第一〇話
「よし、じゃあ早速なんだが、六月の県大会の団体戦についてだ。団体戦は五人選手が必要だからな。今回は一年にも出てもらおうと思ってる」
真田先輩がそう言いながら、剣道場の端に置かれていたホワイトボードを引っ張ってくる。
ざわ、と皆の間で不安が一気に膨れ上がった。
でもそれは、当然と言えば当然のことだった。
だって、僕ら一年生トリオは剣道を始めたばかりで、まだ素振りだって不安が残る。
そんな僕らが公式戦だなんて、夢のまた夢だった。
五月に行われた大会では、当然のように二年生と三年生で固められていたし、そのままインターハイも同じ布陣で行くと思っていたんだから。
「俺と顧問の清水先生とで、団体戦の布陣を勝手に考えてみたんだ」
そう言いながら、真田先輩がホワイトボードをひっくり返した。
現れた布陣に、僕を含めた誰もが息を呑んだ。
先鋒:佐竹 広臣 (二年)
次鋒:加藤 宗 (一年)
中堅:田中 塁斗 (一年)
副将:弁木 慶次郎(二年)
大将:真田 武尊 (三年)
弁木先輩は、自分が副将に選ばれると思っていなかったようで、珍しく口を半開きにして固まっていた。
(……弁木先輩でも、こんな顔するんだ)
新鮮な表情に、大変な時なのについ見惚れてしまう。
だけど、それよりも問題は――。
何度見直しても、ホワイトボードに僕の名前がないことだった。
(……もしかして、知らない間に退部届出してたりした?)
どういう顔をしていいか分からなかった僕は、知らないうちにニタリと笑っていたらしい。
弁木先輩にポンと慰めるように肩を叩かれる。
「凪は補欠か」
その言葉に、僕は慌ててホワイトボードを見返した。
(え……? 補欠……? 誰が?)
必死に探してみる。
すると、端の方に小さな字で
『補欠:九条 凪(一年)』
と書かれていたのが見えた。
そこでようやく、僕はまだ剣道部員であったことを知った。
(……当然だよね。退部届、ここにあるんだもん)
今日も胸に忍ばせた退部届を服の上から触っていると、肩を落とした僕が落ち込んでいるように見えたのか、真田先輩が続ける。
「これは、今の実力で考えた布陣だ。これからの成長次第では、入れ替わる可能性があることも念頭に置いて、稽古に励んでくれ」
真田先輩の言葉に、剣道場内の空気がピリリと引き締まる。
それは、一年も二年も関係なく皆だった。
突然いなくなった部員は六人。半分になった部を、みんなで何とかしようとしているのが伝わってきた。
「「はい!!」」
皆と同じように声を揃えた僕は、珍しくやる気を起こしていた。
――だって他の皆が練習しまくる分、僕は竹刀で叩かれずに済むんだから!
メキメキ実力を伸ばしてくれ! 田中くん、加藤くん!
そしてこの日から、僕の華麗なるマネージャー人生は幕を開けたのだった。
「よし、じゃあ早速なんだが、六月の県大会の団体戦についてだ。団体戦は五人選手が必要だからな。今回は一年にも出てもらおうと思ってる」
真田先輩がそう言いながら、剣道場の端に置かれていたホワイトボードを引っ張ってくる。
ざわ、と皆の間で不安が一気に膨れ上がった。
でもそれは、当然と言えば当然のことだった。
だって、僕ら一年生トリオは剣道を始めたばかりで、まだ素振りだって不安が残る。
そんな僕らが公式戦だなんて、夢のまた夢だった。
五月に行われた大会では、当然のように二年生と三年生で固められていたし、そのままインターハイも同じ布陣で行くと思っていたんだから。
「俺と顧問の清水先生とで、団体戦の布陣を勝手に考えてみたんだ」
そう言いながら、真田先輩がホワイトボードをひっくり返した。
現れた布陣に、僕を含めた誰もが息を呑んだ。
先鋒:佐竹 広臣 (二年)
次鋒:加藤 宗 (一年)
中堅:田中 塁斗 (一年)
副将:弁木 慶次郎(二年)
大将:真田 武尊 (三年)
弁木先輩は、自分が副将に選ばれると思っていなかったようで、珍しく口を半開きにして固まっていた。
(……弁木先輩でも、こんな顔するんだ)
新鮮な表情に、大変な時なのについ見惚れてしまう。
だけど、それよりも問題は――。
何度見直しても、ホワイトボードに僕の名前がないことだった。
(……もしかして、知らない間に退部届出してたりした?)
どういう顔をしていいか分からなかった僕は、知らないうちにニタリと笑っていたらしい。
弁木先輩にポンと慰めるように肩を叩かれる。
「凪は補欠か」
その言葉に、僕は慌ててホワイトボードを見返した。
(え……? 補欠……? 誰が?)
必死に探してみる。
すると、端の方に小さな字で
『補欠:九条 凪(一年)』
と書かれていたのが見えた。
そこでようやく、僕はまだ剣道部員であったことを知った。
(……当然だよね。退部届、ここにあるんだもん)
今日も胸に忍ばせた退部届を服の上から触っていると、肩を落とした僕が落ち込んでいるように見えたのか、真田先輩が続ける。
「これは、今の実力で考えた布陣だ。これからの成長次第では、入れ替わる可能性があることも念頭に置いて、稽古に励んでくれ」
真田先輩の言葉に、剣道場内の空気がピリリと引き締まる。
それは、一年も二年も関係なく皆だった。
突然いなくなった部員は六人。半分になった部を、みんなで何とかしようとしているのが伝わってきた。
「「はい!!」」
皆と同じように声を揃えた僕は、珍しくやる気を起こしていた。
――だって他の皆が練習しまくる分、僕は竹刀で叩かれずに済むんだから!
メキメキ実力を伸ばしてくれ! 田中くん、加藤くん!
そしてこの日から、僕の華麗なるマネージャー人生は幕を開けたのだった。
