死にたがりの君に捧げる10の約束



「人生の設計をしよう」

 
 先生はそう言って、プリント用紙をみんなに配り始めた。

「2016年の調査では日本人の高校生の3人に1人が将来に夢がないと回答した。約33%の割合だ。その後、2024年に行った別の調査ではその割合が41%になっている。自分の将来に対する具体的な目標がなく、したいこと、やりたいことが見つからないままただ大学に行き、そこで何かが見つかるだろうと期待してても結局見つからないまま四年が過ぎ、とりあえず楽なところへの就職を希望するが、やりがいがないから続かない。そんな人生を送る人間がだんだん増えているってことだ」
 
「先生ー。今の話聞いてますます夢がなくなりましたー」
 陽キャ男子のツッコミを聞いてクラスの過半数が笑う。
 
(何が面白いのか分からない)
 
 水瀬伊緒(みなせいお)はニコリともしないまま、前の席から順に送られてきたプリントを受け取った。中身も見ずに、一枚取ってすぐに後ろの席に流す。
 
「死ぬまでにしたいことリストだって。これ結構前に流行ったやつじゃん?」
「何なんすかこれ」
 プリントが後ろに行き渡るにつれて、生徒たちのざわめきが大きくなる。

「みんなの中には、将来の夢なんて言っても漠然としてて、何をするべきかまだはっきりと分からない子もいると思う。だけどみんなは高校生のまま永遠に生きるわけじゃないし、若くいられる時間もそう長くない。死だっていつ訪れるか分からない。だから、そうなる前に絶対にやっておきたいことを今のうちに見つける訓練をしておこう。このリストがみんなの中の核を見つけるきっかけになればいいと先生は思ってる。何でもいい。10個リストを書いて、提出してほしい」

「めんどくさー」

 今度はクラスの大半の生徒が同じ意見だったようで、そこに伊緒も含まれていた。
 
「くだらないことでもいいんですか?」
「まあ、真面目にやってほしいけど何も思いつかなければ身近なことでいいよ」
「提出はいつまでですか?」
「そうだな。今月末までということにしよう」
「先生、もう書けましたー」
「おい! 早過ぎんだろ!」

 なんだかんだ言って楽しそうに筆を走らせる生徒もいれば、じっくり考え込んだり友達と雑談し始める生徒もいる。

 伊緒も一応ペンを握ってみたが、結局プリントを通学リュックに押し込んだ。
 気怠そうに頬杖をつく彼女の耳に、終業を告げるチャイムの音が聞こえてきた。