第一四話
怒りに震える弁木先輩の前で、真田先輩と謎の派手髪は、親しげに会話を重ねていく。
「恋!? お前、戻ってきてたのか!? いや、それより、その髪どうした!?」
「真田さん、びっくりさせたろ思て、昨日染めた」
恋と呼ばれた生徒の腹あたりに付けられた垂れを見ると「坂ノ上高校・新見」と書かれていた。
「坂ノ上……?」
弁木先輩が呟くのに、僕は出場高校リストを思い出していた。
確か、坂ノ上高校はインターハイで最も出場回数が多い強豪校で、今回の大会でも、優勝候補として名前が挙がっていたはずだ。
(……そこの生徒が、真田先輩と関係ある人?)
真田先輩は剣道界では有名な人だから、あちこちに知り合い、というよりも、一方的に知られていることも多い。
弁木先輩もその一人。
真田先輩に憧れて時津高校へ入学を決めたというのだから、他にそういう人がいても不思議じゃない。
(……でも、それにしてもタイプが違いすぎる気がするんだけど)
真田先輩は、髪を染めたこともなければピアスも開けてもいない。
そういうことへ憧れを持っているようにも見えない。
なのに目の前の新見さんは、髪の毛を金髪に染めているし、ハーフアップにできるほどの髪の長さだし、ピアスもいくつか開いているように見える。
どう見ても、真田先輩とは正反対だ。
いまいち二人の関係がわからずに戸惑っていると、真田先輩が僕らの視線に気づいたらしい。
こっちを振り向くと、軽く紹介をしてくれた。
「こいつは新見恋。小中の後輩なんだ。元々、大阪から神奈川に来ていたんだが、高校に上がる前に家の都合で大阪に戻ることになってな。それで、また神奈川に戻ってきたらしい。インターハイのトーナメント表に名前があったから、まさか、とは思ってはいたんだが」
説明を聞いて、少しだけ納得する。
昔からの知り合いなら、あんなふうに距離が近いのも分からなくはない。
……とはいえ。
(……先輩に対して、あの態度はちょっとな)
真田先輩が許しているなら、と思う気持ちと、昔から知ってるとはいえ三年生なんだから、という気持ちが、僕の中で板挟みになる。
そんな僕の横で、弁木先輩は何も言わずに新見さんを見ていた。
「それで? お前、いつ戻ってきたんだ?」
「先月の終わり。転校手続きがギリギリやったんやけど、個人戦に間に合ったんよ。ブロック違うけど、当たれるやろ?」
「……お互いに負けなければ、決勝でな」
「大丈夫、絶対負けへんし。来月の団体戦も当たりたいけど、三年がおるからって副将にしかなれんかった。俺、大将戦で真田さんとやりたくて戻ってきたのに、酷いと思わん!?」
その言葉に、隣に立つ弁木先輩の拳が、ぎゅっと握られるのが視界の端に映った。
金髪にピアス。
ただチャラいだけに見える新見さんだけど、先月末に強豪校に転校してきて、すぐに団体戦のメンバーに選ばれている。
しかも、数多の選手を抑えての副将。
真田先輩にあれだけ馴れ馴れしい態度を取れることも含めて、それだけの実力がある選手ということなのかもしれない。
「新見、ミーティング始まるぞ!」
「えー!? 俺、まだ真田さんと話したいんやけどー!」
ぶーぶー言いながらも、坂ノ上高校の生徒に連れていかれるようにして、新見さんは、渋々と真田先輩から離れていく。
「ほんなら、真田さん。俺と当たるまで負けんといてな!」
ひらりと手を振って離れていった新見さんは、最後まで真田先輩しか見ていなかった。
すぐ隣に立つ弁木先輩には、一瞥もくれずに。
まるで、弁木先輩しか見えていない僕みたいに――。
(……いやいや、僕の方がピュアなラブだし、少なくとも、あんな重たい感じじゃない!)
怒りに震える弁木先輩の前で、真田先輩と謎の派手髪は、親しげに会話を重ねていく。
「恋!? お前、戻ってきてたのか!? いや、それより、その髪どうした!?」
「真田さん、びっくりさせたろ思て、昨日染めた」
恋と呼ばれた生徒の腹あたりに付けられた垂れを見ると「坂ノ上高校・新見」と書かれていた。
「坂ノ上……?」
弁木先輩が呟くのに、僕は出場高校リストを思い出していた。
確か、坂ノ上高校はインターハイで最も出場回数が多い強豪校で、今回の大会でも、優勝候補として名前が挙がっていたはずだ。
(……そこの生徒が、真田先輩と関係ある人?)
真田先輩は剣道界では有名な人だから、あちこちに知り合い、というよりも、一方的に知られていることも多い。
弁木先輩もその一人。
真田先輩に憧れて時津高校へ入学を決めたというのだから、他にそういう人がいても不思議じゃない。
(……でも、それにしてもタイプが違いすぎる気がするんだけど)
真田先輩は、髪を染めたこともなければピアスも開けてもいない。
そういうことへ憧れを持っているようにも見えない。
なのに目の前の新見さんは、髪の毛を金髪に染めているし、ハーフアップにできるほどの髪の長さだし、ピアスもいくつか開いているように見える。
どう見ても、真田先輩とは正反対だ。
いまいち二人の関係がわからずに戸惑っていると、真田先輩が僕らの視線に気づいたらしい。
こっちを振り向くと、軽く紹介をしてくれた。
「こいつは新見恋。小中の後輩なんだ。元々、大阪から神奈川に来ていたんだが、高校に上がる前に家の都合で大阪に戻ることになってな。それで、また神奈川に戻ってきたらしい。インターハイのトーナメント表に名前があったから、まさか、とは思ってはいたんだが」
説明を聞いて、少しだけ納得する。
昔からの知り合いなら、あんなふうに距離が近いのも分からなくはない。
……とはいえ。
(……先輩に対して、あの態度はちょっとな)
真田先輩が許しているなら、と思う気持ちと、昔から知ってるとはいえ三年生なんだから、という気持ちが、僕の中で板挟みになる。
そんな僕の横で、弁木先輩は何も言わずに新見さんを見ていた。
「それで? お前、いつ戻ってきたんだ?」
「先月の終わり。転校手続きがギリギリやったんやけど、個人戦に間に合ったんよ。ブロック違うけど、当たれるやろ?」
「……お互いに負けなければ、決勝でな」
「大丈夫、絶対負けへんし。来月の団体戦も当たりたいけど、三年がおるからって副将にしかなれんかった。俺、大将戦で真田さんとやりたくて戻ってきたのに、酷いと思わん!?」
その言葉に、隣に立つ弁木先輩の拳が、ぎゅっと握られるのが視界の端に映った。
金髪にピアス。
ただチャラいだけに見える新見さんだけど、先月末に強豪校に転校してきて、すぐに団体戦のメンバーに選ばれている。
しかも、数多の選手を抑えての副将。
真田先輩にあれだけ馴れ馴れしい態度を取れることも含めて、それだけの実力がある選手ということなのかもしれない。
「新見、ミーティング始まるぞ!」
「えー!? 俺、まだ真田さんと話したいんやけどー!」
ぶーぶー言いながらも、坂ノ上高校の生徒に連れていかれるようにして、新見さんは、渋々と真田先輩から離れていく。
「ほんなら、真田さん。俺と当たるまで負けんといてな!」
ひらりと手を振って離れていった新見さんは、最後まで真田先輩しか見ていなかった。
すぐ隣に立つ弁木先輩には、一瞥もくれずに。
まるで、弁木先輩しか見えていない僕みたいに――。
(……いやいや、僕の方がピュアなラブだし、少なくとも、あんな重たい感じじゃない!)
