第五一話
だけど、真田先輩の言葉に、誰よりも早く反応したのは、佐竹先輩だった。
「は!?」
驚きの声が、その場に響いた。
「えっ、何で九条が大将なんですか!? だって、こいつ…!」
「九条の名前も、大会出場者として登録はしてある」
佐竹先輩の言葉を遮るように真田先輩が続ける。
「巡旗杯のルールでも怪我による選手の交代は認められている」
「でも……僕は、剣道が……」
「ムリでしょ!」
僕の震える声も、佐竹先輩の声に飲み込まれた。
「九条、ずっとマネージャーしかしてないじゃないすか!」
「……」
何も言えなかった。
僕がこの間の合宿でも、どれだけできなかったか。
皆、知っているんだ。
何も言わなかったけど、心の中で思っていたはずだ。
――こいつ、こんなにできないんだな。
そんな僕が、チームの要である大将になるだなんて、納得できるはずがない。
田中くんも。
加藤くんも。
何も言わないけど、きっと同じことを思っている。
――何で、お前なんだ。
皆の声を水の中で聞いてるみたいに遠い。
なのに、心臓の音だけは、ひどく大きく聞こえた。
「九条がメンバーになるのは全然いいです。俺らも試合を続けられる。でも、大将はせめて他の奴の方がいい! だって、大将ってそういう役割じゃないすか!」
大将は、チームにとって最後の砦。この人がいれば大丈夫という安心感がある真田先輩がいたからこそ、時津高校はここまで頑張って来れたんだ。
だけど、佐竹先輩の言葉にも、真田先輩は首を縦に振ろうとしなかった。
「お前たちの布陣は、今が一番いい。それはずっと見てきて自信がある。今変えたら、きっと崩れる」
真田先輩の視線が、佐竹先輩、加藤くん、田中くん、弁木先輩へと順番に向けられていく。
「――いや、でも! そんなの、やっぱ納得できませんって!」
佐竹先輩が食い下がると、真田先輩は少しだけ目を細めた。
「なら、佐竹」
「……はい?」
「先鋒のお前が全員倒せばいいだけの話だ。後ろにまだいるから、大将が勝ってくれるから、自分は負けても大丈夫。その考え自体が、そもそもの間違いなんじゃないのか」
その言葉に、佐竹先輩の動きが止まった。
「確かに九条は、この中で誰よりも弱いだろう。だからこそ、ひとりひとりが『負けない』、『絶対に勝つ』と、強く思うことが大事なんじゃないか?」
誰も口を開かなかった。
重い沈黙が、僕たちの間に落ちる。
そんな中、弁木先輩の声が響いた。
「……確かに、俺はそう思っている自分がいなかったと言えば嘘になる。俺は後ろに真田先輩がいる。どこかそう思って甘えていた気がする」
その言葉に、皆の視線が弁木先輩に集まった。
「だから、これからは大将を――いや」
弁木先輩が、言葉を切ると、僕を見た。
「凪を出したら、俺たちの負けだと思うように切り替えていったらいいんじゃないか」
だけど、真田先輩の言葉に、誰よりも早く反応したのは、佐竹先輩だった。
「は!?」
驚きの声が、その場に響いた。
「えっ、何で九条が大将なんですか!? だって、こいつ…!」
「九条の名前も、大会出場者として登録はしてある」
佐竹先輩の言葉を遮るように真田先輩が続ける。
「巡旗杯のルールでも怪我による選手の交代は認められている」
「でも……僕は、剣道が……」
「ムリでしょ!」
僕の震える声も、佐竹先輩の声に飲み込まれた。
「九条、ずっとマネージャーしかしてないじゃないすか!」
「……」
何も言えなかった。
僕がこの間の合宿でも、どれだけできなかったか。
皆、知っているんだ。
何も言わなかったけど、心の中で思っていたはずだ。
――こいつ、こんなにできないんだな。
そんな僕が、チームの要である大将になるだなんて、納得できるはずがない。
田中くんも。
加藤くんも。
何も言わないけど、きっと同じことを思っている。
――何で、お前なんだ。
皆の声を水の中で聞いてるみたいに遠い。
なのに、心臓の音だけは、ひどく大きく聞こえた。
「九条がメンバーになるのは全然いいです。俺らも試合を続けられる。でも、大将はせめて他の奴の方がいい! だって、大将ってそういう役割じゃないすか!」
大将は、チームにとって最後の砦。この人がいれば大丈夫という安心感がある真田先輩がいたからこそ、時津高校はここまで頑張って来れたんだ。
だけど、佐竹先輩の言葉にも、真田先輩は首を縦に振ろうとしなかった。
「お前たちの布陣は、今が一番いい。それはずっと見てきて自信がある。今変えたら、きっと崩れる」
真田先輩の視線が、佐竹先輩、加藤くん、田中くん、弁木先輩へと順番に向けられていく。
「――いや、でも! そんなの、やっぱ納得できませんって!」
佐竹先輩が食い下がると、真田先輩は少しだけ目を細めた。
「なら、佐竹」
「……はい?」
「先鋒のお前が全員倒せばいいだけの話だ。後ろにまだいるから、大将が勝ってくれるから、自分は負けても大丈夫。その考え自体が、そもそもの間違いなんじゃないのか」
その言葉に、佐竹先輩の動きが止まった。
「確かに九条は、この中で誰よりも弱いだろう。だからこそ、ひとりひとりが『負けない』、『絶対に勝つ』と、強く思うことが大事なんじゃないか?」
誰も口を開かなかった。
重い沈黙が、僕たちの間に落ちる。
そんな中、弁木先輩の声が響いた。
「……確かに、俺はそう思っている自分がいなかったと言えば嘘になる。俺は後ろに真田先輩がいる。どこかそう思って甘えていた気がする」
その言葉に、皆の視線が弁木先輩に集まった。
「だから、これからは大将を――いや」
弁木先輩が、言葉を切ると、僕を見た。
「凪を出したら、俺たちの負けだと思うように切り替えていったらいいんじゃないか」
