帰った後だ。
どうしよう。俺は熊澤の連絡先も知らない。
「新堂会長、花田先生が呼んでいますよ」
花田というのは俺のクラスの担任だ。
「わかった。ありがと」
何の用だろうと思いながら、職員室へ向かった。
「失礼します」
ノックして入る。
すぐに、室内の様子がいつもと違うことに気が付いた。
スーツを着た二人の男が、先生たちと話をしている。
なんだか、ぴりりとした空気がそこにある。
「ああ、新堂くん。ちょっとこっちへ」
花田先生に手招きされ、俺はその集団の近くへ歩み寄った。
「はい……」
スーツの男たちの鋭い視線が俺に集まる。
「彼が生徒会長の新堂です。新堂くん、こちら北川警察署の刑事さんたちだよ」
――刑事。
そう聞いた瞬間、心臓がドクンと脈打った。
嫌な予感がしてならない。
だけど俺の気持ちとは裏腹に、先生たちの表情はにこやかだ。
「この人を知っているかい?」
刑事の一人が写真を見せた。
そこに写るガラの悪い男。岡部宏司だ。
終わったと思った。
今まで聞こえていた吹奏楽部の練習の音が、ぴたりと止む。
早い胸の鼓動が自分の耳の裏から響いてくる。
「こ、この人って……?」
震えず、掠れもせず、普通の声が出たのが奇跡だった。
「特殊詐欺の容疑者として行方を追っている男なんだ」
「と、特殊詐欺……っ!?」
予想しなかった言葉だ。
「この近辺で高校生と一緒にいたという目撃情報があってね。最近起きた詐欺事件と関係があるはずなんだ。近頃は高校生が詐欺事件の加害者として巻き込まれることも多いから」
なんだ、岡部の遺体が見つかったわかじゃないんだ。
内心ほっと安堵する。
背中に汗が流れ落ちた。
「あの、新堂くんは見ての通り、品行方正なとても真面目な生徒ですから。そういうものに関わるような子じゃないですよ」
黙っている俺を見かねて、花田先生が助け舟を出してくれた。
胸がズキンと痛んだ。
俺はその男を知っているどころか、殺したというのに。
先生は俺を疑うことすらしていない。
「見たことないかい?」
刑事がもう一度聞いてきた。
「知らないです」
首をふるふると横へ振る。
刑事たちの眼光はずっと俺の表情を捕らえていた。
「すごい汗だね」
ぽつりと言われて背筋が凍り付いた。
「廊下を走ってきたんです。いや、走っちゃいけないんですけど、急いでて。すみません」
苦し紛れの言い訳だった。
「ふーん。そう」
刑事がかすかに口元を歪ませて頷く。
怖い。少しでも変な言動をすれば、きっとバレる。
相手はプロだ。
そう思うと再び心臓がドクドクと激しく打つ。
「失礼します」
サッカー部のユニホームを着た三年生が入ってきた。
「ああ、林くん。ちょっとこっちへ」
先生に手招きされ、林が不思議そうな顔で近づいてきた。
「新堂くんはもういいよ、ありがとうね」
花田先生が俺の肩をポンっと叩いた。
俺は一刻も早く職員室から出ていきたくて、速足で歩く。
ドアを出る際に振り返ると、刑事の一人が俺をじっと見ていた。
まさか、疑われただろうか。
いや、そんなはずはない。
彼らは岡部が死んでいるとは思っていないのだから。
しかし岡部が刑事に追われていたなんて……。
警察が本気で捜し始めたら、遺体が見つかってしまうのではないか。
熊澤にこのことを伝えたい。
まだ校内にいるだろうか。
正面玄関の二年E組の熊澤の靴箱をそっと開ける。
中には上履きが入っていた。もう帰った後だ。
どうしよう。俺は熊澤の連絡先も知らない。
