君の生きる理由になりたかった



 小学六年生の春、幼なじみの利都(りと)と二人で帰り道を歩いていたときだった。

突然、利都の周りが淡いオレンジ色に光った。青空を背景に光る利都が、このときだけは異質に思えた。


「利都、なんか光って……」

「え?」
 

不思議そうに、利都があたりを見回す。だけど、俺を見てすぐにもう一度首をひねった。


「なにも光ってないよ?」
 

この光が見えているのは、どうやら俺だけらしいことを察した。利都は自分が光っていることが分かっていないのだ。

不思議に思っている間に、その光はだんだん淡く薄くなり、やがて消えた。
 
このときの俺にとって、この出来事は特に気にも留めないような、ただ少し不思議なことにすぎないものだった。見間違えただけかもしれないし、はたまた幻だったかもしれない、と。


「これから遊びに行かない?」

「あー、ごめん。今日は塾があるし、勉強しないといけないから……」
 

申し訳なさそうに、眉を下げて胸の前で手を合わせる利都。

またか、と思いながらも利都が俺と遊べないのは、仕方がないことだとも分かっていた。今回も、断られることは分かっていたけれど、やっぱり寂しい。


「そっか、じゃあまた今度な。頑張って」

「ありがとう祈里」
 

安心したように利都が笑う。
 
利都とは、たしか五歳のときに出会った。通っていた幼稚園で、同じクラスになったことがきっかけだったような気がする。

もうあまり覚えていないけれど、でも利都は俺といちばん仲がいい友達だったし、ずっと一緒にいるのが当たり前である存在だ。今まではクラスが離れ続けていたけれど、今年は久しぶりに同じクラスになることができた。
 
しかし、利都は中学受験をするようで、現在は勉強にいそしんでいる。毎年一緒に夏祭りに行ったり、放課後は毎日遊んだりしていたけれど、最近はずっとそれができていない。
 
それでも、俺はかすかな希望だけを頼りに、利都をほぼ毎日遊びに誘っていた。そのたびに断らるので、不服に思うこともないわけではない。


「ねえ祈里、じゃあ明日は昼休みにサッカーしようよ」

「いいの!?」

「うん。たまには息抜きしたいし」
 

利都は放課後だけじゃなくて、昼休みにもだいたい勉強をしている。昼休みに声をかけるのはなんだかためらわれてしまって、できずにいたけれど、本当は利都と遊びたいと思っていた。

俺が利都とちゃんと話をすることができるのは、この帰り道だけだ。登校は利都の方が早いし。これもまた、勉強をするためらしい。
 
勉強勉強って、でも受験って冬くらいだよな。まだ春なのに、もうこんなに勉強しなきゃいけないわけ?
 
勉強に精を出すのは、もっと先でもいいような気がする。でも、がんばっている利都にそんなことは言えないので、いつも口をつぐんでしまうのだ。


「楽しみだな」
 

利都が微笑みながらつぶやいた。
 
俺のほかの友達と比べて、温厚で和やかな利都とは、かなり接しやすかった。俺の話も笑って聞いてくれるし、楽しそうにしてくれるから。だから、利都にはもっといろんなことを話したくなるし、いろんなことを一緒にしてみたくなる。

なかなかそれは、叶っていないけれど。