9月12日 わかれみち

 後夜祭のあと、クラス企画の片付けを終えて写真部の展示室に戻り、壁から作品を外していく。作品を抱え部室の扉を開けると、部長がいた。

「おつかれさまです」
「おつかれ。空いてるところに置いておいて」

 文化祭が終わったら、部長は写真部を引退する。おつかれさまでした、と言おうとしたとき、「聞いた? 感想」と話を振られ曖昧に頷く。

「なにその反応」
「いや、実は思ってたものと違って」
「どういうこと」
「写真に込めた想いが伝わってなかったっていうか」

 部長は机の上に置かれた俺の写真を手に取り「うん」と一言呟いた。

「海人がどんな気持ちでこれを撮ったか、キャプションでも詳しく説明しなかったろ。それじゃわかんないって。逆に言葉で書いてくれたら、すげーいい写真だって思うかもしれない」

 でも、それじゃ――

「『でもそれじゃ、写真だけで勝負してない』とか言うんだろ」

 呑み込んだ言葉を見透かされていて、恥ずかしさに目を伏せる。

「上野みたいな天才って、すごいよな。写真一枚から伝わってくるっていうか、引き込まれるっていうか……。だけど、それ以外にもいい写真ってたくさんあるし。俺は伝わる写真がいい写真だと思ってる。
 例えばこの写真が『自転車で軽く転んだあと見上げた夕焼け』なのか『人生最後の夕焼け』なのかで印象が違ってくるだろ。キャプションだって作品の一部だと思えばいい。ただ……」

 言葉が途切れて、部長のほうに視線を戻す。

「そうやって印象を定めた写真でも、抱く感想は人によって違う。いいと思われない場合もあるし、自分にはなかった視点に気づくこともある。表現するって勇気が要るけど、すげーおもしろい」

 部長は小さく笑ったあと、思い出したように言った。

「そういえばさ、ちゃんと聞いたことなかったけど、海人ってなんでカメラ始めたの」