第五二話
「いいんじゃないか? その考え! よし、切り替えて作戦会議しよう!」
一臣先生がパンッと手を叩くと、佐竹先輩たち四人を集めていく。
僕はというと、真田先輩と二人きりになった。
「真田先輩の言ってることもわかります。でも、佐竹先輩の言うことは尤もだと思います。だって、大将ってそういうものじゃないですか。一番強くて、一番頼りになって、一番皆が憧れる……」
僕は、ぽつりぽつりと想いを言葉にした。
「そうだな。俺が求めていたのも、そんな強い選手だった」
真田先輩は、あっさり頷いた。
「それなら、やっぱり……」
僕が言い淀むと、真田先輩が切り込んできた。
「なら佐竹を大将に据えるとしたら、九条、お前が先鋒になるが大丈夫か?」
「……先鋒は、さすがに、ちょっと、難しいですけど……」
「なら、それ以外のポジションなら、できそうってことなんだな?」
真田先輩の言葉に、僕の指先が、少しずつ冷たくなっていく。
「今回の勝ち抜き戦は、前の選手を倒して勢いに乗った相手と戦うことになる。そのまま相手を乗らせ続けるか、それとも、自分が止めるか。そこで、一番大事になるのは気持ちだ。自分で止める。絶対に勝つ。そういう気持ちが必要になる。ただそこに立てばいいってわけじゃない」
容赦ない言葉に、僕は何も言えなかった。
痛いからと逃げ続けてきた僕に、まだ恐怖に打ち勝つことすらできない僕に、そんなこと――。
「確かに、九条を大将に据えることは、皆が抱いてきた『強い大将』のイメージからは離れることになるだろう。
だが、弱い大将を守るという、あの四人の気持ちを一つにするための象徴になれるんじゃないか、と俺は思うんだ。それに、九条。お前にとってもきっといい経験になる」
「………」
「誰もお前を何もできない奴だとは思ってない。弁木や他の皆と同じく、これから幾らでも伸びる素質はあると俺は思ってる」
「どうして、そんなこと言ってくれるんですか……?」
「九条は、竹刀が当たるのが怖いんだろう?」
「……知ってたんですか!?」
僕がそう言うと、真田先輩が小さく笑った。
「稽古をしていたらわかる。竹刀が当たるよりも、もっと早い段階で、いつも目を閉じていたからな。だからこそ、九条には大将がいいと思ったんだ」
「……どうして、ですか?」
「勝ち抜き戦の巡旗杯の場合、大将が戦うのは一番最後だ。しかも、大将が負ければ、その時点で敗退が決まる。つまり、大将として出れば、相手に勝ち抜かれて何度も連続して戦う必要はない」
「……」
「他のポジションは、勝てば勝つほど次の相手と戦わなきゃならない。でも大将は、自分の番まで待っていられる」
そこで、真田先輩が僕を見る。
「どうだ? 大将も、悪くないと思えてきただろ?」
僕は少し考えてから、小さく頷いた。
「……そうですね……、僕には大将以外、無理そうです」
「いいんじゃないか? その考え! よし、切り替えて作戦会議しよう!」
一臣先生がパンッと手を叩くと、佐竹先輩たち四人を集めていく。
僕はというと、真田先輩と二人きりになった。
「真田先輩の言ってることもわかります。でも、佐竹先輩の言うことは尤もだと思います。だって、大将ってそういうものじゃないですか。一番強くて、一番頼りになって、一番皆が憧れる……」
僕は、ぽつりぽつりと想いを言葉にした。
「そうだな。俺が求めていたのも、そんな強い選手だった」
真田先輩は、あっさり頷いた。
「それなら、やっぱり……」
僕が言い淀むと、真田先輩が切り込んできた。
「なら佐竹を大将に据えるとしたら、九条、お前が先鋒になるが大丈夫か?」
「……先鋒は、さすがに、ちょっと、難しいですけど……」
「なら、それ以外のポジションなら、できそうってことなんだな?」
真田先輩の言葉に、僕の指先が、少しずつ冷たくなっていく。
「今回の勝ち抜き戦は、前の選手を倒して勢いに乗った相手と戦うことになる。そのまま相手を乗らせ続けるか、それとも、自分が止めるか。そこで、一番大事になるのは気持ちだ。自分で止める。絶対に勝つ。そういう気持ちが必要になる。ただそこに立てばいいってわけじゃない」
容赦ない言葉に、僕は何も言えなかった。
痛いからと逃げ続けてきた僕に、まだ恐怖に打ち勝つことすらできない僕に、そんなこと――。
「確かに、九条を大将に据えることは、皆が抱いてきた『強い大将』のイメージからは離れることになるだろう。
だが、弱い大将を守るという、あの四人の気持ちを一つにするための象徴になれるんじゃないか、と俺は思うんだ。それに、九条。お前にとってもきっといい経験になる」
「………」
「誰もお前を何もできない奴だとは思ってない。弁木や他の皆と同じく、これから幾らでも伸びる素質はあると俺は思ってる」
「どうして、そんなこと言ってくれるんですか……?」
「九条は、竹刀が当たるのが怖いんだろう?」
「……知ってたんですか!?」
僕がそう言うと、真田先輩が小さく笑った。
「稽古をしていたらわかる。竹刀が当たるよりも、もっと早い段階で、いつも目を閉じていたからな。だからこそ、九条には大将がいいと思ったんだ」
「……どうして、ですか?」
「勝ち抜き戦の巡旗杯の場合、大将が戦うのは一番最後だ。しかも、大将が負ければ、その時点で敗退が決まる。つまり、大将として出れば、相手に勝ち抜かれて何度も連続して戦う必要はない」
「……」
「他のポジションは、勝てば勝つほど次の相手と戦わなきゃならない。でも大将は、自分の番まで待っていられる」
そこで、真田先輩が僕を見る。
「どうだ? 大将も、悪くないと思えてきただろ?」
僕は少し考えてから、小さく頷いた。
「……そうですね……、僕には大将以外、無理そうです」
