第一六話
新見さんは、入場してくる時もやる気がなさそうに見えた。
ちゃんと防具だってつけてるし、竹刀だって手入れされてるように見えるのに、どうしてだろうか。
面の中の髪の毛が金髪で、ピアスが開いていることを知っているからだろうか。
面をつけ、互いに礼をして竹刀を構えると、僕はスマホのレンズ越しに新見さんを見つめた。
トントンと軽くジャンプをした後、肩を軽く持ち上げ、竹刀を構える。
その一連の動作だけでも、僕にはひどく力が抜けているように見えた。
試合が始まっても、適当にゆらゆらと揺らされる竹刀の先。
対戦相手は、一年生。
しかも足捌きを見てる限り、剣道を始めたばかりのように見える。
(……相手が格下で、やる気が出ないのかな)
まるで相手を馬鹿にしたかのような動きに、思わずムッとしていた。
その時、場内に真田先輩が入って来るのが見え、僕が一瞬、画面から目を離した瞬間――
パァン!
新見さんが、面を決めたのが聞こえた。
(……えっ?)
慌てて画面に視線を戻す。
剣道は二本先取制だ。もう一本取るはず、と新見さんの動きを追う。
相変わらず、ゆらりと竹刀の先を揺らしている。
――かと思ったら、竹刀を大きく振り上げることもないままに、軽く小手を決めているのが見えた。
もちろん、決まったと審判に思わせるだけの気合も、姿勢も、残心もちゃんとある。
あるにはある。
だけど、僕の知ってる剣道の太刀筋とは違っている気がする。
(……あの動き、何て言えばいいんだろう)
僕の剣道の腕前では、うまく形容できない。
それは真田先輩にも、弁木先輩にもない、「軽さ」とでも言えばいいのだろうか。
次に始まったのは、真田先輩の試合。
カメラのレンズを向けると、そこにあるのは重力を感じさせるような重さがある姿。
言うなれば、どっしりと根を張るような、ちょっとやそっとじゃ動かないと思わせる存在感。
すっと伸びる真っ直ぐな姿勢。
逸らされることのない強い視線。
自分の呼吸と、相手の呼吸を感じながら、相手の隙を見逃さずに、刺すように打たれる竹刀の鋭さ。
バシッ!
小気味の良い音を立てて、決まった面。
瞬時に上がる審判の赤色の三本の旗。
どこか安心する勝利の姿に、僕はほっと胸を撫で下ろしていた。
(やっぱり、真田先輩は凄い)
そして、その真田先輩の背を追いかけ続けている弁木先輩の姿は、僕が知っている剣道そのものだった。
だからこそ――僕は新見さんのあの軽さが、どうにも理解できずにいた。
(……弁木先輩、早く出てこないかな)
新見さんは、入場してくる時もやる気がなさそうに見えた。
ちゃんと防具だってつけてるし、竹刀だって手入れされてるように見えるのに、どうしてだろうか。
面の中の髪の毛が金髪で、ピアスが開いていることを知っているからだろうか。
面をつけ、互いに礼をして竹刀を構えると、僕はスマホのレンズ越しに新見さんを見つめた。
トントンと軽くジャンプをした後、肩を軽く持ち上げ、竹刀を構える。
その一連の動作だけでも、僕にはひどく力が抜けているように見えた。
試合が始まっても、適当にゆらゆらと揺らされる竹刀の先。
対戦相手は、一年生。
しかも足捌きを見てる限り、剣道を始めたばかりのように見える。
(……相手が格下で、やる気が出ないのかな)
まるで相手を馬鹿にしたかのような動きに、思わずムッとしていた。
その時、場内に真田先輩が入って来るのが見え、僕が一瞬、画面から目を離した瞬間――
パァン!
新見さんが、面を決めたのが聞こえた。
(……えっ?)
慌てて画面に視線を戻す。
剣道は二本先取制だ。もう一本取るはず、と新見さんの動きを追う。
相変わらず、ゆらりと竹刀の先を揺らしている。
――かと思ったら、竹刀を大きく振り上げることもないままに、軽く小手を決めているのが見えた。
もちろん、決まったと審判に思わせるだけの気合も、姿勢も、残心もちゃんとある。
あるにはある。
だけど、僕の知ってる剣道の太刀筋とは違っている気がする。
(……あの動き、何て言えばいいんだろう)
僕の剣道の腕前では、うまく形容できない。
それは真田先輩にも、弁木先輩にもない、「軽さ」とでも言えばいいのだろうか。
次に始まったのは、真田先輩の試合。
カメラのレンズを向けると、そこにあるのは重力を感じさせるような重さがある姿。
言うなれば、どっしりと根を張るような、ちょっとやそっとじゃ動かないと思わせる存在感。
すっと伸びる真っ直ぐな姿勢。
逸らされることのない強い視線。
自分の呼吸と、相手の呼吸を感じながら、相手の隙を見逃さずに、刺すように打たれる竹刀の鋭さ。
バシッ!
小気味の良い音を立てて、決まった面。
瞬時に上がる審判の赤色の三本の旗。
どこか安心する勝利の姿に、僕はほっと胸を撫で下ろしていた。
(やっぱり、真田先輩は凄い)
そして、その真田先輩の背を追いかけ続けている弁木先輩の姿は、僕が知っている剣道そのものだった。
だからこそ――僕は新見さんのあの軽さが、どうにも理解できずにいた。
(……弁木先輩、早く出てこないかな)
