第五八話
「えっ!? 真田さん、何でおるん!? 大将、下ろされたんやろ!?」
帰る準備を終えた僕らの前に、新見さんがたまたま通り掛かり、真田先輩の姿が目に入ったらしい。
「ってか、その怪我、どうしたん!?」
悔しくて泣き腫らした目をしたままの新見さんが真田先輩に駆け寄ってくる途中で、足首に巻かれた包帯に気付いたらしい。
いつもは、どこか掴めない新見さんが慌てているのを見て、真田先輩が笑う。
「子猫を助けて怪我したんだ」
「えっ!? 大会当日に!? 何してるん! 真田さん、アホなん!?」
そんな忌憚ない言葉で突っ込まれていたが、真田先輩も気にした風もなく、笑って受け流していた。
「っていうか、怪我してんねやったら連絡してや……!」
「恋も神奈川に戻ってきた時、連絡してこなかっただろ? サプライズ返しだ」
真田先輩がそう言うのに、新見さんが「そんなサプライズ、マジでいらんわ」と肩を落としていた。
真田先輩と新見さんの関係は、僕らが思っているより複雑なのかもしれない。
そして、新見さんがキッとこっちを睨みつけてくると、声を張り上げてきた。
「次は絶対、負けんからな! 覚えたで! 弁慶と牛若丸!」
「弁慶でもないし、牛若丸でもないんだけどな」
そうぼそりと呟いた弁木先輩だったけれど、それが新見さんに届いたかどうかはわからなかった。
「インタビュー大変でしたね」
隣に並ぶ弁木先輩に声をかけると、少しだけ困ったように笑う。
「姉さんからも『お疲れ、弁慶!』って来た」
「……お姉さんにも、バレちゃってるんですね」
「しばらく弁慶ネタで揶揄われると思うと厄介だな、とは思う」
「僕も、あの変な顔が拡散されてると思うと、お腹が痛くて……」
「凪は、本当はもっと可愛く笑うのにな」
さらっと落とされた爆弾に目を剥くと、清水先生の「帰るよー!」の声に慌てて歩きだしたのだった。
大会二日目はホテルを取っておらず、勝っても負けても神奈川に帰る予定になっていたため、皆が重い体を引きずるようにして新幹線乗り場を目指していた。
胸の子ウサギたちは揃って華麗なラインダンスをしていたが、僕はまたニタリと笑ってしまいそうになった顔を引き締めるのに苦労していた。
帰りの新幹線でも偶然、隣同士になった僕らは、早々に晩御飯の弁当を食べ終わると、地元に戻ってからファミレスに寄って帰ろうという話になっていた。
「凪に、まだ話したいことがたくさんある」
「僕も、弁木先輩に聞きたいことがたくさんあります」
うとうとと瞼が重くなっていく弁木先輩の様子を見ながら、僕はそっと手に指を絡めたのだった。
今日は竹刀を握りすぎて、握力がなくなっている弁木先輩の指が時折、ひくりと動くのを感じながら、僕も肩に乗った重みに幸せを感じていた。
そして、胸の中でふんわりと膨らんだ子ウサギたちと一緒に、ゆっくりと夢の世界へ旅立ったのだった。
「えっ!? 真田さん、何でおるん!? 大将、下ろされたんやろ!?」
帰る準備を終えた僕らの前に、新見さんがたまたま通り掛かり、真田先輩の姿が目に入ったらしい。
「ってか、その怪我、どうしたん!?」
悔しくて泣き腫らした目をしたままの新見さんが真田先輩に駆け寄ってくる途中で、足首に巻かれた包帯に気付いたらしい。
いつもは、どこか掴めない新見さんが慌てているのを見て、真田先輩が笑う。
「子猫を助けて怪我したんだ」
「えっ!? 大会当日に!? 何してるん! 真田さん、アホなん!?」
そんな忌憚ない言葉で突っ込まれていたが、真田先輩も気にした風もなく、笑って受け流していた。
「っていうか、怪我してんねやったら連絡してや……!」
「恋も神奈川に戻ってきた時、連絡してこなかっただろ? サプライズ返しだ」
真田先輩がそう言うのに、新見さんが「そんなサプライズ、マジでいらんわ」と肩を落としていた。
真田先輩と新見さんの関係は、僕らが思っているより複雑なのかもしれない。
そして、新見さんがキッとこっちを睨みつけてくると、声を張り上げてきた。
「次は絶対、負けんからな! 覚えたで! 弁慶と牛若丸!」
「弁慶でもないし、牛若丸でもないんだけどな」
そうぼそりと呟いた弁木先輩だったけれど、それが新見さんに届いたかどうかはわからなかった。
「インタビュー大変でしたね」
隣に並ぶ弁木先輩に声をかけると、少しだけ困ったように笑う。
「姉さんからも『お疲れ、弁慶!』って来た」
「……お姉さんにも、バレちゃってるんですね」
「しばらく弁慶ネタで揶揄われると思うと厄介だな、とは思う」
「僕も、あの変な顔が拡散されてると思うと、お腹が痛くて……」
「凪は、本当はもっと可愛く笑うのにな」
さらっと落とされた爆弾に目を剥くと、清水先生の「帰るよー!」の声に慌てて歩きだしたのだった。
大会二日目はホテルを取っておらず、勝っても負けても神奈川に帰る予定になっていたため、皆が重い体を引きずるようにして新幹線乗り場を目指していた。
胸の子ウサギたちは揃って華麗なラインダンスをしていたが、僕はまたニタリと笑ってしまいそうになった顔を引き締めるのに苦労していた。
帰りの新幹線でも偶然、隣同士になった僕らは、早々に晩御飯の弁当を食べ終わると、地元に戻ってからファミレスに寄って帰ろうという話になっていた。
「凪に、まだ話したいことがたくさんある」
「僕も、弁木先輩に聞きたいことがたくさんあります」
うとうとと瞼が重くなっていく弁木先輩の様子を見ながら、僕はそっと手に指を絡めたのだった。
今日は竹刀を握りすぎて、握力がなくなっている弁木先輩の指が時折、ひくりと動くのを感じながら、僕も肩に乗った重みに幸せを感じていた。
そして、胸の中でふんわりと膨らんだ子ウサギたちと一緒に、ゆっくりと夢の世界へ旅立ったのだった。
